極端な性能のスキルばかり
「よし、着いたぞ。此処が結衣の家だ。」
あの後無事に【アルカイドの館】を脱出した俺たちは、結衣が待つ道場へとやってきた。のだが・・・
「ん?どうした麗奈?」
後ろで麗奈がワナワナと震えている。何か気に入らないことでもあったんだろうか?
「こ、この短時間で既に本拠地持ち!?しかもこんなに大きな道場を!?どんな稼ぎ方したらこんなこと出来るのよ!?」
(成程、そういうことか)
因みに、本拠地とは、その名の通りプレイヤーが買うことが出来る家等のことだ。個人単位の家もあれば、PT単位、ギルド単位の物もあり、当然、大きくなればなるほどに価格は上昇する。このゲームでもそれは例外では無く高い。それはもう高い。だから、麗奈は結衣が既に本拠地を持っていると思って驚いているんだろう。でも、それは間違いだったりする。
「麗奈、結衣はNPCだ。」
「え?」
(やっぱり分かっていなかったか・・・)
「嘘、NPCなの!?あんな感情豊かなNPCなんて聞いたことないよ!?」
まあ、そりゃそうだろうな。俺も、NPCに腹を踏まれて説教されるとか、初めての経験だったし。
「あ、でもこのゲームのNPCって、妙に人間っぽいよね・・・。」
「お前も気づいたか。でもな・・・ゲームが始まって直ぐの時は、もっとAI臭かったんだよ。彼女たちがこうなったのは・・・昨日から、かな・・・?」
「そうなの?」
「多分。」
確証なんてない。俺が違和感を感じたってだけだからな。
「まあ、今気にしても始まらないし、そろそろ入ろうぜ?」
そう言って俺は中に入った。
「あ、待ってよー。」
「あ、お二人とも、待っていましたよ。」
道場の裏手にあった結衣の自宅に通された俺たちは、何だか懐かしさを感じていた。
「こちらの部屋で待っていて下さいね。今お茶菓子をお出ししますから。」
結衣が居なくなって二人になった俺たちは、自分たちが居る部屋を見回す。他人の家の部屋をジロジロ見るなんてマナー違反かもしれないとは思ったが、懐かしくてどうしても止められなかった。
「・・・なあ麗奈。」
「何・・・?」
「俺、またこうして畳に座って緑茶飲めるなんて思っていなかったよ・・・。」
「・・・駄目よそんな弱気じゃ。私たちは、絶対に現実に帰るんだから。それで、二人で幸せに暮らそう?」
「・・・出来るのかな・・・・・・。」
「出来るわよ。その為に私は来たんだから。」
(駄目だな俺は。麗奈がいると甘えてしまう。・・・そうだ、何がなんでも現実に帰るって決めたろうが。俺が弱音を吐いてどうする)
「いいのよ弱音を言っても。辛かったら泣いてもいいの。どんなに辛くても貴方は立ち上がって前に進むと信じてるから。」
「麗奈・・・。」
「私が支えてあげる。私は何時でも隣にいる。例え全世界が貴方の敵になったとしても、私だけは貴方を裏切らない。だから・・・一緒に帰ろうね?」
そう言って薄く微笑んだ麗奈は、本当に綺麗だった。
(全く・・・最高の相棒だよお前は・・・)
俺の中で麗奈がどれ程大切か、思い知らされた。
「それでは、現状の報告から。先ずは麗奈さんどうぞ。」
その後、煎餅を持ってきた結衣を交えて報告会をすることになった。
「私はさっきも言った通り、【ブライト・アームズ】の社長に、このゲームに入れて貰ったの。ただ、命の心配は無いわ。」
「どういうことだ?」
「いくら天下の【ブライト・アームズ】でも、犯罪者では無い私を実験の結果殺してしまうと大変な事になるんだって。だから、私はゲームオーバーになっても、死ぬ事はないの。唯、もうこのゲームの中には入れてくれないらしいけど・・・。」
「そ、そうなのか・・・。よかった。」
「だから、もし銀狐が危ないと思ったら私が助ける。」
「え・・・それは駄目だ!」
「これは譲れない。私はゲームオーバーになっても死なないんだから。・・・もし、銀狐が死んだら、私も死ぬから。現実で。」
「う・・・!」
「うわ、これは酷い脅しですね・・・。」
「分かった?私は本気だよ。」
「わ、分かった・・・。」
悔しいが、麗奈の目はマジだ。もし俺が死んだら、彼女はその時点で自殺するだろう。それがわかったから、頷くしか出来なかった。
「じゃ、じゃあ今度は私の番ですね!」
この空気を何とか変えようと思ったのだろう。結衣が声を張り上げた。
「先ず、はい銀狐さん。」
そう言って彼女がアイテムボックスから取り出したのは、【神衣の水干】と【神衣の緋袴】 だった。
「・・・凄い。」
麗奈がそれを見て目を丸くしている。
(そりゃそうだろうな。俺も麗奈もいろんなゲームをやってきたが、ここまでのは見たことが無いし)
既に一度見ている俺でさえも、その圧倒的な存在感を感じているんだから。
「・・・あれ?何だか前に見たのと若干違うような・・・?」
「あ、気がつきましたか?・・・ほら、ここの模様を見てください。」
そう言って、彼女は二つの装備を光に透かした。すると、その二つに模様が浮かび上がった。
「何だこの模様・・・?」
【神衣の水干】には燃え盛るような炎が。
【神衣の緋袴】には吹き荒ぶ嵐が、そして、それら二つを繋ぐかのように荒れ狂う雷が、それぞれ描かれていた。
「・・・綺麗。」
「これは一体?」
結衣に問いかける。
「これが、貴方が認められた証。貴方にしか使えない【神衣】スキルです。」
「【神衣】スキル・・・。」
「【神衣剣士】とは、その名の通り、『神の力を衣として纏い戦う者』の事です。そして、その神を纏うスキルがこれらです。」
「神を纏う・・・?」
「スキル説明を見て下さい。」
「分かった・・・。」
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・”神衣:赤神威”
・効果:一分間筋力2倍。自動反撃。味方の体力全回復。味方の攻撃に豪炎属性追加。スキル終了後、使用者の体力と霊力ゲージが1割へ減少する。
・その金色の炎は、味方を癒し敵を滅する。燃え盛る炎神の衣を纏いて、戦場を蹂躙せよ
・”神衣:緑神威”
・効果:一分間敏捷2倍。自動回避。範囲内の全ての敵への嵐属性継続ダメージ。味方の攻撃に嵐属性追加。スキル終了後、使用者の体力と霊力ゲージが1割へ減少する。
・その無慈悲な嵐は、全ての命を刈り取る。吹き荒ぶ風神の衣を纏いて、戦場を駆け巡れ。
・”神衣:黄神威”
・効果:10秒間全能力値2倍。攻撃無効。範囲内全ての敵への即死効果攻撃。味方の攻撃に雷属性追加。スキル終了後、使用者の体力と霊力ゲージが1割へ減少する。10秒間行動不可。24時間全能力値半減。
・その雷は全てを薙ぎ払う。荒れ狂う雷神の衣を纏いて、戦場を破壊しつくせ。
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「・・・・・・・・・随分と使いづらいスキルだな・・・。」
「うわぁ・・・。普通はこんなに攻撃に偏ったスキルは出ないんですけどね。まあ、極振りの弊害ですかね。」
「え?」
「これ、皆同じスキルが出るわけじゃないんですよ。ステータスをどのように振っているかによって、出るスキルが変わるんです。例えば、防御全振りだったら防御系スキルしか出ませんよ。」
「・・・成程。」
「まあ、スキルレベルが上がれば、どんどん使いやすくなる筈です。頑張って下さいね!」
・・・・・・何とも使いづらいスキルばかりになったものだと、俺はこのとき思っていたのだった。
スキルの部分、もうちょっと格好よく書きたいな・・・。どういう風に書いたらいいんだろう?
感想待ってますよー^^