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憑き来たる者共  作者: 冷奴
日常と非日常、その間で
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思案する者

『こんばんは。五月二十日、七時のニュースをお伝えします』

『本日未明、T都のN空港から飛び立った旅客機が墜落し、操縦士と乗客合わせて550名のうち、527名が死亡しました。事故原因はエンジントラブルだとされていますが、不明な点も多く、現在も調査が続いています____』




『生存者は23人ということですが、これについてはどう思われますか?』

『奇跡的な数字、といって差し支えないでしょう。以前起きた同じような例では、生存者の数は二桁にも達していないのですから』

『しかもその23人全員が未成年ということで世間を賑わせていますが、これに関しては、何か?』

『恐らくは、乗客たちが優先して、子どもたちを安全な場所に逃がしたんでしょう。彼らが発見された場所は、前例を見ても____』




『5.20の飛行機事故の子どもたちを支援するために開設された”23孤児募金”が、わずか3ヶ月で目標額を突破しました。子どもたちを引き取りたいと個人で名乗りを上げる、”里親”と呼ばれる事例もあり、活動は日本全国に広がっています____』




『5.20の”23孤児募金”プロジェクトで、有志によって引き取られた篠山 佳織ちゃん11歳が、引き取られ先で死亡しているのが見つかりました。大量出血による失血死とみられており、警察は、殺人の容疑で”里親”の濱田 和枝容疑者57歳を逮捕し、事情聴取を行っています。濱田容疑者は一貫して容疑を否認しており____』




『”23孤児募金”プロジェクトで引き取られた大山 正男くん9歳が、通学路で倒れているのが見つかり、病院へ搬送されましたが、まもなく死亡しました。死因は大量出血による失血で、前例の篠山 佳織ちゃんと同じであり、警察は一連の事件を関連づけて調査するとのことです____』





ぷつっ。

モニターの電源を切り、青年は座った椅子の背もたれに体を預けた。彼の首元では、いっそ黒いほどに深い紫の石が、鈍い光を発している。

天井を見上げ、ため息を一つ。


「……あれからもう、随分だな……」


視線を壁に移す。そこには、今までに死亡した5.20の子どもたちの新聞記事が、額に納めて掛けられている。


「あの事件の生き残りは、僕を含めて12人まで減ってしまったわけだ」


だが、と、青年は服のポケットから手帳を取り出す。開くと、中には少年少女の写真。5.20の生き残り、そのさらに生き残りだ。


「これ以上はやらせない。そのための君だ。……そうだろう……?」


言いながら、首にかかった石を撫でる。それに呼応するように、紫黒色の石が二度、鈍く輝いた。

お読みいただきありがとうございます。スローペースでぼちぼち更新して行きますので、暇な時に除いてやってください。

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