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悪夢

 大事な話があるからと先輩に呼ばれた俺は、休みの日だというのに、朝早くから職場を訪れていた。昨日、先輩達と飲んでいた時に、先輩が真剣な顔になって、「明日、麗奈と一緒に会社に来て欲しい。」と言ってきたんだが、どんな要件なんだろ?


 麗奈も心当たりは無いって言うし、俺にも心当たりはない。でも、あの何時でも笑ってる先輩があれほど真剣な顔になるなんてこと滅多にないから、余程大事な話なんだろう。


「ういっす、先輩。お疲れ様、で・・・す・・・・・・?」


 事務所の扉を開けた俺が先ず感じたのは、鉄の臭い。そして、赤。


 それ程広くもない事務所に広がっていたのは、地獄だった。壁一面がペンキでも撒いたかのように意真っ赤に染まっている。


 誰かの足が転がっている。腕が、指が、顔が・・・・・・。


「な、何だ・・・何ですか・・・・・・せ、先輩・・・?先輩・・・!?」


「銀狐、どうしたの!?・・・・・・!?」


 俺の後ろにいた麗奈が、俺の動揺を見て、のぞき込んで居た。


「・・・!み、見るな!」


 咄嗟に抱き寄せ、顔を胸で覆い隠す。


「先輩!社長!美代ちゃん!・・・ど、どうしたの!?何よこれ!?」


 恐慌状態に陥っている麗奈を強く抱きしめる。


(麗奈を守らなきゃ・・・)


 その想いが、俺に幾らか冷静さを取り戻させた。


「れ、麗奈。携帯で、警察を呼ぶんだ。あと、救急車も。まだ生きている人がいるかもしれない。」


「い、生きているかもって・・・。」


 俺は、麗奈の顔を両手で抑え、俺の顔を見させる。


「いいか!コレが、先輩達の質の悪い悪戯じゃなければ、事件だ!直ぐに警察に連絡しなきゃいけないんだ!」


「・・・う、うん・・・・・・分かった・・・グス・・・。」


 多少強い言い方だったかも知れないが、俺にも余裕は無かった。人の死体なんて見るのは初めてで、ましてやそれが、親しい人間のものだなんて。


 それも、唯の死体じゃ無い。あちこちに人体のパーツが散らばっている。指だけや、足首のみ・・・、そして、俺はその中に、見つけたくなかったものを見つけてしまった。


「・・・せ、先輩・・・・・・。」


 俺が高校の時からずっと俺のことを気にかけてくれていた、美玲(みれい)先輩の顔がそこに転がっていた。口調が男っぽくて、頼れる人だった。ここに就職したのだって、彼女が誘ってくれたからだった。あんなに美人だったのに・・・そこに転がっている顔は、恐怖と怒りに満ち溢れていた。


「どう、して・・・・・・。」


 それを見た途端、俺は膝の力が抜けて立って居られなくなった。


 ビシャ!と、地面に広がる血溜まりに膝を付けてしまう。


「ぎ、銀狐!?」


 麗奈の声も、だんだん遠くなっていく。


(駄目、だ・・・。俺は、麗奈を、守らなきゃいけないのに・・・)


 俺が麗奈を守らなきゃ・・・そこまで考えた時、ゾクっと、今までの人生で感じた中でも、最大の悪寒が背筋に走った。


(誰かが・・・見てる・・・・・・?・・・そうだ、そもそも、先輩たちが殺されたのは何時いつだ?)


 地面の血は、全く乾いていない。あまりこういうのには詳しく無いが、ある程度時間が経てば、少しくらいは乾くものじゃないのか・・・?絨毯にすら、全く吸われていないぞ・・・?


(つまり・・・先輩達が殺されたのは、俺たちがここに来る、少し前の話・・・・・・!?)


 そこまで考え、あまりの恐怖に事務所を見回した俺は見た。見てしまった。事務所の中央部分の天井に・・・ヤツが張り付いているのを・・・・・・。


『ナンダ、ミツカッタカ・・・。オマエ、アンガイスルドイナ。』


 そいつの声は、凡そ人間の物とは思えない程に高く、そして、耳障りな音だった。全身真っ黒な服で覆われている。アレは、ファンタジー物のゲームなどでよく見られるローブだろうか?重力に逆らっているはずなのに、ローブはそいつに張り付いたかのようだ。


『シカシ、イタミモカンジナイウチニコロシテヤロウトオモッテイタノニ、ヨテイガクルッチャッタナ・・・。ショウガナイ、イタブッテカラコロスカ』


(は、ははは・・・どんな理屈だよ・・・)


 駄目だ、人の形をしているが、俺にはアレが同じ人間には思えない。アレは別物だ。悪魔だとか言われても、今は信じてやる。


『マズハ・・・ソコノオンナカラダナ。』


「・・・!」


 麗奈が床に座り込む。アレからの殺気に耐え切れなくなったようだ・・・。しかし・・・


「お前・・・何て言った・・・?」


『・・・ア?』


(・・・・・・俺は、麗奈を守る!)


 そう決めたら、今まで力が入らなかった全身に、力が漲ってきた。


「テメェに、これ以上何も奪わせねぇ!」


『・・・ホウ?』


 そいつは、天井から地面に降りた。俺は、デスクに立てかけてあった、先輩の傘を手に取る。その傘は、石突の部分が鉄製で、紫の蝶々が描かれた、先輩のお気に入りだった。


(先輩・・・皆。俺が・・・俺が、仇を取る!だから、力を貸してくれ!)


 俺とそいつは向き合い・・・そして・・・・・・。

残酷な描写は難しいよ・・・(´;ω;`)

あまり生々しく書くと、作者も嫌な気分になりますね・・・。

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