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決意

 あの後、俺は初心者フィールド【南の平原】の雑魚を倒しながら、その先の【南の森】へと一直線にやってきた。ここのモンスターは今のレベルではかなりきついレベル10~18のモンスターなのだが、初心者ヘルプによると、その殆どが非好戦的(ノンアクティブ)モンスターだからだ。


 だが、元々ゲーマーでVRにも慣れている俺とは違って、他の人間には好戦的(アクティブ)モンスターと非好戦的(ノンアクティブ)モンスターの違いなんて分からないだろう。恐らく、モンスターを見るたびに攻撃をして、かなりの数が死亡すると思われる。モンスターの行動パターンを覚えるとか、自分と相手のレベル差を考えて逃げるとか、そういう考えが浮かぶ人間があの中にどれだけいるだろうか?


 ま、これは希望的観測だが。犯罪者であるからこそ、生き残ることに長けているかもしれない。兎に角、俺はしばらくこの【南の森】に拠点を作ることにした。【シュバルツ】には東西南北にゲートがあるし、南へ来る人数はかなり少ないはず。安全フィールドの位置は各フィールドによって違うし、ここのは見つけにくい洞窟だ。後は入口を草や木で隠してしまえば、発見される可能性はへるだろう。


「ふぅ・・・。」


 ようやく一段落ついたな。


「俺、本当に人を殺したんだな・・・・・・。」


 自分の両手を見ながら呟く。あの時は血で真っ赤に染まっていた両手は、何事も無かったかのように元に戻っている。これは、VR特有の自浄効果だろう。この世界では、防具や武器、果ては身体に付いた汚れや傷、臭いまで綺麗になるのだ。まあ、あまりに酷いものはどうしようもないが。


 俺は、本物の人殺しになってしまった。でも、そのことに対する忌避感や嫌悪感があまり無い。相手が殺そうとしてきたからだろうか?相手が極悪な犯罪者だったからだろうか?・・・自分が何も感じないということに、寒気を感じるだけだ。


「くそ・・・・・・。」


 俺は、座りながら洞窟の壁にもたれ掛かり、天井を見上げた。ゴツゴツとした黒い石ばかりが見える。


 ・・・どれくらいそうしていただろうか?腹がなった。


 この世界でも腹は減る。満腹度が設定されていて、それが減ると各種ステータスが下がったり、状態異常になったりと様々な悪影響を受ける。だから、出来るだけ空腹にはならないほうがいい。ってか、腹が減ると感覚的にも辛くなるしな。


 俺は、アイテムボックスから先程【南の平原】で狩った【バッドアップル】を取り出した。この敵は1m程の巨大な林檎に、牙がビッシリ生えた口があるモンスターで、突進、噛み付き、酸攻撃をしてくるモンスターだった。厄介なのが酸攻撃で、体に当たると酸による継続ダメージ、装備品に当たると、耐久度を減らしてしまう。だが、初期装備は【破壊不可能】アイテムなので、安心して防具でガード出来たが。


「デカイな・・・・・・。」


 アイテムボックスから出てきた林檎の巨大さに、俺は唖然としてしまった。1メートルの林檎。つまり、[バッドアップル]がそのまま出てきたのだ。普通、モンスターから出た素材や食材は小さくなってアイテム化されるものだろう。少なくとも、今までやっていたVRゲームではそうだった。


「・・・取り敢えず、食べるか。」


 【鉄の短刀】を取り出して、林檎を切っていく。以外にも、すんなりと真っ二つに出来た。


「どうやったんだよ・・・。」


 刃渡り10cmにも満たない短刀で、どうやって真っ二つにしたのかは謎だ・・・。俺には分からん。


 取り敢えずその考えは置いておく。ゲームなんだから、そのくらい出来るだろう。そこから更に切っていき、一口で食べられるようにした。


「いただきます。」


 シャリっと音がする。これは・・・結構いけるな。甘酸っぱくて、硬さも丁度いい。俺は、黙々と全体の3分の1程を食べ終えた。


「ご馳走様でした。」


 残りはアイテムボックスの中に入れておく。このアイテムボックスは重量制限や個数制限が無く、食材なども鮮度そのままで腐らないという優れものだ。ゲームで、制限に引っかかってアイテムが拾えなくなったりするのは、とっても腹立つからな。これは良い(・∀・)


「さてっと・・・。もう一度、ヘルプを見てみるか・・・。」


 俺は、もう一度初心者ヘルプを見てみることにした。メニューアイコンから、ヘルプを呼び出す。


 既に見てはいるが、見逃しや気づいていないことがあったりしたら困るからだ。それが原因で命の危機に陥るかもしれない。


 先ず、このゲームの概要、目的を見てみた。簡単に説明するとこんな感じ。


・このゲームは古代、中世、現代、未来で構成されている。ただし、始まりの街【シュバルツ】だけは、どの時代にも属さない。--確かに、【シュバルツ】広場は中世の街だったけど、北区や西区では他の街並みが広がっていた--。


・各世界には、世界を支える塔が4つずつ建っている。それらの塔の頂上には、ボスが存在し、ボスを倒すと、時空間ゲートがそこに開く。時空間ゲートは、その塔を攻略した人間の所有物になり、通行料を設定することが出来る。


・どのボスを倒せばどの時代に行く時空間ゲートが出来るかは不明。


・全ての時代の全ての時空間ゲートを開放することで、ゲームクリアとなる。


 と書いていた。


「やっぱり、3番目の項目がやっかいだな・・・。」


 通行料の設定だ。払えないような高額に設定されてしまうと、その世界に行くのは難しくなる。


 つまり、各時代に行くためのゲートは、各時代に一つずつしか無いんだから。


 例えば、古代にいて、他の時代に行きたいのに、他の全ての塔に莫大な通行料が掛かっていたらどうする?そいつは、そこで資金を貯めるしか他の時代に行くことは出来なくなる。


 時代によって販売している物や受けれるクエストも違うだろうし、やはり、他の連中に攻略される前に、自分で攻略するのが一番安全そうだ。


 俺には、安全な場所で引き篭って誰かがクリアするのを待つという選択肢は無い。だって、時間制限があるんだから。生命維持装置が壊れる前に、クリアしなければならない。それに、この世界では戦闘力を持っていたほうが安全だ。周りはいつPKしにくるか分からない危険人物ばかり。幸い、この世界ではステータスが力だ。戦闘技能で劣っていても、ステータスが圧倒的に離れていれば逃げるくらいは出来る。


 だから、俺は、自分で攻略する。この世界を。出来るだけ早く攻略するから、生きて帰るから、だから、待っててくれ。麗奈。

という訳で、銀狐は自分でクリアする道を選びました。このゲームにおいては、街でさえ安全地帯ではないのです。モンスターやトラップよりも、周りの人間のほうが恐ろしい世界。せめて、自分の身を守り抜く力を手に入れなければ始まりません。それに、銀狐は元々ゲーマーなので、ゲームの中でジッとしているのは辛いという思いもありました。


感想とか待ってますよ(´∀`*)

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