人は亡縛の少女を救えるか?
「……大丈夫ですか、魔女先輩」
ユートの声が聞こえ、恐る恐る目を開くと、ユートがワタシを庇っていた……
目の前には手首にはめた籠手トレットを使って的確に魔法を防御した、頼れる後輩の背中があった……
「ユート……はん……!」
「はい、遅くなってすみませんね、あの手紙を解読するのに時間がかかってしまって……」
「くっ……では、あなた諸共」
「ラト! ラビ!」
どうやら来てくれたのは頼れる後輩1人だけじゃないようだ。
「油断大敵だよ、『禁誘屍人』」
(コクコク、コクッ)
ラトとラビの2人はユートとワタシに追撃しようとした『禁誘屍人』の足元に魔法陣を張り、下から火炎魔法を発動した……
「ぐ……っ」
「ラビ、見てごらん。悪党の最後だよ」
「……ラト、ラビにグロいもの見せないでよね?」
……半分不死身な『禁誘屍人』に軽口を叩くのはどうかと思うたけど、流石にアタシとラトが束縛の魔法陣を発動したから大丈夫だと思った。
その慢心が命取りやった……
「《死逃仲走》」
一度は死んだ『禁誘屍人』は一瞬で束縛を抜け出し、黒い巨人と成ってユートの体を腕ごと掴んでいた……
「慢心だ……その慢心が仲間を殺すのだ……! 覚えておけ……! だが、貴様らもここで死ぬのだがな!」
「……ユート……はん……?」
ユートを夜空へと掲げる『禁誘屍人』は、黒こげた巨人のような風貌も相まってまるで儀式の執行者のような神々しささえあった……
これはちょっとマズいかな……
『禁誘屍人』に体を掴まれながら心の中でそう呟く。
籠手トレットさえあれば、逆転の時間を稼げる……だから、いっそのこと賭けに出ることにした。
「……さて問題」
「なに?」
「ユート……こんな時に何を……」
「この籠手、籠手トレットを僕に託してどこかに隠れている誰かさんはどこの誰で……すぐ近くのどこでお前の首筋を狙っているでしょうか!」
「…………リリス! そこにいるのは知っている……!」
直後、『禁誘屍人』が僕の影に巨大な拳を叩きつけると同時……ラビのいた場所から『禁誘屍人』の巨人に飛びかかる影が一つ……
「おにいちゃんをころそうとするデカブツは、アリスが許さないんだから……! 絶対に、絶対に許さない……!」
小さくても闘気は十分だと判断したのか、リリスさんの策でアリスちゃんがリリスさんからのプレゼントである籠手トレットを僕に手渡し、ラビの影に隠れていたのだ。
慢心の極み乙というより、慢心を予想したこちらの作戦勝ちだろう。
ただ、策はアリスちゃんだけじゃないのだが。
「うわぁぁぁっ、っと」
「アリスちゃん下がって!」
僕をつかみながら暴れる『禁誘屍人』に命の危険を覚えながらも、小柄かつ俊敏なアリスちゃんとはいえ1回の被弾が致命的になりかねない暴れ方に、つい本音が口にでてしまった。
「下がりなさいアリス! ……久しぶりね、『禁誘屍人』」
どうやらダアトちゃん達もギリギリ間に合ったようだった……
……月を割るように降り立つダアトちゃんは、まるで神話に出てくる女神のように美しかった。
「ク……、貴様マデ……ダガ、所詮神ノ力ヲ持タナイ貴様ハ所詮ザコ魔法使イニモ劣ル存在……!」
「そう、それなら……試してみるかしら?」
直後、何重にも重なっていた耳を塞ぎたくなるようなボキリという音の協和音の直後、あれほど僕を握り放さなかった『禁誘屍人』は僕を手放した……
直後、最早原型さえ分からない程にボロボロの巨人が後ろに倒れこんだ……
「……酷い慢心ね」
『まあ確かにそうだね〜でも、ダアトおばさんの慢心も酷いけどね。』
ダアトちゃんがダアトちゃんの声と真理ちゃんの声でやりとりした直後、『禁誘屍人』の四肢と体には巨大な槍が突き刺さっていた……
「ガグ……ゴ……」
『やる時は徹底的に、ぶっ潰してぶっ潰してぶっ潰して! 握り潰して叩いて殴ってすり潰して押し潰してねじ切って、ネギトロめいた状態にするか、こんな風に完膚無きまでに叩きのめさないと』
「……ふぅ、慢心して神を騙ろうとしたあなたが慢心しなかった神にやられるとは皮肉ね? 『禁誘屍人』?」
意地でも慢心扱いされたくないのか、真理ちゃんの呟きをダアトちゃんが強引に無かったことにした。
「……だだ」
「……え?」
嫌な余暇を感じ、即座に一番近い子のもとへ……アリスちゃんに駆け寄った
「オレはまだ終わらんぞぉぉぉぉぉ!」
『禁誘屍人』は再び更なる異形……触手の蠢くワケの分からない存在、最早異形としか言いようのない存在……へと姿を変えた……
直後、四肢と地面を縫い合わせていた槍を、針を抜くかのように払いのけた……
異形そのもの:ニャルラトホテプで画像検索してSAN値を削り取り、お好きな物の姿で想像してください。和久名個人は旧神ナイアルラで想像していますが。
籠手レット:命名及び作成 リリス。実際強い。
『禁誘屍人』の口調の変化について:前提として言っておきますがデッドマンは実は他のニャルラトホテプからすればデッドマンのHPは相対的に人間と変わりません。というかティンダロスのわんわんおに噛まれて1回死ぬくらいに貧弱です。邪神としては最下層クラスです。
ですが、デッドマンは無限に近い残機と即座に蘇生し行動出来るおぞましい程に強靭な精神を持ち合わせているため、ニャルラトホテプの中でも最狂クラスの奴です。太陽に放り込むぐらいしか殺す方法がありませんね。それか無限に近い回数デッドマン殺すというほぼ無理ゲーを実行するか。
話を戻しますが、スペランカー並みに貧弱なためしょっちゅう死にます。その時に人格が入れ替わることが稀に良くあるということです。
ちなみにデッドマンはユートに刺された時に10回死にました。




