人は吸血鬼の館を進めるか? side遊斗
「弱いわね」
僕の持たされていた丸太で戦闘員(特撮的な意味でも、戦闘力的な意味でも)の吸血鬼を3人まとめて気絶させながら、ダアトちゃんが呟いた。
ちなみに4人は少し前の方で迫り来る戦闘員(特撮的な以下略)を協力してバッタバッタとなぎ倒している。
……こういう時だけ仲が良いのは気にしないでおこう。
「……ユート、ここに赤い扉がありましたの」
ミラさんに呼ばれ、振り返ると確かに赤色で塗られた……もしくは血塗られた……扉があった。
そして、真理ちゃんは無言で廊下の先を指差している……
……言いたいことは何となく分かった。廊下の先に進むか扉の先に進むか、僕が決める事になったようだ。
「おにいちゃん、むこうの方からおとが聞こえるの……」
アリスちゃんが指差す方角……廊下側からなんだか嫌な予感がするから、念の為イアリちゃんに占ってもらう事にした。
「……イアリちゃん、占いは?」
「う〜ん……」
黄色い水晶を覗き見て悩むような仕草を見せたと思いきや、即座に赤い扉を指差した。
「……『せっかくだから赤い扉を選べ』と出ましたわ」
「……何がせっかくなのか分からないけど、赤い扉だね?」
イマイチ釈然としない気持ちを抱え、ドアノブをハンカチ越しに握り、赤い扉を開いた……
「キサマ……ドウテイノ……ニンゲンダナ……!」
血走った目で、僕を睨むジェイソンもどきが待ち構えていた……
速攻かつ無言で赤い扉を閉め、ダアトちゃんから丸太を受け取り、急いでそれを立てかけた。
「…………イアリちゃん?」
「……きっとこれは占神リメンバ様からの、『占いに頼ってばかりではいけない』というお告げですわ」
「全力でDEAD ENDに誘導しておきながら御告げもなにもないと思うんだけど」
というかこんな大事な時に裏切る神に対して、一回ぐらいなにかしらの制裁を加えたいのだが、どこに居るのだろうか、そのリメンバとやらは。
ドンッ! ドンッ!
「黙りなさい三下!」
ドンドンと扉を叩き続けるジェイソンもどきにキレたダアトちゃんが扉を殴ると、途端に静かになった……
「……おにいちゃん、向こうから来る音が近付いているよ……?」
……移動した方がいいかも知れない。でもどこに……?
『キサマ……コスギユートカ……?』
「ゲス野郎がゲスい声で未練たらたらにゲスな呼び声を上げないでほしいんですの!」
再び声を上げたジェイソンもどきに対して、今度はミラさんがキレて……尻尾でドアごと吹き飛ばした。
「ダッサダサのモブキモガッサが調子にのるからこうなるんだよ〜ねぇユート?」
「……キモガッサって何?」
自然な流れで意味不明な単語が飛び出してきたので、流石にツッコんだ。




