首無騎士は最良装備で快進撃出来た
デュラス「我に丸太など必要無い」
ユート「確かにそうなんだけどさぁ……うん、なんだろうねこの釈然としない気持ちは」
「退け、雑多な吸血鬼共が……」
ユート達が手薄な防御をぶち壊していくのとほぼ同刻、吸血鬼の根城から3里ほど離れた街道を、吸血鬼兵士を蹴散らしながら駆け抜けていた……
「……貴様等のような生粋の悪魔には十字架はさぞ効くだろうな……」
愛馬の首に下げた十字架を一瞥し、呟く……
(……しかし、精霊の我はともかく淫魔のリリス殿が触れても問題が無かったのは一体何故であろうか……?)
その十字架を受け取った際、確かにリリスから手渡しされた……だが、その際にリリスは悪魔に絶対的な効果があると言っていたのに、やせ我慢などではなく、まるで効果が無いような涼しい顔をしていたのだった。
(……もしや、あのリリス殿は偽物……? いや、もし仮に偽物だったとしてもこの十字架を……仮にも精霊である我でさえ手を焼くような十字架を……手にしながらも何も起こらなかったということは……有り得ない。先程十字架と一緒に首を渡してきた直前、万が一敵であったというのなら、あの時に背後から刺すことが出来たはず……それに、影に隠れていたという事はおそらくあのリリス殿は本物……?)
「その首もらったァ!」
「……っ!」
一瞬の油断によって間一髪の間合いまで接近を許すも、そこは魔界最強クラスのリリスから直々に英雄と称されたデュラスというべきか。鎧袖一触に素早い吸血鬼を撃破した。
(……油断してはならないようだな、この戦場も……)
リリスの命令通り、目立つようにゆっくりと西門に向けて敵を蹴散らしながら進んでいた。
リリスの狙い、そして頼りになると言えば頼りになるであろう味方の存在も知らずに……