塔攻略者現る
「よかった・・・。貴方が無事で本当によかった・・・。」
レオンが結衣に縋り付いて泣いている。本当は俺たちも結衣の無事を祝ってやりたいところだったんだが、空気を読んで二人きりにしてあげた。
「すいません。心配かけました・・・。」
結衣も、そんなレオンを抱きしめて、大人が子供にするようにあやしている。
「よかったね、銀狐・・・。結衣さん無事で。」
「ああ・・・。」
<<アマリリス>>は本当に強敵だった。<<フレアスケルトン>>に匹敵する攻撃力に、圧倒的な防御力。そして、事前に教えて貰っていない攻撃。これが、単に結衣やレオンが知らない攻撃だっていうのなら問題はない。だが、本当にそれだけだろうか?違和感だけが残る。
「皆さん、私たちは先に帰っていますね。」
ようやく泣き止んだレオンと手をつなぎながら、少し恥ずかしそうに結衣が言った。PT限界時間が過ぎたのだ。
「わかった。・・・ところで、俺たちもレオンの屋敷に戻っていいのか?お邪魔なら今日は宿を取るぞ?」
「か、からかわないで下さいよ!」
こちらは善意で言ったんだが、レオンが顔を真っ赤にして怒ってきた。・・・これは、本当に今日は宿を取って彼らを二人きりにしてやるか。
「ふふ・・・。じゃあ、また後でね。」
麗奈が手を振ると、結衣とレオンの足元に転送魔方陣が現れ、二人を転送していった。
「・・・・・・。」
残ったのは俺たち2人。
「ねえ。」
「何だ?」
「私たちも、先輩達によくからかわれたよね・・・。」
「そうだな・・・。」
もう取り戻すことの出来ない過去。恥ずかしかったけど、心地よかったあの日々には、もう永遠に帰れないんだ。・・・皆、いい人ばかりだったのにな・・・。
俺たちは、少しの間手をつないで空を見上げていた。
ポーンという音と共に、俺たち二人のウインドウが表示されたのは、それから何分かたった後だった。
「な、何だ?」
「何だろ?」
そして、そこに書いてあった文字列に、驚きを隠せず二人して目を見開いていた。
『ソロプレイヤー天津京香さんが、北の塔のクエストを完了しました。これより、北の塔は彼女の所有物になります。通行料は1000000Gに設定されました。』
『天津京香さんは称号、【到達者】【時空開放者】【塔の所有者】を得ました。これにより、彼女にPKを仕掛けることは不可能になります。』
『以降、この塔の時空間ゲートを通過することで、中世へと行くことが可能になりました。』
そこには、俺の知る限り日本最悪のサイコ犯罪者の名前と、塔の一つが単独でクリアされたという情報が載っていたのだった。
とうとう最初の塔がクリアされました。そして、彼女はライバル役になる予定。次回は、彼女の視点でお送りします。
ところで、主人公以外の人間の描写は三人称視点のほうがいいんじゃない?という意見をもらったんですが、他の読者の皆さんはどうでしょう?
もし、主人公だけ一人称、他の人間は三人称のほうがいいと言う場合は、今まで書いたものを書き直さなくてはいけないので、読者の皆さんの意見を聞いてからじゃないと出来ません。
今までと同じでいいか、書き直したほうがいいか、意見があればコメントお願いします。