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結衣の暴走時、彼女に何があったのか・・・

 その時、私は既に何躰目かも分からない【マシンナー・ウルフ】を倒して、ドロップを回収しているところだった。


 ドロップは、【蒼龍(そうりゅう) <ビームマシンガン> ★6】だった。★は、レア度を指すもので、6っていうのはかなり高い数字だけど、ビームマシンガンは、腰に下げるタイプの円型の巨大なマシンガンで、重さも相当あるし、何より私の職業に合わない。売却決定かな?


「うーん、この瞬間が好きなのよね・・・。」


 自分で倒した獲物から、戦利品を貰うこの時が、一番好きだ。その次は、どんな能力値にしようか悩む時間。恋人であり、相棒でもある銀狐は、『ドロップ回収してる時間があるなら敵を倒せ!』みたいな戦闘狂(バトルジャンキー)なので、お金もドロップも自動取得にしてたけど。拾う瞬間が一番楽しいのに・・・。


 多分、今回もそうなんじゃないかな・・・と思う。それに、恐らく、命が懸かってるって事を半分以上忘れて、攻撃特化の能力構成(ビルド)にしてるんじゃないかな・・・とも思う。・・・・・・命が懸かっているんだから、もう少し慎重にして欲しいんだけど、多分無理なんだろうな・・・。


 とか言ってる私の能力構成(ビルド)も、似たようなものだけど。やっぱり、似たもの同士って事なのかな・・・///


「さて、そろそろ戻りますか・・・。」


 そう言って街の方向に目を向けた瞬間だった。


「・・・・・・は・・・?」


 多分、私の目は点になっていただろう。遥か彼方で、バシュッ!と音がして、光の柱が天に昇っていったからだ。空の青よりも尚蒼い(あお)その光は、天に昇っていったかと思うと、次の瞬間、此方に向かって倒れ込んで来た。


「え、ええええええええええええええ:(;゛゜'ω゜'):!」


 私は、本能に従って全力で右にダッシュして、その光を避けた。その光は、途中にある何もかもを切り裂いて、更に私の遥か後方まで伸びて行った。


「え、何!?何これ!?」


 私がパニックになったのをあざ笑うかのように、その光は横向きになり、私の方へ向かってきた!


(・・・!か、刀だこれ!)


 その光は、明らかに刀の形をしていた。


(兎に角、避けなきゃ!)


 私は、”ブースター”を起動し、真上に飛んだ。光は私の真下を通過して、そのまま薄れて消えていった。


 無事着地することが出来た私だけど、心臓がバクバクして、落ち着けるのに時間が懸かった。


「・・・・・・銀狐だ。」


 何故なのかは自分でも分からない。でも、あの光と銀狐は、関係があるような気がしていた。いや、確信していたと言ってもいいかもしれない。理由を聞かれても困るけど。


 例え何も関係が無くても、銀狐ならあんな派手な現象を見逃せる筈はない。多分、「カッコイイ・・・!」とか言って、どんな危険があるかも考えずに近づくと思う。まあ、そんな子供っぽい所が、可愛いところなんだけど・・・///


「あ・・・こうしちゃ居られない!」


 そうだ。あの光が銀狐に繋がる手掛かりかも知れないんだから、兎に角行ってみるべきだ。何が待ち受けて居ても関係無い。障害物は破壊するのみ!





 【シュバルツ】まで戻ってきた。街の人たちの話は、先程の光の話で持ち切りだ。


(しかし、気になるのよね・・・。このゲーム、NPCが妙に人間臭いっていうか・・・)


 普通、NPCが噂話とかするだろうか・・・。


(いや、あれが、何かのイベントっていう可能性もあるわけか・・・)


 もし何らかのイベントなら、建物も人も、傷一つ付いていないのにも説明がつく。


「本当だって!俺、あの光に当たったけど、傷一つついてないんだぜ!?」


 はい、説明乙。


 街を走りながら見知らぬNPCに心の中でお礼を言っておく。しかし、方向はこっちで合ってる筈だけど、何処から出た光なんだろう・・・?


「あの光は、【アルカイドの館】から出てたぜ!確か、あそこは【神崎神刀流】の娘の修行場だったから、あの娘の技だろう!全く、人騒がせだよな!」


 またまた説明乙!


 どうやらあの光は、【アルカイドの館】から出ていたらしい。確か、ゾンビの巣窟だっけ?場所は知ってたんだけど、ゾンビってあんまり好きじゃないから、放置してたんだよね。


 兎に角、そこに行けば、銀狐の手掛かりが見つかるかもしれない!





 【アルカイドの館】は、巨大な洋館だった。いや、城・・・?


 しかも、庭にはゾンビが大量に蠢いている。


「う・・・臭い・・・・・・。で、でも、銀狐の為なら・・・。邪魔よ、退きなさい!」


 私は、先程手に入れた【蒼龍】を装備し、中腰になって構えた。【ビームマシンガン】系統の武器は、撃つまでに若干の溜め時間が存在する。普段の戦闘中なら、それは絶対的な隙になるんだけど、動きが遅いゾンビになら余裕で撃てる!


『エネルギー充填中。発射可能時間まで、3、2、1・・・』


 キュルキュルと音を立てながら砲身が回転する。ゾンビは此方に気づいて向かってくるけど・・・。


「そんな動きじゃ無駄無駄無駄ー!」


 私は、トリガーを引いた。


 ドガガガガガガガガガガ・・・!まるで工事現場のような凄まじい音を立てながら緑色の光を次々と撃ち出す【蒼龍】。私は、ゾンビたちに向かってエネルギーが尽きるまで撃ち続けた。


 キュルキュルキュルキュル・・・・・・。


 訂正、エネルギーが尽きても、トリガーを引きっぱなしだった。土煙が晴れると、庭に立っているのは私一人だった。


「・・・ワオ。凄い威力。」


 やっぱり、売りに出すのは止めにしよう。かなり気に入った。


「ドロップは惜しいけど・・・。」


 私はドロップ自動取得にしていないので、ドロップを回収するには、一つずつ死体に触れなければいけない。でも、そんな暇はないので、今回は泣く泣く諦めることにした。


 ポーン、ポーン、ポーン、ポーン、ポーン、ポーン、ポーン・・・。


 その代わり、レベルはかなり上がったみたいだし。まあ、これも後で!


 私は、館の中に踏み込んだ。




「もう、邪魔なんだってば!」


 【初級手榴弾】のピンを外し、ゾンビの群れに投げつける。ドガ・・・!と音がして、ゾンビはバラバラになった。まだ体力が残っているのもいるみたいだけど、追いかけて来ないのならそれでいい。


 私は、行く手を阻む邪魔者だけを倒して行った。正直、この程度の敵に時間を取られている場合じゃないのだ。


「・・・嫌な予感がする。」


 先程から感じる寒気。私のこういう予感は外れた事がない。あの事件のときだって、朝から今日は良くないことが起きると確信していたのだから。結局、努力も虚しく回避は出来なかったけど・・・。


 こういう予感がするときは、大抵私か、銀狐が大変な目に合う。で、多分今回は銀狐。そんな気がする。


 兎に角、早く銀狐に会わないと!





 ・・・5分位全力疾走を続けて、ようやく人を見つけた。大きな扉の前で、祈るように手を組んでいるのは・・・女の子?


 その子は、全力疾走する私の気配を感じたのか、パッと顔を上げると、刀を構えた。


「止まってください!」


 私はその子から数m離れた位置で止まり、乱れた息を整える。


「貴方は、唯の攻略目的の人ですか?でしたら、今、ボスと戦闘している方がいるので、少々お待ちください。・・・心配しなくても、ここのボスは10分程で再出現(リポップ)しますから。」


「はあ・・・はあ・・・そ、その戦闘してる人って・・・もしかして、ぎ、銀狐・・・?」


 息も絶え絶えに質問すると、彼女は目を見開いて、戦闘体勢を解いた。


「え、銀狐さんのお知り合いですか?」


 やっぱり!やっぱり、銀狐はここにいたんだ!


 嬉しくて、涙が出そうになったけど、今はそんな場合じゃないと思い直す。


「ええ、そうよ・・・。私は桐条麗奈。銀狐の・・・恋人よ。」


 そう告げた瞬間、彼女の顔はみるみる明るくなり、


「あー!貴方が麗奈さんですか!銀狐さんからお話は伺ってます!うわ、本当に美人ですねえ!」


 なんだろう、褒められているはずなのに、嫌味に感じるのは、私の心が汚れているからなんだろうか・・・?こんな美人から美人って言われるのは、何だか敗北感があるんだけど・・・。


「・・・って、そんなこと考えてる時間は無いんだった!・・・銀狐はこの中!?」


「え、そうですけど・・・って、駄目ですよ開けちゃ!」


 彼女の静止を振り切り、大きな扉を開いた私が見たものは、必死の形相で疾走してくる銀狐と、その後ろから今にも彼を飲み込もうと迫っている豪炎だった。


(”ファスト・リロード”!【空間弾】!)


 私は、咄嗟に実弾双銃【ツイン・サーキュリー】へ、一発500Gの【空間弾】10発を装填し、碌に狙いもせずに全弾撃ち尽くした。


「銀狐ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


 【空間弾】によって形作られる透明な空間が、銀狐の体を包み込み、迫る豪炎を防ぎきった。


「・・・・・・よかった、間に合った・・・!」


 私が安心したのも束の間、銀狐は床に倒れ付したのだった。








「・・・れい、な・・・・・・。」


 少し笑って、私の名前を呟きながら・・・・・・。


「・・・全く・・・心配かけさせるんじゃないわよ・・・・・・。」


 私は、知らない間に涙を流していた・・・。

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