人は吸血鬼と対決出来るか?
かなり『おこ』な真理ちゃんと、いつも以上に様子がおかしい変態君の2人を引き上げ、僕達2人が居なかった間の状況を確認しようとは思ったんだけど……
「ククク……クァーックァックァックァ!」
「変態君がいつもより遥かに変態的な変態高笑いをしてるんだけど何があったのこれ! 本当に何があってこうなったの!」
ドラグさんが蜘蛛の巣ごと回収したことと、ボッシュート床が明らかに叩きつけた衝撃で抜けたような穴が開いてることは納得出来たけど、本当にどうしてこうなった!
「……ユウが美少女センサー? で勝手に一人歩きするのに気付くのが遅れて、見つけたときにはこうなってた……」
「美少女……美少女……! 可愛いご主人様は何処じゃぁぁぁぁぁ……!」
「うん、だいたい分かった」
吸血鬼になっちゃったとはいえ、いつもより変態度が増し増しになった以外なんら変わりないということが分かった。
「ユート、猿轡ははめるべきか?」
「いや、流石にすぐ噛み千切られそうだしそもそも僕以外がはめようとしたら噛まれちゃいそうだし……僕も噛まれそうだけど……はめなくていいよね。はめるリスクが高いし」
「ハメる、か……ぼくを後ろからハメようと」
「…………ドラグさん、あの変態黙らせて」
「分かった」
あまりにも変態がユウ君でうるさいので気絶させて持ち運ぶことにした。
後衛のダアトちゃんが肩に丸太と変態君を担ぎ、その前後をアダカさんとドラグさんが囲み、前衛には僕達が纏まっているという、勇者さんがみたら激怒しそうな並び方だが、僕達はこれでいいのだ。
とりあえず後ろが変態君を生贄に捧げる儀式みたいだけど、まあいいだろう。
そんな事を考えながら進んでいると、何故かデジャビュを感じる配置の扉が2つあった。
「……また赤い扉と青い扉か……イアリちゃん、占いは?」
「ハニー、リメンバ様からの神託は青い扉へ進めと」
「折角だから僕はこの赤い扉を選ぶけど良いよね? 答えは聞いてないけど」
イアリちゃんも分かり切っていたのか、指は青い扉を指しながらも体は僕の答えを予想して赤い扉の方向に向けていた。
占神リメンバ様とやらの所為でさっきから何度痛い目に遭ったか……主に真理ちゃんが。
「そういえばユート、ボクに対してってさ、口だけでしかしてもらってないよねぇ? 謝罪」
「ン? 今シャセイってイッタヨネ?」
変態君がいつも通りの変態発言をしたけど、最早手遅れだから放置するのが最善の選択だろう。
「赤い扉開けるよ?」
「……あ、ちょっと待って頂だ」
「え?」
エキドナさんの言葉に応える間もなく、扉を開けた
開けてしまった……
その先にあったのが何だったのかを理解する間もなく、僕はまるで操られるかのように走り出していた……
「……え?」
扉の先に居たのはフードを被った吸血鬼だった……そいつが男なのか女なのか分からない。なのに、何故か僕は血を捧げたいという考えの下、そいつを見た瞬間走り出していた……
「ユート!? 何をしていますの!? きっとそいつが」
「もしかして……!」
「せーしんゆーどー? でも、おねーちゃんもあれは禁止って……!」
「足を止めて私の胸に飛び込むのよダーリン! ……とにかく落ち着くの!」
「分かってるけど……でも……止まれなくて……!」
頭では止まろうとするものの、足は止まらず……15メートル、10メートルとそいつとの距離が縮まっていた……
「ユート! せめてもうちょっと遅く走ってよぉ〜!」
5メートル、4メートル……あと少しでそいつの手が届きそうだと思った瞬間、強烈な力によって横に吹き飛ばされた……
「小杉ユート!」
「ハニー! 大丈夫!?」
「ぅっ……! 何……!?」
壁に叩き付けられ、痛みを堪えながら僕を吹き飛ばした主を見ると……
「ユウ君!?」
まるで月に吠える狼のような雰囲気になっていたユウ君が、僕をにらんでいた……
「邪魔ダ……」
立ち上がろうとし、痛みで立ち上がれなかった僕を一瞥し、ユウ君はフードの吸血鬼の下へとまるで飢えた狼のように駆け抜け……
飢えた駄犬のようにフードの吸血鬼……もとい銀髪の美少女吸血鬼の顔を舐めまわした。
「やめろ! 馬鹿! わらわは餌ではない! やめぬかこの愚か者が!」
「…………はぁ?」
……この上無い程の、物凄い脱力感に襲われたんだけどさぁ……
まず、変態君は何をやってるの。吸血鬼化したと思ったんだけど別にそんな事は特になくいつも通りの変態にしか見えないんだけど。
意外と可愛かった吸血鬼はまあどうでも良いとして、とりあえず一番の問題は変態君だ。
とりあえず変態君と吸血鬼を引き離して尋問しなければなるまい……
ユウ君が変態君になってしまったのは私の責任だよ。だが私は謝らない
アダカ「おじさん!」
おじさんちゃうわい




