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吸血鬼・・・マジチート

 天を貫き、雲さえ突き抜けた塔の天辺に、私達と巨大なボスが対峙している。遮る物が何もない見渡す限りの夜空。優しく輝く月の光は、私の勝利を祝福しているかのようです。


「さあ、行きなさい。」


 私が命令すると、10人以上の人間が北の塔のボス、<<ヘカトンケイル>>に向かっていく。10メートル程の一つ目の巨人に向かって、誰一人恐ることなく突進する。そう、私を守る為だけに、彼らは自らの命を燃やしていく。


「・・・愚かな。我との力の差も分からんか。」


 <<ヘカトンケイル>>がそう呟くと、突如地面から大量の腕が出現した。一本一本が丸太のような太さを誇るその腕は、私の奴隷達を紙屑のように吹き飛ばしていく。その腕にはそれぞれ体力ゲージが表示されていて、一種のモンスターみたい。


「成程・・・。百本腕の巨人ヘカトンケイルの名前は伊達じゃないのね。・・・でもね貴方、あまり私の奴隷たちを舐めないほうが身のためよ?」


「ぬ・・・?」


 敵が周りを見回すと、先程吹き飛ばされた筈の人間が全員起き上がっていた。


「馬鹿な・・・。貴様らのレベルで、あの攻撃を喰らって生きていられる訳があるまい。特殊な技の使用は感知出来なかったが・・・。お主ら、何者だ?」


 その時、初めて敵が私達の事を意識した。今までは唯の雑魚としか見ていなかったその瞳が、私たちを対等の敵として見ていることを自覚する。だから、私も答えるの。


 私は封印を解除して、本来の力を開放する。私の体が月明かりを浴びて銀色に輝き、どんどんその力を増していく。


『レアスキル【月の女神に魅入られし者】を発動しました。』


『レアスキル【真・吸血鬼ヴァーミリオン】を発動しました。』


『レアスキル【眷属完全支配】を発動しました。』


「暗黒と混沌の支配者・・・『吸血鬼ヴァンパイア』よ。これから貴方が死ぬまでの短い間、楽しく踊りましょう?」


 今私が着ているのは、黒と白を基本とした豪華なドレスで、自分では中々似合ってると思う。私は、そのドレスの裾を掴み、優雅に一礼した。


「吸血鬼・・・だと・・・?まさか、発現するものがいるとは・・・。すると、この人間達は、傀儡なのか?」


「ええそうよ。皆私の可愛い眷属。さて、この素敵な夜をお喋りで潰すのは勿体ないわ。・・・踊りましょう?」


 私たちと<<ヘカトンケイル>>との、命を掛けたダンスパーティーが始まった。




 私は、地面から現れた腕をスキル”影踏み”で動かなくする。”影踏み”は、対象の影を踏んでいる間、踏まれている相手は指の一本も動かせなくなるスキルで、私が最も使用しているスキル。だって、これを使えば楽に血を吸えるんだもん。


「それじゃあ、いただきます♪」


 私は、動かなくなった腕に噛み付き、スキル”吸血”を発動する。敵の体力がガクっと減ると同時に、3割程減っていた私の体力が全回復した。


「それと、私の物になってください。」


 それだけで自由にしてあげる訳がない。私は、腕に噛み付いたままスキル”眷属化”を発動した。私が噛み付いている腕が一瞬ピクっと動いたかと思うと、表示されていた体力ゲージが消え、色が黒くなった。


 ”眷属化”は、文字通り私の眷属にするスキル。本来なら、少しステータスが上昇して体力ゲージが一定時間消滅するだけ(つまり、ステータスアップ+一定時間無敵のチートスキル)のスキルなんだけど、レアスキル【眷属完全支配】によって、私の眷属になった人は一生私の奴隷にすることが出来るの。体力ゲージも消えたままだから、体をバラバラにしないと倒せない、不死身の軍隊の出来上がりってわけ。


 今の私には15人の奴隷が精一杯だけど、レベルが上がれば上がるほど奴隷に出来る数は増えていく。更に、眷属って召喚獣みたいな立場だから、PTメンバーにも含まれないし、経験値もアイテムも全部私の物なんだよね。


「頑張ってねー!」


 奴隷が再起不能になるたびに、地面に生えている腕のモンズターを奴隷化していく。私は後ろで見ているだけ。偶に攻撃が当たっても、レアスキル【月の女神に魅入られし者】によって全てのステータスが上昇している私にはあまりダメージが入らない。更に、近くの腕に”吸血”して体力を回復する。


 ・・・正直、どんなに頑張っても無駄なんだよ、<<ヘカトンケイル>>君。


「く・・・ひ、卑怯者め・・・・・・。」


「貴方だって、いっぱい腕を召喚してたじゃない。お互い様よ。」


 そして、とうとう敵の体力がゼロになって、消滅していく。空は白みかかっていて、もう直ぐ朝がやってきてしまう。


「危ない危ない。朝日が昇ってきたら私の負けだったね。」


 私は、アイテムボックスの中から大型テントを取り出して設置する。そして更に棺桶も取り出して中に置いた。棺桶の中に入り、蓋を閉めて・・・


「お休みなさい。」


 私は、深い眠りにつくのでした・・・。


『ヴァアアアアァアア・・・・・・』


 外では、私の眷属になったプレイヤーが日光に焼かれ、煙になっているのをすっかり忘れて・・・。しまった・・・また新しい奴隷を探さなくちゃ。




 ポーン♪


『ソロプレイヤー天津京香さんが、北の塔のクエストを完了しました。これより、北の塔は彼女の所有物になります。通行料は1000000Gに設定されました。』


『天津京香さんは称号、【到達者】【時空開放者】【塔の所有者】を得ました。これにより、彼女にPKを仕掛けることは不可能になります。』


『グランドクエストアイテム【百本腕の巨人の魂★10】を入手しました。』


『以降、この塔の時空間ゲートを通過することで、中世へと行くことが可能になりました。』


主人公を遥かに凌ぐチートキャラの登場です。一度噛み付かれたら眷属にされてアウト。ダメージを与えても回復され、今回のボスでさえ手も足も出ませんでした。どんだけ強いんだ・・・。


とりあえず、この小説は全員一人称視点で進むことにしました。今から変えても、みなさんを混乱させるだけの気がしますし。



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