人は地下洞窟から侵入出来るか?
アラクネと人とスライム、明らかにパーティーのバランスがおかしいですね
デッキ作らないドラゴン(以下DTD)「アラクネとスライムとハーピーがね、和久名としては一番良いんだよ。本当にね……
(本当に、本当に……)」
「……来たわ……多分ここがヴァンパイア専用ボッシュート用通路……だと思う……」
アラクネさ……もとい、ザウラスさんの糸を辿ること30分……ヴァンパイア専用ボッシュート用通路(長い)にあるザウラスさんの巣まで行き着いた。
「あの……ザウラスさん? この巣の隅に、スーツの残骸らしき布が引っかかってるんですが?」
「心配ない、それは元々灰しか付いてなかった」
……怖いね、ヴァンパイア。きっと内部抗争か何かで犠牲になったヴァンパイアの末路があのスーツの残骸なのだろう。
「……ねぇねぇザウラス〜ちょっと引っかかっちゃったんだけど〜引っ張りあげてくれないかなぁ〜?」
心なしかいつもよりも弱そうな真理ちゃんが、必死になってザウラスさんの巣を掴みながら力を入れていた。多分無理だろうが。
それはそれとして……なんだか真理ちゃんが小さい気がするけど、紐無しバンジーの時に一部落ちていったのかも知れない。
「……はい、小さなスライムちゃん」
「ありがとうねぇ〜ザウラスさん」
敵対もしくは捕食被捕食の関係にならなければ非常に優しいザウラスさんと、相手に敵対の意思がなければ(一部例外はあるが)攻撃も口撃もしない真理ちゃん。2人の相性はなかなか良いようだ。
「2人とも……この後、奇襲をかけるけど問題ない? 武器は持った? ハンカチは? 銀の弾は?」
「お母さんじゃないんだから……」
過保護なザウラスさんにツッコみながら、ゆっくりと上へ登る……
一番上の僕が、あと少しで天井に手が届きそうという場所へ……天辺の糸へと手を伸ばした時……
ボッシュートの場所に強引に開けられたような穴が開き、何か見覚えのある人が落ちてきた
……あ、目があった
「!?」
懐かしい変態フェイス……もとい、懐かしい変態の顔だった。
「変態君!?」
……変態君、無事に蜘蛛の巣に捕まるといいね。
無情にも落ちる変態君を見捨てて開いた穴からよじ登ろうとすると、手をミラさんの尻尾で掴まれ、引き上げられた。
「ユート、無事だったんですのね……!」
「まあ、なんとか……?」 ミラさんは気付いていないかも知れないけど、引っ張り上げられたのに離してくれないせいで、手首は痛いわ手には血がいかないわでちょっと大変なことになっているけど、少しだけなら我慢しよう。
「ハニー!「ダーリン! 大丈夫? 怪我してない? 吸血鬼に血は吸われてない?」……ってそこの年増ママは黙っていなさいですわ! ……こほん、体は問題ありませんわね? 怪我して居ませんわね!?」
「いや、大丈夫で全然問題ないから……」
「ユート殿、無理セズトモ傷薬ハ此処ニ有ルゾ。ドンナ怪我デモタチマチ治ル万能薬ダ。1時間ハ体ノ火照リガ止マラナクナルガ」
「怪我していてもそれだけは使いたくないです」
まるで現在HPの1割が削られるという程度の語調でさらりといったデメリットが、人生丸々リリースするレベルのデメリットだったのは絶対にわざとだろう。
「小杉ユート……悪運強いわね、あなた」
「おにいちゃん、怪我はなかった? マリにいじめられてない? いきりたってない? れつじょーをおさえられなくてアリスにおそいかかってくるの?」
「アリスちゃんにこんな知識吹き込んだのは誰! エキドナさんですか!?」
「ダーリン、そんなライバルに塩胡椒や食材を纏めて送るような真似、私がすると思ってるのかしら? というかエロネタはむしろ……ブツブツ」
ともかく、みんなに声を……一部おかしいのも混じってるけど……かけられ、嬉しいことは嬉しいんだけどさぁ……みんな変態君と真理ちゃんのこと忘れてるよね? 翼広げて穴の中に入っていったドラグさんと僕が抜け出した直後から穴の中を覗き込んでるアダカさん以外全員……
DTD「変態君はね……人間のトリックスターになり損ねたトリックスターなんだよ……
和久名はただのトリックスターにすらなれなかったけどね」




