39話 へし折られた私
気温、摂氏二十五度。少々蒸し暑し。西の空に積乱雲。微風あり。
本日も、快晴なり。
大事なことではないですがもう一度記録。本日も、快晴なり。
「おはよう、剣さん」
ことことスープが煮詰まる音。もうもうと白い湯気立つ、肉の匂いのする大鍋。
そうです。朝です。朝餉の時間です。
我が主はあれから黒髪に捕まったまま、ずっと天幕に閉じ込められちゃいまして。
結局私、迎えに来てもらえなかったんですよね。
でも。おかげで、「ツヌグさまに抱きしめられて眠る」という、極上のご褒美をいただけました。
しかも。夢のようなひと夜のあと、こうして起きてみますれば。
「朝ごはん、できたわ」
ああ……!
「剣さんも、口があったらアタシの料理食べられるのにねえ」
あああああああああ!
すっ……すばら、しいいいいいい!
なんという、至福の光景!
エプロンを着て杓子を持っているツヌグさまが、四十五度くるりと左回転して、こちらを流し見ていらっしゃいます。ちょっと潤んだ大きな瞳をわずかに伏せて。
結い上げた黒いお団子頭を支える白いうなじが、絶妙の角度に傾いております。
これぞ見返り美人。最高のアングル。
あでやかです。つややかです。最っ……高にお美しいですー!
「ようツヌグちゃん、メシくれや」
「へへ、腹へったわ」
む。なんですかこのむさくるしい男どもは。三人……いや四人?
挨拶もなしに炊き出し場に入ってくるなど失礼千万。両手をだぼだぼのズボンのポケットに入れて、口にはつま楊枝。見たところかなりごろつきといった風情。
沈められた都市から流れてきた難民の中には、かような輩もいるのですね。かつては薄暗い路地裏で危ない薬をこっそり売ってでもいたかのような、貌つきの悪い連中です。
「おっと、俺たち一番乗りか」
「ツヌグちゃんほんとかわいいな。そのエプロン似合ってるぜ」
おのれごろつきども。ツヌグさまに不躾に近づき、周囲を取り囲むとは。
あっ! 待ちなさい、穢れなき乙女のやわ肌に汚い手を近づけないで下さいよ。
離れなさい。今すぐ離れなさい。でないと……
「俺、裸エプロンでご奉仕してほしいなぁ」
「ほんといい尻してるよなツヌグちゃん」
おのれ不埒者! この私が許しませ――
「はい、そこ座る!」
ぱこーん
……はい? ぱこ……?
ツヌグさま、なんでしょうか、今の爽快な音は。
「ほらあんたも!」
ぱこーん
「ちゃんと手は洗ってきた? 出して見せて!」
ぱこーん
「ひい、ツヌグちゃん勘弁っす」
「OK? これでOK? 俺きれいに洗ってきたよ?」
「ツヌグちゃん、俺にもお仕置きください」
――「まったくもう!」
ぱこーん
ツヌグさまは頬をふくらませながら、男たちの頭を杓子で小気味よく殴打されました。
叩かれた男どもは満面の笑み。この上もなく嬉しそうです。
まさかこれを喰らうために、無頼感どもはわざと絡んだというのですか?
キャッキャウフフと喜び合って、大盛りの朝ごはんを食べ始める男ども。
なんだか無性にむかつくというか……う、うらやましいというか。
「剣さんごめんね、ちょっと忙しくなるからここにいて」
あ、そんな大事に抱えて、優しく天幕の柱に立てかけてくださるなんて。
いやそれより、私もぱこーんして欲……
――「ツヌグちゃーん! 腹へったー!」「俺もー」
おや、客がまたやってまいりましたか。またぞろむさい連中ですね。しかもまたもやツヌグさまを取り囲んで、不躾にへらへら絡んで――
ぱこーん
「もう、あんたはそこに座りな! あんたはこっち!」
「いやーまいったな」
「いてえけどうれしいっす」
嬉しいですと? こやつらもぱこーん狙いですか?
――「やあ、元気かいツヌグちゃん」「食べに来たよ」
ぶ。ごろつき風情だけでなく、育ちのよさそうな二枚目タイプもたくさんやってきましたよ。うわあ、歯が光ってます。白く光ってます! むさい奴らとけん制し合ってます!
なんだか、ここに来るために早起きするのを競い合っているかのようです。
「ツヌグちゃん、手伝おうか?」――「いいからすぐ席に座る!」
ぱこーん
みなさんぱこ……いえ、ツヌグさま目当てとは……。
――「ツヌグちゃーん!」「食わせてー!」
まだまだやってきます……。いつのまにこんな事態に。
今は我が主に想いを寄せているツヌグさまなれど、こんなに選り取り見取りでは、まかり間違ってだれかになびいてしまうという可能性もなきにしもあらずじゃないですか。
そ、そんなことになれば、私のハッピーエンド計画が完全に潰えてしまいます!
男たちが朝餉を食べ終え名残惜しげに席をたつころ、丁度入れ違いになるように親子連れがたくさんやってきました。小さな子どもが眠い目をこすっています。起こされてきたのでしょう。
親子連れが食べ終わるころに、独身女性の一団が、そのあとに年を取った老人たちがやってきました。
お爺さんお婆さん方がごちそうさまと手を振って焚きだし場を後にするころには、巨大な炊き出し用のお鍋はもうほとんど空。
あれ? ツヌグさま? もしかしてまだ、あなたご自身はお食事を摂ってらっしゃらないのでは?
陽がすっかり昇りきり、難民たちが洗濯したり都へ物資を探しに出かけたりし始めたころ。
「おは……おはよう、ツヌグ」
げっそりと頬こけた我が主――いえ、フィオンが銀の杖を両手で支えにしてやってきました。後ろには黒髪がついてきています。存分に欲求を晴らしきったようで、とてもすがすがしい面持ちをしております。
ツヌグさまは明るい声を振り絞って二人を迎えました。
「おはよう足萎え! ご飯食べましょ」
さしこむ陽に優しく光るツヌグさまの瞳。
なるほど、待っておられたのですね。我が主が食べに来るまで。なんとけなげな……。
『大丈夫ですかフィオンさん』
こそっと聞いてみますれば、フィオンは散々な目に遭ったと愚痴ってきました。
とても昨夜は意識の表に出られる状況ではなかったと。黒髪はわが主を片時も離さなかったそうで、奥底に隠れているフィオンもその尋常でない激しさにいやおうなく苛まれたのだそうです。
『足腰がひどく重い……思い出すだけで気が遠くなる』
『それは大変でしたね。心中お察しいたします、フィオンさん』
『食べがてら君を迎えに来たよ。今朝方識破さんが僕らの天幕に来てね、尚怜を訊問するから、君つきで立ち会ってくれって』
弱々しい苦笑交じりの耳打ち精神波。大方、早朝押しかけたゆえに識破は我が主たちの「営み」の跡を見てしまいでもして、嫌味のひとつでも言っていったのでしょう。 しかし尚怜は私に喰われて正体不明になりましたが、十日目にしてやっと起きましたか。
『うん。彼が暴れるそぶりをみせたら、君に食べて欲しいってことらしいよアクラ』
――「あ、剣さんよかったわね」
手料理を食べ終えた我が主が私を背負いますと、ツヌグさまはにっこり微笑しながら私に手を振ってくださいました。
「気をつけていってらっしゃい。夕ごはんにまた来てね。待ってるわ」
そのようなわけで私はフィオンがいまだ表に立つ我が主に回収され、その背に負われて飛竜船の中へ戻りました。
当然のように、黒髪も一緒でした。奴はすっかり我が主の配偶者きどり。片時も離れません。
尚怜は、かつて識破が閉じ込められていた船室に監禁されておりました。
この若者の執着は哀しいことに雪豹にだけ向けられており、識破が細目で雪豹のバオを処分すると脅すと、たちまちべらべら口を割りました。
尚一族はスメルニアにおいてすでに新皇帝を即位させる手筈を整えており、今上皇帝はもはや故国に帰ることは叶わない……。
そう語る尚怜は今の己が身の境遇を諦観しきったように自嘲し、父の尚光に見捨てられた事実に全く驚きませんでした。
すでに外堀も内堀も埋めつくし、のこのこ遠征に出た皇帝を事故死させるだけ。
最後の詰めで識破に巻き返されたものの、それはこの飛竜船の中だけに限ったこと。おのれ一人が処分されても、本国での大勢はすでに変わらぬ……
そう不敵に言って嗤うのでした。
「しかし解せません。黒竜を使って北五州を破壊しまくるなど、尚光はなぜそんな暴走を?」
湖に沈められるところだった我々がまだ生き永らえていることを、奴は把握しているのでしょうか。逃げ出したあやつは後ろを振り返ることなく、北五州を破壊するべくひたすら邁進しています。それは一体なにゆえなのか。
眉ひとつ動かさぬ尋問者に、尚一族の若者はおぞましい事実を告げました。
「父は飲んだ。まっ白い……魔女の血を。眠る魔女の血を」
「眠る魔女とは……もしかして今上陛下の母君のことですか? この飛竜船に安置されておられますが」
「そうだ。あの汚らわしい混血の血を飲んだ。だから父は今、完全に狂っている」
「なるほど。尚光は禁忌を犯しましたか。今あの者は、永遠の命を得て、人心を失った状態。前後不覚に陥ってあのような真似をしているわけですね?」
メニスの真っ白い血液は大変危険です。
濃度の高い甘露を直接体に入れると体の寿命は飛躍的に延びますが、その精神は――
「いにしえの昔、かの沈陽帝はメニスの血を服用して無理やり寿命を延ばしたがゆえに狂人と化し、元老院に密かに廃されました。以来、メニスの扱いに対しては配合による子孫延命のみ許可され、血の摂取は違法行為とされております。しかしなぜそんな禁忌を犯すような真似をわざわざ……」
「父上をたぶらかした者がいる。永遠の命を得て、父こそ帝国の支配者となるべきだと、悪魔のごとく囁いた奴がいる」
「それは、誰です?」
尚怜はそこで意外にも、我が主と黒髪がよく知る人物の名を告げました。
「黒き衣の聖莉炎。金獅子家の後見人だ」
セイリエン。
そやつは、岩窟の寺院の黒き導師。
我が主を底なしの泉に突き落とした長老のひとり。
ジェリという我が主の親友の師匠だった奴です。
目の覚めるような金髪で、いかにも悪役といった貌の美丈夫です。
私がとっさに金の鎖のお姉様をけしかけた、あ奴です!
「この飛竜船を復刻させるとき、我が帝国は岩窟の寺院と同盟を結び、あそこに封印されていた設計図を提供させた。その時だ。父上が聖莉炎から密書をもらったのは……」
セイリエンは、この北五州で覇を競っている金獅子家の後見をしております。
かの家は、キュクリナスが後見する白鷹家と勢力を二分する大公家。皇帝はその金獅子家に助太刀するという名目でこの北五州の地に来ております。
つまり。つまり――
「尚光は、聖莉炎の甘言に乗ったわけですか。たしか黒竜の発掘は、尚光が進言して裁可されたこと……まさかそれも?」
「ああ、聖莉炎の勧めだ。巨大な竜の力をもって世界を統一せよ。そんな文言でたきつけていたぞ。馬鹿みたいにうさんくさいだろう? だが父は、その文言に見事に魅入られた」
「解りません。なぜ尚光ほどの者が、みすみすメニスの血を仰いだのか」
「父は魔女の血を飲む前に、すでにもう狂っていた! 正常な判断が出来ぬほどにな!」
怒りの色が、尚怜の目に走りました。
若者は怒鳴りました。
皇帝の母君をよみがえらせる儀式のため、妻と娘を生贄に招命された時。父の心は壊れてしまったのだと。
「俺は飲むなと止めたのに……利用されることなどみすみすわかりきっているのに……父上は俺の声を聞かなかった。俺を見ることすらしなかった! 父上は血を飲む前に、すでに狂っていたんだ。くそ……あの魔女のせいで!」
紅の炎のように燃え上がった尚怜の怒気は、帰るところのない皇帝を嗤うあざけりの色に変わり、それから急速に悲しみの色に沈んでいきました。
「なあ……バオは?バオはどこだ?ちゃんと全部喋ったぞ。どこにいる?バオに、会わせてくれ……」
しかし識破は、すがる尚怜に雪豹を会わせませんでした。
雪豹を人質にして脅しはしたものの、会わせるとは約束していなかったからです。
連れ去られた姫を想う心を持つ彼もまた。
腹黒い権謀術数にまみれた皇国の中枢で生き抜いてきた、したたかな貴人であるのでした。
「おとなしいね、アクラ。そんなに尚光が食べられなかったのが残念だった? 尚怜もバオに会えないってわかったら、意気消沈して気が抜けたようになっちゃって、結局、出番なしだったね」
大丈夫ですよフィオンさん。皇帝陛下がことのほかおいしくて、その分でまだ当分お腹がもちそうですから。ただちょっと、考え事をしていたのです。
「セイリエンのことだ、黒竜が暴れることを予期するどころか、そう仕向けたのかも」
ええフィオンさん。私もその可能性が大だとまさに思っていたところです。
ほら、識破もその考えに至った面持ちですよ。
「困りましたね。顧問団は今上陛下の身柄を拘束して本国へ送還するよう奨めてくるでしょう。いずれにせよすぐに本営地に撤退して、新皇帝の意向を知る必要があります」
ここに展開している救護軍もいったん引き揚げた方がよい。
冷徹に識破がそう述べるや。
『だめ!』
フィオンが支配する我が主の体の奥底から、我が主自身の声が聞こえてまいりました。まだ表には出るのはおぼつかない我が主なれど、その意志はとてもはっきりしておりました。
難民たちの怪我がようやく癒えてきたところなのに、彼らを見捨ててはいけない――。
その意志は、正義感の強いフィオンの望みと全く同じでした。
「お願いです。軍をここに残してください」
黒竜にやられた人々を助ければ、スメルニア軍にとっては益となります。
フィオンに懇願された識破が迷って、返事を言いよどんだその時――。
「識破様! た、大変です! き、金獅子家の軍が現れました! こちらに押し寄せています! 獅子の軍隊が、我々を包囲しています!」
兵が息せき切って風雲急を告げてきました。
我々が急いで操舵室にまいりますと、その恐ろしい光景が大きなギヤマンのはめ窓越しに広がっておりました。
天幕村に押し寄せている、黄金の波。
快晴の空のもと、太陽の光を受けてまぶしく煌めいているそれは――鉄でできた獅子たち。
何百何千という獣の群れにまたがった兵士どもが、あっという間に難民たちがいる天幕村を囲んでいきます。
あれは。あの機械の獣どもは――!
『レヴツラータの猫どもじゃないですか!』
「レヴツラータ?」
『己れのことを神獣とか抜かすライオンですよ。金獅子家が守護神にした生物兵器でしてねえ。あの猫どもはあやつの使い魔レーヴェです。飛べませんが走りは速いです。普通の馬なんか比べ物になりません。あいつらを食っちゃっていいですか? 我が主。あいつら脳だけは生ものですから、おいしい魂が詰まってるんですよね』
私は心中、舌打ちする思いでした。
眷属たる鉄の獅子が出てきているということは、主人である神獣レヴツラータがまぎれもなく近くにいるという証です。
古代の生物兵器をくり出してくるなんて、はっきりいって、洒落になりません。
黒竜ヴァーテインに続いて金獅子レヴツラータ? まじで勘弁して欲しいです。
金獅子家は後見人のセイリエンから、寺院の封印物を相当横流しされているのでしょう。
青く晴れ渡る空の彼方に、巨大な飛竜船の影が見えています。
見たところ、この飛竜船よりも性能のよい型。後期統一王国時代の最終型に近い飛竜船です。スメルニアに渡した設計図よりも後年のものが使われているのは明白です。
おおかた神獣はあの船の中にいると目されます。
黄金色の獅子の群れを凝視する黒髪が、その軍勢の中にいくつもかかげられている御旗を読んで思いっきり鼻白みました。
「『救世軍』だと?!」
ああやはり。セイリエンは、これを狙っていたのです。
スメルニアに北五州を蹂躙させ。悪の軍勢を駆逐する英雄軍として、金獅子家の軍を差し向ける――
大陸中の者どもがたちまち伝聞することでしょう。
金獅子家のきらびやかな勲詩を。
この地を治めるにふさわしい名家であると、言祝ぐことでしょう!
スメルニア軍は金獅子家に嵌められるために、この地へと導かれてきたのです。
荒ぶる鉄の獅子どもの、哀れな生贄となるために。
敵の数も勢いも、飛竜船にいるスメルニア兵数百ほどではまったく比較になりません。
識破は即座に撤退を決め、ただちに船を浮かそうとしました。
いまや獅子どもに飲み込まれようとしている、天幕村の人々を残して。
『そんな。だめ! やめて!』
その体の内で我が主が叫び。
「助けないと!」
フィオンが怒鳴りました。
私は我が記録に刻まれた、ツヌグさまの笑顔を思い起こしました。
『また夕ごはん食べに来てね。待ってるわ』
麗しい声が何度もこだまします……。
『待ってるわ』
『待ってるわ』
『待ってるわ』
あの方を、このまま見捨てる?
『そんなことだめ!』「そんなことできるものか!」
体の内外で少年たちが同時に叫びました。
やることは、ただひとつ。
我が主に急かされたフィオンは、杖をついて猛然と操舵室から走り出ました。黒髪の制止をふりきって、浮上しようとする船から飛び降りました。
ばしゃばしゃ湖の水を跳ね上げて、天幕村に飛び込んで。
この私を、背中から抜き放ちました。
すでに難民たちは、獣を操る兵士どもに襲われ始めておりました。
抵抗する者は獅子の牙と爪にやられ、逃げ惑う者は次々と捕まえられています。
獅子の軍は人々を無理やり何処かへ収容しようという腹づもりのようです。
『アクラさん! 食べて!!』――「みんなを救え! アクラ!」
もちろんです、我が主たち! 任せなさい!!
私は、喰らいました。
金の獅子どもと、そやつらに乗る兵士どもを喰らいました。
ウォータールーの戦場にいた兵士どもよりも多いそやつらを。
火星の基地を守っていた超合金の巨人よりも固いそやつらを。
喰って。喰って。
喰いまくって。探して。黒いお団子頭の女の子を探して。
喰って。また探して。喰って。
喰って。
喰って。
探して……
しかしなんという敵の多さ……。
ツヌグさまの姿は……見えません。
一面金の獅子に囲まれて。辺りが見えません。
もっと、喰わなければ。
喰って。
探して。
喰って……。
そういえば私。
こわれかけて、いたんでした。
でも、まだ喰えます。
喰って。喰って。喰い続けられます。
ツヌグさま。
あなたを、見つけるまでは。
喰らって。喰らって。喰らい続けます。
もっと、喰らわなければ。もっと……もっと……
「アクラ! ふんばれ!」
もっと……
『がんばって! アクラさん!!』
もっ……
「あっ……!?」
あ……
『アクラさん――!!!!』
ツヌグサマ
ドコ
デス
カ
ワタシ
オレ
テ……
ゴメ
ナサ……………………
イ…………………………………………
0101010101010101010101010101010101
0101010101010101010101010101010101
『おはようエクスカリバー。
どうしたの? 大丈夫? ああ、刀身が折れたんだね。待って、今なおすから』
リ……
『大丈夫だよ。僕の腕を信じろ。ほんとに君は、いつも心配性なんだから』
リシャル……
『あれ……? う……ごめん、エクスカリバー。復元機能が……作動しな……』
え……? リシャ……ル? リシャ……!
『なんだぁ? 折れたのかぁ? だから無理すんなっていったろ?』
ク……!
『大体おまえは、いっつもお人よしすぎるんだよ』
空也!?
なんで、こんな、映像が目の前に……!
『なまくら何してるの』
エ……?
『馬鹿ね。だからおとなしく玉座にいるだけでいいって言ったでしょ』
エアリエル……?!
『フラン! はは、おまえどじったなぁ』
じ、ジーク・フォンジュ!
『フランベルジュ! ついにこっちにきたか』
ぎ……銀足の……ルー……! な、なんで、次から、次へと……
『エクス!』
……!
『僕のエクス!』
!!
『きて、エクス』
!!!
『……僕のこと、忘れたの?』
!!!!
『名前を呼んで。君にあげた名前。君のものになるために、あげた名前』
!!!!!
『愛してるエクス。だれよりも』
!!!!!!
『僕の、いとしい……』
ソ――
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