片付け
次はもっと早く更新するとか言ってたけど無理でした。スイマセン。
「・・・・・・あ、あの・・・。」
『何ですか?』
私が話しかけると同時に、にっこりと素晴らしい笑顔で笑いかけてくるレオンと結衣。
「・・・何でもありません。」
今私たちは、過去最大に困った状況に陥っていると言っても過言では・・・あるか。
でも、気まずさという意味では歴代上位かもしれない。うん、きっとそうだと思う。
「しかし・・・うん。本当に無茶しますねアナタは。」
一見にこやかに笑っているように見えるレオンだけど、その身から発せられる怒気が半端じゃない。そして、その後ろで薄く笑いながら包丁を研いでいる結衣が本当に怖い。・・・冗談じゃなく怖い。
「そろそろお腹減りましたね・・・。今日の夕御飯は何にしましょうか?」
シャリシャリと音を立てながら包丁を研いでいる彼女の、色々と推測することが出来るその台詞に、私と銀狐は身震いするしかない。
「そうだね・・・。何にしましょうか?」
レオンさん、そう言いながらコッチを見るのやめてくださいお願いします(´;ω;`)
私たちがリビングで床に正座させられているのは、勿論理由がある。・・・まぁ、理由は言わずもがな。私が撃った【土流弾】だ。
あの時はテンションが振り切れていて、銀狐を倒すことしか頭に無かった為に、あんな無茶をしてしまった。結衣もレオンも巻き込まれるのが分かっているのにあんな効果の弾丸を使うなんて、今になって思えば、どうかしていたとしか言い様がない。
・・・でも、言い訳をさせてもらえるのなら、私は【土流弾】には、殺傷能力が欠片も存在しないことを知っていた。・・・けど、まさか『地形は元に戻らないし、NPCや召喚獣に付いた土や泥はそのまま残る』ということは知らなかったの。
いや、戻ると思うじゃない?現に、銀狐に付いていた泥とかはすぐに光の粒になって消えたし。いつもゾンビ狩りでお世話になっている【アルカイドの館】とかのダンジョンでは、どれだけ地形をボロボロにしようと、数時間後には完全に修復されているんだからさ。
だからまさか、レオンや結衣、そしてレオンの屋敷の庭が・・・こんなに混沌とした状態で残るとは思わなかったのよぉ・・・(´;ω;`)
「僕たち、本当に危険な状態だったんですからね?流されながら土は口に入るわ、石がぶつかって来て痛いし、最後なんて、危うく生き埋めになるところだったんですから!」
「うわぁ・・・そんな状態になってたのかよ。」
銀狐がかなり引いている。それほどの状態になっていたのなら、ブチギレていても仕方がない。彼らは冗談抜きで死にそうになっていたのだから。っていうか、刺されても文句が言えない状況だった。
・・・何が『殺傷能力はない』よ!無茶苦茶死にそうになってるじゃない!?【土流弾】の説明文どうにかしてよ!?
「まぁ、まさか『地形変化系統』の特殊弾なんて存在しているとは思いませんでしたしねぇ・・・。事前に知っていれば、お二人の決闘を見守ろうなんて思わなかったでしょうけど。言ってみれば、戦略兵器ですよアレは。あんな強力な効果の特殊弾なら、噂になっていても可笑しくないんですが・・・。」
レオンは私を苦笑いしながら見つめた。
「僕は【ウェポンマスター】ですからね。色々な職業の情報も知っておかなければいけません。当然、『銃士』系統の情報も隅々まで知っている・・・筈でした。なのに、僕はあの【土流弾】なんて全く知らなかった。・・・・・・もしかすると・・・。」
そこでレオンが言葉を切ると、結衣が叫んだ。
「まさか!?【魔銃製作者】が現れた!?」
「そうかもしれないですね。」
二人だけで納得しあっているので、聞いてみる。
「あの・・・【魔銃製作者】って?」
結衣が説明してくれた。
「『エクストラ』系統のサブ職業の一つです。『エクストラ』っていうのは、銀狐さんの【神衣剣士】みたいに、特殊なクエストをクリアしないとなれない職業なんです。更に、この『エクストラ』系統は、『一人しか転職出来ない』という共通のルールがあります。例えクエストをクリアしたとしても、その人の前に既にその職業に転職した人がいたら、なることは出来ません。・・・その人が死ななければ、ね。」
「つまり、ほかの人が【神衣剣士】になろうとしたら、俺が死ぬのを待つしかないってことか。」
「っていうか、銀狐さんが保留にしてる【聖邪の剣士】も『エクストラ』ですよ?【神衣剣士】の状態で、幾つかの条件を満たすことによって転職が可能になる職業の内の一つですから。貴方がその職業に転職すれば、【神衣剣士】の枠は空くでしょうね。・・・・・・ただ。」
「ただ?」
「既に私たちは、ギルド【希望】に入っています。そのため、【希望】の人間以外は【神衣剣士】への転職クエストを受ける事は出来ません。だから、実質不可能ですねぇ・・・。」
「成程。」
「多分、あの天津京香も、【吸血鬼】の『エクストラ』だと思いますよ?ただ、私も書物で読んだことがあるってだけで、転職条件とかは全く分かっていませんがね。・・・数百年間、誰も就くことが出来なかった伝説の職業なんですよアレは。」
・・・一番聞きたくない名前を聞いてしまった。正直、あの人はヤバすぎる。もう二度と会いたくない。
「ま、彼女と会いたくないなら、先ずは塔を攻略しないといけませんよ?ほかの人に先を越される前に。最近はあまり進むことができていませんし、そろそろ急がないといけませんね。」
と言って、話を終わらせるレオン。どうしたんだろう?
「まぁ、今の貴方たちには関係ありませんよね。お二人は、この庭を綺麗にするまでは何処にもいけないんですから。」
『え?』
リビングの窓から見える外の状況。それは、台風と地震が一片に来たのかと思うほど凄惨な状態だった。・・・これを、二人で直せと?
「それまではご飯も無しですから。頑張ってくださいね!ま、今回のことは、これでチャラにしてあげますよ。」
呆然とする私達を置いて、二人はリビングを出て行ってしまったのだった。
『・・・・・・どうしよう?』
結局、一晩中頑張って掃除しましたよ。銀狐が式神【真祖】まで呼んでね。
・・・本当に大変だったなぁ・・・・・・(;´д`)