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【ウェポンマスター】の実力

「僕と模擬戦をしましょう。」


 結衣に紹介されてやってきた西区の屋敷には、15、6歳程の少年が住んでいた。


 彼の名前は<<レオン・ホープ>>。その金髪は月の光に照らされてキラキラと輝き、その整った容姿を更に美しく見せていた。背はあまり高くは無いが、その体は程よく筋肉が付いていて、NPCじゃなければ嫉妬の炎で焼き殺していたかもしれん。イケメン爆発しろ。


 最初は俺たちの事を少し怖がっていたようだが、結衣からの紹介だということを伝えると(結衣は道場に残っている)、途端に警戒心が解けた。少しの間他愛もない話で盛り上がった後、本題の、俺たちのPTに入ってくれないかと頼むと、先程の言葉が返ってきたのだった。


「結衣さんの紹介ですし、出来る限りご期待には答えたいのですが、その前に、貴方たち二人の実力を見せてもらいたいんです。なので、模擬戦をしましょう。」


 確かに、実力も定かではない相手と一緒に戦うのは嫌だろう。彼らNPCも、一度死んだら復活出来ないんだから慎重になるのも当然だ。だが・・・


「模擬戦で体力が零になった場合はどうなる?」


 模擬戦で死ぬなんてそんな馬鹿な事はしたくない。慎重にいかないと。


「大丈夫ですよ。街中での戦闘では、体力がなくなっても死にませんから。」


「それなら安心だ。」


 ということで、レオンと模擬戦を行うことになった。





「それじゃあ、始めますよ。」


 俺たちは2人で、レオンは一人。一見相手のほうが不利に見えるが、そこまで腕に自信があるということか。


 ここはレオンの屋敷の庭。外はすっかり暗くなって、月が空高く浮かんでいる。つまり、俺は【月夜の支配者】によってステータスが大幅にアップしている状態だ。俺の体からは黄金に輝く光が吹き出しており、全身に力が漲るのを感じる。


「麗奈、いくぞ!」


「うん!」


 先ず俺が突っ込む。ステータスが上昇している俺は、元々の高ステータスと合わさって、凄まじい速度でレオンに肉薄した。


「はああ!」


 俺の全力の攻撃を、手にしたロングソードで難なく防ぐレオン。


「ほお・・・凄い威力ですね。敏捷と筋力を重点的に上げたステータスですか。更に【月夜の支配者】も持っているとは。流石、結衣さんに認められた御方です。」


「くそ・・・こんなに簡単に受け止めた奴に褒められても嬉しくないぞ。」


 俺は地面が陥没するほどに力を込めているのに、レオンは涼しい顔をしている。


「銀狐!」


 麗奈の声が聞こえた瞬間、俺はバックステップを発動。更にそこからサイドステップを連続発動し、左に大きく移動した。


「?」


 俺が突然離れた事に首を傾げたレオンだが、麗奈が持っている物を見た瞬間顔色が変わった。


「吹き飛べー!」


 その直後、麗奈のビームマシンガン【蒼龍】が火を吹いた。ドガガガガガガという激しい音と共に、大量のビームがレオンに注がれる。


 俺が最初に突撃したのは、麗奈の攻撃を悟らせないためだった。ビームマシンガンの攻撃は溜めに時間が掛かるので、その時間を稼ぐためでもあったわけだ。


「すげー威力だな・・・レオン生きてるのか・・・・・・?」


 体力が無くなっても死なないというのは聞かされているが、あの光景を見ると不安になってしまう。美しかった庭は、斉射が始まってから数秒で見るも無残な荒地へと姿を変えてしまった。やっておいてなんだが、レオン本当に大丈夫なんだろうか・・・?


 そして・・・煙が風によって吹き飛ばされたとき、そこには巨大な盾が存在した。


「な、何だ・・・?」


 青と赤で十字の紋章が描かれた長方形の大盾だった。その影から、無傷のレオンが姿を表す。


「・・・ビックリしましたよ。まさかビームマシンガンとは。気づくのがあと一秒遅ければ、あれで負けていたでしょうね。」


 苦笑しながらも余裕のある態度に、麗奈がムッとした顔をしている。


「コレが効かないなら、速度重視でいくしかないかな・・・。」


「そうだな。俺が先行するから、お前は援護しつつ近づいてくれ。」


 麗奈の銃の攻撃は、確かに早いのだが、遠距離からの射撃はそれなりに経験を積んだ人間なら避けられる。それでも牽制にはなるんだが、今回は多少危険でも、俺と一緒に近接で攻撃を仕掛けて貰おう。


「じゃあ、行くぞ!」


 そう言って、俺は先ほどと同じように一直線に突撃した。


「甘いですよ!」


 レオンの大盾が音も無く消え失せて、その代わりにレイピアが二本、彼の手に収まった。


「”フェアリー・スタブ”!」


 彼のレイピアが、俺の心臓目掛けて伸びてきた・・・・・。俺はサイドステップを発動し、寸前で避ける。


「当たるかよ!」


 そして、無防備なレオンに”神風”を発動しようとした瞬間、強烈な悪寒が背筋を走った。その感覚に逆らわず、”霞楼”を発動する。


「グアァ!」


 俺の肩を、背後からレイピアが差し貫いていた。


「銀狐!」


 麗奈が走りながらレオンに威嚇射撃。俺に刺さっていたレイピアは、主人の元へ戻っていった。


「・・・避けたと思ったんだけどな。」


 レイピアは確かに避けた筈だった。だが、そのレイピアが俺を追尾してくるとは予想していなかった。”霞楼”も、一本の攻撃は無効化したが、二本目の攻撃を喰らってしまった。


「”フェアリー・スタブ”は、刺突系武器にのみ使用出来るスキルです。初めに刀身が伸びて攻撃します。もしそれを避けられても、一度だけ追尾して攻撃するんですよ。」


「へえ、随分アッサリ教えてくれるんだな。」


 スキルの情報は、戦闘において重要だ。そのスキルの弱点が分かっていれば、対処するのは容易い。


「ええ。だって、一つスキルを教えたくらいでは僕は倒せないですから。」


 そう言いながら、今度はレイピアを消し、死神が持つような巨大な鎌を手にするレオン。


「成程・・・・・・。つまり、それが【ウェポンマスター】の能力・・・。」


 漸く理解した。


「【ウェポンマスター】とは、全ての武器とスキルを使いこなす、万能の職業の事です。貴方達の目の前にいるのは、この世界の全ての職業だと思って下さい。」


 俺たちは、予想以上の化け物と戦っていたのだと云うことを・・・・・・。

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