発見!宝箱!
『宝箱』。何て魅力的な響きだろう。私に限らず、殆どの人は、この言葉に凄い魅力を感じると思う。時には、宝箱本体の値段のほうが明らかに高いであろうゴミアイテムが入っていたりすることもあるけど、その辺のドキドキも含めて『宝箱』という存在は素晴らしいと思うの。
迷路のような通路を進み、強大な敵を倒して、苦労してたどり着いた場所に隠された、私達を魅了して止まないその箱は、最早ゲームの醍醐味と言っても過言では無いはずだ。そうでしょう?
・・・・・・だと言うのに。
「あれは・・・罠よね?」
「ああ。これ以上無いほどに罠っぽいな。」
南の塔50階。ようやくこの塔を半分登った私たちは、広い空間に出ていた。明かりが殆ど無いから薄暗く、反対側の壁が見えない程に広い空間だ。恐らく、何十メートルも広がっていると思う。そして、入口にいる私達から見えるギリギリの位置に、大きな宝箱が一つポツンと置いてある。広い空間に、如何にも罠っぽい宝箱・・・つまり、ボスフラグ。
「・・・はぁ・・・・・・。このゲームで始めて見つけた宝箱が罠とか、ないわー・・・。本当にないわー・・・・・・。」
私が盛大に溜息を吐くと、残りの皆が苦笑して見てくる。
「そういえば、お前宝箱大好きだったな。宝箱を開けるためだけに『クラインの迷宮』に行ったりさ。」
『クラインの迷宮』は、私たちが以前やっていたVRMMOで、最難関のダンジョンと言われていた場所だ。出現する敵は全て中級ボスレベル、地形トラップに時間限定トラップなどが盛りだくさんで、更に、このダンジョンの特徴として、宝箱が大量に存在していた。
伝説級の装備やアイテムが入っていることもあれば、即死トラップや、裏ボスレベルのミミック型モンスターが出現したりと、もう色んな意味で凄いダンジョンだった。因みに、私達は初挑戦時に、ここをノーミスでクリアしたから、『不死身』なんて二つ名が付いていたりした。
「懐かしいね・・・。もう一度やりたいな。二人で。」
「・・・そうだな。帰ったら、もう一度やろうな・・・。そのためにも、絶対に生きて帰ろう。」
「銀狐・・・。」
「麗奈・・・。」
私たちが見つめ合っていると、後ろからパンパンと手をたたく音が。
「ハイハイ。イチャラブ空間を作るのは止めて下さいね。それで、結局どうするんですか?あの宝箱。」
結衣さんが、宝箱を指さしながら尋ねてくる。
「どうするって言われても・・・どうしよう?」
「ああいうのは、出てきたモンスターを倒すと強力なアイテムや装備を落としたりするしな。」
「・・・いっそ、ここから攻撃してみる?」
と私が蒼龍を具現化させて聞くと、レオンが慌てて私の前に飛び出してきた。
「やめたほうがいいですよそれは!中の物が壊れるかも!」
「・・・そんなところまでリアルに作らなくても・・・・・・。」
と私は項垂れる。無駄に色んな所がハイクオリティだねこのゲームは・・・。
「”霞楼”なら、即死トラップでも耐えられるか・・・?」
「一撃なら耐えられますけど?”霞楼”は、自身に危害を加える意志の有る攻撃全てを一度だけ無効化するスキルですからね。ただ、知っての通り、連続攻撃には効果が有りませんから、気を付けないと死にますよ?」
結衣さんが結構きついことを言っている。流石の銀狐も、死ぬと言われて尻込みしている。
「【精霊術師】の”緊急避難結界”なら、安全に宝箱を開けられると思いますよ。全ての攻撃を一定時間無効化するスキルなので。・・・ただ、クールタイムが2時間あるし、発動している最中は、結界の中から一歩も出られないし攻撃も出来ません。時間稼ぎ専用のスキルです。」
「なるほど・・・。分かった。開けてみるか。もし無視して進んで、アレがクエスト専用アイテムだったりしたら目も当てられん。」
と銀狐が言ったので、私たちは十分な準備をしてから宝箱を開ける事になった。