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竜はそれを嘆かずには居られない

 人間は弱い。強靭なモンスターの中でも突出して強い竜人の私とは比べるまでもなく、身体的に生物として弱い。

 そして、精神的にも弱い。異形の人をみれば逃げ出す程に弱い。誤ってこちらの世界に足を踏み入れた大抵の人間は竜の手をした私の姿を見て逃げ出した。

 ……弱いのは私も同じか……

「ドラグさん?」

 どうせ助からない人間を……偶然声を聞いただけで助けようとして助けられず……

「ドラグさん!」

 ……ましてや、彼女の末期の言葉が……侮蔑や恨み言でもない、ただの呼び声であったのに……何故私の頭の中で呪詛のように巡り続けているのだ……?

 彼女は決して満足はしていなかったのだろうが、だがしかし誰かを……特に私を……恨んではいないハズだ

「ドラグさん! 悩みがあるなら相談にのりますよ!?」

「黙れ……」

「っ……」

 弱い癖に五月蝿い……弱いユートに何が出来るというのだ……

 私の悩みが……強いが故の悩みを弱いユートに分かるものか……!

「……その……ごめん」

「…………っ」

 何故お前ユートが謝るのだ? 私が悪いのに……

 何故そんな悲しい目をしているのだ? お前は悪くないのに……

「ユート………………すまない。ちょっと1人になりたい……だから…………ついてこないでくれ」

 ユートに背を向けて呟いた……



 あの時、まず最初に聞いたのは少女の悲鳴だった……

 気のせいだと思って……否、信じたかったのだが、ただならぬ雰囲気を感じた私は寝間着のままで森へと飛び出していった……

 そうして見たものが、件の少女……全身傷だらけで、血だらけで、対処をしても僅かな延命しか不可能なくらいに死に瀕している少女だった……

「お姉さん、も……?」

 ……少女が何を言いたかったのかは定かではないが、これだけは言える……

 少女は諦めていたのだ。動くことを、足掻くことを、そして生きることを……

 そんな少女を放っておけるはずもなく、私は精一杯少女を生かそうと足掻こうとした……だが、傷は見た目よりも遥かに深く、最善を尽くそうともわずかに延命出来るかどうかと言うほどであった……

 説明するまでもないが、結果から言えば少女は死んだ……私の手を取って「お母さん」と呟き、事切れた……

 少女が何を思っていたのか定かではないが、私は彼女を救えなかった。彼女を精神的にさえ救うことが出来なかったのだ……

 だからこそ、せめてもの償いに墓を掘って骸を埋めた……生きていても報われることなく、救われなかった彼女にせめて死後の安泰を与えようと……

 だが……

「墓が……掘り起こされている……?」

 狗? いや違う、狗であれば一方向に土を掘り返していくはずだ。

 魔女? いや、奴であればもっと狡猾に事を運び、このような過ちなど……掘り起こしたままにするという過ちなどしないだろう。

 だとすれば誰が……誰が彼女を……

「…………ア……」

 …………なんだ、今の声は……まるで言葉を覚えたての巨人のような、おどろおどろしい濁った声は……

「………ガアザ………」

「……っ」

 気のせいではないようだ……しかも、微かに感じる地響きの事を考えれば……あながち推理は間違って居なかったようだ

「出来ることなら、当たっていてほしくはなかったのだがな……どうやら、本物か……」

 目線を上げれば……腕を引きずりながら、一歩、また一歩と前進する土色の巨人が居た……


鬱っぽい展開ですが……一応救われます

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