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再会

 銀狐さんは麗奈さんの膝枕で寝ています。先程、麗奈さんに助けられた銀狐さんは、そのまま気絶してしまいました。体力ゲージは赤、炎症の状態異常も付いていてとても危険な状態でしたが、何とか治療が間に合って、私も麗奈さんもホッと息を付いているところです。


 銀狐さんは今、とてもうなされています。凄い汗・・・余程悪い夢を見ているのでしょうか。今、麗奈さんが起こそうとしていますが中々起きてくれません。


「・・・せん、ぱい・・・皆・・・・・・。何で・・・?」


 銀狐さんの閉じた瞳から涙が一筋溢れ出てきて、それをとても優しく拭う麗奈さん。


(ああ、この二人は、お互い心から愛し合っているんだな・・・)


 その時私はそれを確信しました。そして、私が入り込む隙間なんて微塵もないことも。


(でも・・・この二人は脆い)


 同時に、それも確信しました。この二人は、お互いがいることで自分を保ってる。どちらかが居なくなった瞬間、もう一人も人間として終わってしまうだろう、と・・・。


(だったら、私が守らなきゃ・・・)


 彼らを守っていこう。既に二人は、私の大事な友人だから・・・。私は、そう決意したのでした。







「銀狐・・・どうして起きないの・・・・・・?」


 いくら起こそうとしても起きない彼に、私は不安を抱いていた。


「もういいの。あれは、もう終わったことなんだよ・・・?銀狐が罪悪感を感じる必要なんてないの!」


 あの事件の時の夢を見ていることは把握してる。時々、「先輩」とか、「ごめん」とか呟いているから。


「でも、アレは私達にはどうしようも無かった・・・!私達には止められなかった!」


 私達が事務所に到着した時には、既に終わっていた。なのに、彼は全て自分の責任だと感じてしまう。もし仮に私達がもっと早くに到着していたとしても、結果は変わらなかった。その場合は、私たちの死体が新たに追加されていた筈だ。


「お願いだから・・・ねえ、お願いだから自分を責めないで!」


 私は膝に乗っている彼の頭を、気持ちを込めて抱きしめた。苦しくないように、でも、私の想いが伝わるように。


「銀狐は私を助けてくれたよ・・・?貴方は自分の命も助けたよ・・・?貴方は、皆の為に、出来るだけの事をしたんだよ・・・・・・?」





 あの時、銀狐が放った傘の一撃は、ローブを着た、男か女かも分からない『アレ』の腹部を貫いた。普通は傘でそんなこと出来るはずは無かったけど、あの傘の石突が尖った鉄製だったのと、彼がベテランのVRMMO経験者だったことが幸いした。


 でも、『アレ』は、腹部に傘が刺さっているにも関わらず、痛がる素振りも見せないで彼を殴った。彼は凄い速度で飛んで行って、事務所の壁に激突。壁は、軽く陥没した。


 人間技とは思えなかった。私は恐怖に震えて床に座っているだけで、彼を助けることすら出来なかった。このままじゃ彼も私も殺される・・・そう思ったけど・・・何故か『アレ』は私に一瞥をくれると、傘が刺さったまま事務所を出ていった・・・。


 彼は、その後やってきた警察に何故か現行犯逮捕された。私は必死に抵抗したけど、彼を連れ去る警察を止めることが出来なかった。全身、無事な場所を探すのが難しい程の怪我を負っていた彼を、警察は乱暴に連れていった・・・。





「謝るのは私だよ・・・。銀狐を助けることが出来なかった・・・。だから私、ここに来んだよ・・・?ねえ、銀狐。今度は絶対に助けるから・・・。ねえ、銀狐。目を覚ましてよぅ・・・声、聞きたいよ・・・寂しかったの・・・・・・。目を開けてくれたら、何時もの私に、戻れるから・・・・・・、だからお願い・・・。」


 どんなにお願いしても、彼は夢から覚める様子を見せない・・・。


「銀狐・・・銀狐・・・・・・銀狐ぉ・・・。」


 駄目だ、泣いちゃ駄目・・・。


「ふえぇ・・・。」


「さっさと起きなさい!」


「ガフ・・・!」


 今にも泣きそうなその時、結衣さんが銀狐のお腹を踏んづけた!


「え、え・・・?」


「ガ、げ、げふ・・・。・・・な、何・・・だ・・・?」


「あのですね、愛しい彼女が泣いてるのに、ずっと寝てるってどうなんですか!?惚れた彼女を泣かせる男なんて最低です!」


「い、いいの結衣さん!私が勝手に・・・。」


「よくありません!男なら、彼女が近くで泣いていたら、例え寝ていても飛び起きて慰めるべきです!」


「は、はい!」


 その勢いに押されて、つい返事をしてしまった・・・。結衣さん、恐るべし・・・。


「か、彼女・・・?」


 銀狐がこちらを向き、そして・・・。


「れ、麗奈・・・?」


 目を丸くして、名前を読んでくれた。


「・・・うん、久しぶり、銀狐・・・!」


「麗奈・・・!」


 彼は、私が苦しくなるほどに、思いっきり抱きしめてくれた。私も、負けないくらい強く抱きしめた。


「・・・ふふっ。銀狐さん、麗奈さんが泣いてますよ・・・?」


「え、御免、強すぎたか・・・?」


 私は、首を横に振った。


 だって・・・今流れてる涙は、嬉し涙だから・・・!

感想とか誤字脱字報告とか、待ってますよー(´∀`*)

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