魔女は亡幻を払えるか?
魔女先輩と青髭の関係ですが、生前の『ジャンヌ・ダルク』にとっては親友
死後……ホムンクルスのジャンヌにとっては父親のような存在でした。
そんな親しい存在の名前を騙った『禁誘屍人』に対して、キレるのは不思議ではありません……よね?
まあとりあえず、本編をどうぞ
「来てやったわ、『禁誘屍人』……いったいどこにいるの」
ワタシ、名も無き魔女は『禁誘屍人』の挑発にあえて乗り、ユートの故郷の、《ゲート》の近くにある墓地へとやってきた……
……まあ、夜に来てあまり居心地の良い場所では無いわね。流石に……待ち合わせ場所としては最悪よ。デートのお誘いでこんな場所を所望されたら即刻縁切りね。
そんなことを考えていると、青髭のおじさまとでも言うべき紳士が……ジルに似た男が森の中からやってきた。
「お待たせしましたねぇ、ジャンヌダルク……クク、相変わらず美しい」
「……御託はいらないわ。早くアンタ本来の姿に戻りなさい」
「本来の姿? 何を言うのですかジャンヌダルク、わたしはジル・ド・レ。あなたの忠実な部下でした」
「…………黙りなさい」
「おやぁ? このおもてなしがお気に召さないのですかぁ?」
「……っ、黙れぇ! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ、黙れぇぇぇぇぇ! ワタシの恩人の声で喚くな! デッドマン! 今すぐアンタを偽物の青髭諸共灰にしてやる!」
「おやおや気の短い……」
ワタシは荒々しい手付きで魔法陣を開き、『禁誘屍人』を焼こうとした……周りの危害など顧みず、全力の炎で焼こうとした……
だけど、魔法陣から出たのはライターの火のような弱々しく小さな火の子だった……
「え……どうして……?」
「おやおやぁ、救国の英雄ジャンヌダルクともあろうものが、憎い相手にこの程度の攻撃とは……英雄の名が」
「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! これ以上その声で、その顔で喚くなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ワタシが泣きながら撃った火も、『禁誘屍人』に指二本でかき消されてしまった……
「フフフ……フハハハハ! ジャンヌダルク、救国の英雄と言われたあなたもこうなってしまえばただの15歳の小娘! せめて痛みを感じる間もなく葬ってあげますよ!」
そう言って『禁誘屍人』は絶望しへたり込んでいるワタシに、黒色の魔法を放った……
……救国の英雄のホムンクルスは目を閉じ運命を受け入れる事にした。
……『禁誘屍人』の言った通り、痛みは感じなかった……




