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”黄神威”発動

「当たって欲しくない予想が当たっちゃいましたね・・・。」


 結衣が武器を構えながら囁く。


「そうだな・・・。でも、襲ってくるのなら倒すだけだ。」


 俺たちが天津京香の標的にされる危険性は元々分かっていた。このゲームでギルドを作ることが出来たのは、まだ俺たちだけだからだ。そもそもこのゲームの参加者は仲間と協力するという考えを持つ人間が少ない。殆どがソロプレイヤーなのだ。そして、ソロではこの塔を攻略することは難しい。つまり、俺たちは塔をクリアする可能性が一番高いグループということになる。


 天津京香が一体何を考えているのかは分からない。だが、塔をクリアした人間にはPKを仕掛けることは出来ないのだから、クリアする前に襲ってくるという可能性は十分あったのだ。最悪の予想が当たってしまったな。


『麗奈・・・。敵を一点に集めるから、その時に【蒼龍】で・・・。』


『分かった。後ろでチャージしてるよ。』


『レオン。敵が動けないようにしてくれよ?』


『分かりました。』


『結衣、合図をしたら下がるぞ。』


『了解です。』


 PTチャットで全員に作戦を伝える。PTチャットでは伝えたい人間以外には聞こえないようになっているので、敵にはバレていない筈だ。命が懸かった状況だし、壁が崩れるとか言ってられない。使える手は全て使おう。


「じゃあ、行くぞ!」


 結衣と同時に走り出す。狙いは一番前の男!


「”神風”!」


 俺は、何時ものように走り込みながら神速の抜刀術を発動した。鞘から解き放たれた【妖刀屍鬼】は、獲物を求めて男の胴に向かっていく。絶対に当たると確信したその時・・・


 ギン!


 という鋭い音と共に、敵の篭手によって俺の攻撃は止められた。


「チッ・・・。」


 防御は間に合わないと思ったんだがな・・・。けど・・・!


「”連撃”!」


 瞬時に前傾姿勢だった俺の体勢がニュートラルな状態――つまり、刀に手を掛けたまま直立体勢に戻った。


「・・・っ!」


 敵の目に驚愕の表情が浮かぶ。完全に操られているんだと思っていたが、一応感情はあるんだな。


「”斬首”!」


 しかし、手加減はしてやらない。敵が驚いた隙をついて敵の首に刃を走らせる。完璧なタイミング!防御は絶対間に合わない!・・・しかし・・・


「”完全防御”。」


 という敵の声が聞こえたと同時に、俺の攻撃はまたもや篭手に弾かれてしまった。


「なっ・・・!」


 必殺の一撃を弾かれた俺は体勢を崩してしまい、攻撃を避けることが出来ない・・・!


「”爆裂拳”。」


 敵の拳が真っ赤なエフェクトに包まれ、俺の顔に向かってくる・・・でも!


「舐めんな!”霞楼”!」


 俺の体を透過した拳は、そのまま背後にあった壁に衝突し爆発した。


「ぐっ・・・!」


 爆風のダメージまでは防ぐことが出来ないため体力が少量減るが、その程度なら【自然治癒】でどうとでもなる。


「このチャンス逃すか!”神衣:赤神威”!」


 俺たちの体が炎に包まれると、敵はそれに驚きジャンプして後退しようとする。が、俺たちが逃すと思うか!?


「結衣!」


「はい!」


 俺の代わりに残りの3人を牽制してくれていた結衣が”兜割り”と”神風”によって敵に一撃を与えて後退する。俺も同時に後退すると、そのタイミングに合わせてチャンスを伺っていたレオンが”グラビティ・エリア”によって敵全員を足止めする。


「ここだー!」


 そして、動けなくなった敵に麗奈の【蒼龍】による蹂躙が始まった。


 ガガガガガ!


 まるで工事現場の機械のような音が、周囲の壁に反響して更に大きく響く。壁が崩れ、敵の体力がゼロになるまで、この蹂躙は続いた。


「はぁ・・・はぁ・・・・・・。」


 肩で息をしている麗奈を抱きしめる。


「ごめん。私、殆ど何もしていないのに・・・。」


「仕方がないさ。人を・・・撃ったんだから。」


 麗奈のステータスの称号欄に、【PK】が存在することは知っている。多分、俺と合流する前に麗奈は人を殺しているんだろう。でも、人を殺すことに慣れてはいけないんだ。


「俺も、手が震えているんだ。襲われたとはいえ、俺たちは人を殺した。それは事実だ。そのことに対して、罪悪感を覚えなくなったら終わりだよ。」


「・・・うん。」


 麗奈はまだ落ち込んでいるが、ここはダンジョンだから、何時モンスターに襲われても不思議じゃない。早くこの階の安全フィールドを見つけて休憩しないとな。


 ・・・と、麗奈の元を離れた時だ。嫌な予感を感じた。その予感の正体が分からなかった俺は兎に角仲間に注意を促そうとして・・・・・・


「あ・・・・・・。」


 見てしまった。


「”影渡り”。」


 麗奈の影から音も無く現れた天津京香が・・・


「いただきまーす。」


 麗奈の首筋に牙を突き立てるのを・・・。


 プツッという音と共に麗奈の首に牙が刺さり・・・


「え・・・?」


 麗奈が漸く自分の身に起きている自体に気が付いた時・・・俺の意識は弾けた。


(・・・っ!”神衣:黄神威”!!!)


「俺の女に、何やってんだテメー!!!」


 ゴッ・・・!


 俺の体は、文字通り雷のスピードで敵の顔面を殴った。


「ぐううう!?」


 天津京香が鼻から血を吹き出しながら吹き飛んでいく。


「ど、どういうこと・・・?今のスピードは・・・何?」


「お前、覚悟は出来てるんだろうな・・・?」


 視界が赤く染まる。目の前の女に対する怒りで感情が暴走する・・・!


「殺す・・・!!!」


 ポーン♪


 『”神衣:黄神威”が発動されました。』


 『スキル”紫電蒼炎しでんそうえん”の使用条件を満たしました。”紫電蒼炎”を開放します。』


 『称号【雷を纏う者】を習得しました。』


 『強制クエスト【神々への道】が発生しました。』


感想も待ってますよ^^

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