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もしかして・・・

「クソ・・・何なんだよ・・・。」


 俺は自室で普段飲みもしないビールを飲んでいた。正直、飲まないとやってられるか・・・。


 吸血鬼を倒した後、俺たちは直ぐにレオンの屋敷に帰った。アイツとの戦闘で精神的にも疲弊していたし、なにより、アイツの最後の言葉が、俺と麗奈からやる気を奪った。俺は、新しい職業への転職や、新スキル、新称号などもあったが、それを確認する気力も残っておらず、今も保留状態にしている。


―――お前の言っている奴は、俺とは別だよ。


―――恐らく、そいつはまだ生きている。


 ・・・やっと、皆の仇を討つことが出来たと思った。これで、皆の無念を晴らすことが出来たと思った。なのに・・・・・・


「『そいつは俺の』って・・・何なんだよ・・・・・・。」


 アイツは、最後に何を言いたかったのだろうか?


「・・・はぁ・・・・・・・・・。」


 重い溜息を吐く。そもそも、敵の言葉をそんなに簡単に信じてもいいのかと思われるかも知れないが、俺にはアイツの言葉を疑うという選択肢は存在していなかった。


 アイツは、嘘を吐いてはいないと、心の何処かで確信しているのだ。


「クソが・・・!」


 飲み終わったビールのコップを壁に投げつける。コップは壁にぶつかり、ガシャンと耳障りな音を立てて粉々に砕けた。破片は地面に落ちる前に光になって消える。


「仮想の世界・・・か・・・・・・。」


 と、何気なく呟いた言葉に、引っかかりを感じる。


「・・・何だ?」


 俺は、違和感の正体を探ろうとするが、分からない。


「ここまで来てるんだけどな・・・。何だこの違和感は・・・・・・。」


 それから暫く、俺は全く動きもしないで考え続けた。・・・これは、とても大事な問題な気がするのだ。





「銀狐・・・。まだ起きてる?」


 どの位の時間が経っただろうか?ドアをノックする音で俺は現実に帰った。どうやら、長い時間深く考え込んでしまっていたらしく、体のアチコチが凝り固まってしまっていた。体を動かすとポキポキと音が鳴って心地いい。


「・・・銀狐・・・・・・?」


「あ、あぁ、起きてる。入ってこいよ。」


 返事をするのに間が空いてしまったから麗奈が不安がってしまっていた。慌てて返事をする。


「・・・ゴメン、寝てた?」


 キィ・・・と音を出しながらドアがユックリと開く。開いた隙間から少しだけ顔を覗かせている麗奈。不安がった顔が・・・


(か、かわえぇ・・・)


 思わず顔が綻んでしまったが、それを慌てて戻し、麗奈を手招きする。


「来いよ。考え事をしてただけだから。」


 それを聞くと、嬉しそうにトテトテと小走りでやって来る麗奈。


 俺が自分の膝をポンポンと叩くと、麗奈は俺の膝の上にちょこんと座る。その仕草が無茶苦茶可愛くて、ちょっとヤバイ気持ちになりかけたが抑えた。


「・・・不安、か・・・?」


「・・・・・・やっぱり、分かっちゃうか。銀狐には隠し事出来ないね・・・。」


 麗奈は、著しく感情が不安定になると行動が多少幼児化してしまう。今回の事は、麗奈の精神にかなりの影響を与えてしまったようだ。


「・・・今回の事は、俺もかなり混乱しているからな。アイツが先輩たちの仇じゃないなら、あの時のアイツは一体何だったんだ・・・。」


 と、そこまで言った時だ。


「え・・・?」


 俺は、自分の言った言葉に違和感を覚えた。


「何だ・・・?今の違和感は・・・?さっきまで感じてた違和感の正体はこれか?」


「どうしたの?銀狐?」


 麗奈が首を傾げている。だが、俺は自分の考えを整理するので頭が一杯で、説明する余裕がない。


「そもそもこのゲームは完全新作の筈だ。キャラや敵Mobも完全に新作として作っていると、ゲームを始める前の説明会で東条光一も言っていた。・・・先輩達が殺されたあの事件が今から四年前だぞ?そして、その時にはこのゲームの情報は完璧に隠蔽されていて誰も知る人間は居なかった。・・・ブライト・アームズ・・・・・・・・・社員以外は・・・・・!」


 そうだ、これが違和感の正体。そもそも、あの時の犯人は、何故あんな格好をしていたのか?何故、CMもしていなかったゲームのキャラクターの格好をしていた?姿形だけじゃなく、声まであの吸血鬼と瓜二つだったんだぞ?


 一般人では知ることの出来ない情報を知る事が出来るのは、このゲームの制作に関わっていた人物だけじゃないのか・・・!?


「犯人は、このゲームと関係がある人間なのか・・・!?」


「あの時の犯人を参考にして、あの吸血鬼を作ったんじゃないの?」


「それなら、ブライト・アームズはその犯人を見た事があるということになる。俺の有罪判決を取り消す事も出来たはずだ。」


 俺と麗奈が、あの化け物が皆を殺したんだと言っても、裁判官は信じてくれなかった。・・・いや、最初から俺を犯人だと決めつけているような節まであった。俺たちの主張は全て却下され、何も出来ないまま一方的に死刑宣告を受けたのだから。


「もしかして・・・あの裁判に、ブライト・アームズが関わっているのか?」


 今までの考えは、推理とすら呼べない物だ。想像、妄想の類に過ぎないかも知れない。・・・しかし、俺の中には、ブライト・アームズ、そして社長である東条光一への不信感が募っていった。


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