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見上げた天井は・・・

「おら、早く起きろ新入り!」


 ゴス!


「オグッ・・・!?」


 突然の叫び声と頭の痛み。


「ちょっと、彼は私の所有物なんだからね!乱暴にしないで!」


「チッ・・・。俺たちがもう起きてるのに、新入りがグースカ寝てるのが気に食わねえんだよ。」


 朦朧とする意識を無理やり覚醒させて、目を開ける。開いた目に飛び込んできたのは、蜘蛛の巣が貼っている知らない天井と、数人の男女だった。


「な・・・何だ・・・?」


 恐らく蹴り上げられたんだろう。頭が痛む。ズキズキ、ズキズキと自己主張してくる頭痛を我慢して、フラつく体を制御する。


「ゴメンネ。乱暴な起こし方しちゃって。」


「!?・・・あ、天津・・・京香・・・・・・!」


 俺の目の前には、人形のように整った美しい女性が存在していた。黒いゴスロリ風ドレスを身に纏い、俺に笑いかけてくる。・・・出来れば、一生出会いたく無かった人物。


「フフッ!貴方たちが、もう少しで塔をクリアしちゃいそうだったからね。そうなったらコッチも手が出せなくなるでしょ?だから、その前に拉致しちゃいました!」


「グッ!」


 その言葉を全て聞く前に、俺はショートカットメニューから【妖刀屍鬼】を選択し、装備した。数人に囲まれている上に本調子ではないが、何故か敵が警戒を解いている今しかチャンスはない!先ずコイツを殺し、隙を見つけて逃げる!!


「無駄だよ♪」


「な・・・に!?」


『レアスキル【眷属完全支配】は、称号【真祖を継ぐ者】によって、一部の効果が無効化されています。』


『レアスキル【眷属完全支配】によって、一部の行動が実行不可能に設定されています。』


『支配者であるプレイヤー《天津京香》及び、設定されたプレイヤー《シモン・グラドニフ》、《マリアン・イグニス》、《ホールド・チェッカー》、《篠崎青砥しのざきあおと》、《クーロン・キュー》に攻撃、またはそれに類する行為を行う事は出来ません。』


『レアスキル【眷属完全支配】の効力を100%無効化する為には、サブ職業エクストラ【真祖】に転職するか、支配者であるプレイヤー《天津京香》を殺害する必要があります。』


「こ、これは・・・・・・!?」


 俺の振るった刃は、《天津京香》に触れる寸前で止まっていた。俺の意思とは関係なく。既に、どれだけ力を入れても一ミリも動かす事が不可能だった。


 そして、この現象の原因は、間違いなくこのシステムメッセージに表示されている【眷属完全支配】というレアスキルだろう。俺は、寝ている間に何かをされたようだ。


 そして、他にも表示されているプレイヤーの名前。これには、嫌というほど見覚えがあった。


「【爆弾魔ボマー】、【人魚姫マーメイド】、【殺人機械キリング・マシーン】に【虐殺道化師スローター・ピエロ】だと・・・!?」


 最悪だった。最悪の状況だった。最後の《クーロン・キュー》という人物は誰だか分からないが、それ以外の人間は、《天津京香》に勝るとも劣らない、イカれたサイコ野郎どもばかりだったからだ。


 それぞれ、最低でも数百人以上は殺してる人類史でも最悪レベルの犯罪者たち。《天津京香》の周りには、そんな化け物ばかり集まっているのか!?


「フフフ、そろそろ皆警戒してきてね。狩りが難しくなっているの。外出する事を控えて、ゲームクリアされるまで家に引き篭ろうとする軟弱な人間まで現れたんだよ?だから、手を組むことにしたの。ギルド・・・作っちゃった♪」


 その言葉を聞いて、俺は頭の中が真っ白になった。


 最悪だ。最悪だ!コイツらがギルドを作っただと!?誰がこんな化け物集団に太刀打ち出来る!?細々としたPKは今までもあったが、これから始まるのは虐殺だ!既に二万人も残っていないプレイヤーなんて、直ぐに消え去るぞ!?


「なんて言っても、こっちにはクーロンがいるからね!宿屋に引き篭ってる奴らなんて、楽勝だよ!彼の御陰で、貴方も誘拐することが出来たんだし♪今までは一人でも生きていけると思っていたけど、やっぱり人間は助け合って生きて行かなきゃね!!」


「システムに守られている、他人の敷地や所有物件に侵入することが出来るスキル・・・・・・!?」


 レオンや結衣が言っていた。『神の意思システムによって守られているから、家の中は絶対に安全』だと。『今まで、許可無しに他人の家に入る事の出来た人間など一人も居ない』と。だが、それは誤りだったのか。ただ、見つかっていなかっただけなのか・・・!!


「そのとおり!クーロンは、サブ職業エクストラ【転移師】。多少の制限はあるけど、好きな所にワープ出来る素敵なスキルを持っているの!それで、昨夜君の屋敷に忍び込んで、君を拉致してきたってわけ!」


「れ、麗奈は・・・?彼女は無事なのか!?結衣やレオンは!?」


 ゾクッ!っと、背筋に寒気が走った。今まで笑顔で話していた《天津京香》が、恐ろしい目つきで睨んできたからだ。


「ねぇ、貴方は既に、私の所有物なんだよ?何故か【眷属完全支配】が十分に作用していないみたいだけど、それでも私に逆らう事は出来ない。他の女の事なんて、気にしないで欲しいな。・・・・・・もう会うことなんてないんだから。」


「な・・・・・・!?お、前・・・!お前えええええええええええええ!!!」


 バチンと、頭に痛みが走る。目の前が真っ赤に染まった。噛み締めた口からは血が滲み、体中が沸騰しそうに熱くなる。


『危険です。レアスキル【眷属完全支配】によって、貴方の行動は抑制されています。これ以上の負荷は、脳に深刻な影響を及ぼす可能性があります。危険です。』


 システムメニューが何か言っているが、既に俺には目の前に立つ女の事しか見えない。『もう会えない』だと!?ふざけるな、ふざけるなよ《天津京香》!!お前・・・!お前・・・!!!


「麗奈に・・・何をしたあああああああああああああああ!!?」


 ブチン、と、何かが切れるような音がした気がする。その瞬間、俺は一歩前に踏み出した・・・・・・・・・。《天津京香》は、流石の反射神経でバックステップし、俺の振るった刃を避ける。今まで、全く動かなくなっていた体が、何故か動くようになっていた!!!


 が、理由なんてどうでもいい!!!今は、コイツを・・・


「殺す!!!」


 ”神衣:黄神威”発・・・!!!


「いい加減うるせぇ。」


「ゴッ!?」


 俺の意識は、そこで途切れた。


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