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第9章 譜柴巳六

惑星ダロイヤールに着陸するときには、さすがにフルカイツと別れてだった。

向こうの係員に書類を渡し、無事に入ることができたカイツ達は、ロミクとローリールだけを外に出し、船長含めて他は船の中にいることになった。


ローリールは、何が入っているかロミクには秘密にしている手提げかばんだけをもって、ロミクを知り合いの店へ案内した。

「ここだったら、きっと高値で買ってくれるよ」

ローリールが案内したところは、大通りから一筋もふた筋も離れたところにある、暗がりの店だった。

「なあ、ここ妖しくないか」

「大丈夫、昔からここにいるんだから」

何も心配することはないさと付け足して、ローリールはロミクと一緒に店の中に入った。


「らっしゃい」

どこかの特殊部隊に勤めていたと一目で分かる感じで、ロミクを睨みつけながら、入ってきた二人を出迎えた。

「すまないけど、店長の譜柴巳六(ふしばみろく)さんはいるかな」

「…あんた誰だ」

「アルコック・ローリール。大学の同期だ。きいてみたらすぐに分かると思うよ」

にらみながら、店員は電話をかけ始める。

「あ、店長ですか。アルコック・ローリールっていうやつが来てますが…へい、分かりました。では待ってます」

店員が電話を置いて、ローリールに答えた。

「店長はすぐにくる。それまで、そのあたりを物色するなよ」

「ここはお店だろ。物色せずに買い物をしろと言うのかい」

この会話すら楽しんでいる感じで、強面の店員とローリールは話していた。

ロミクはローリールにこそこそと話す。

「なあ、なんでそんなに平気なんだ」

「平気って何がさ」

「見てみろよ。俺らなんてほんの一撃で握りつぶしそうな顔してるじゃないか。なんでそんなにお気楽なんだ」

「まあ、後で分かるさ」

ローリールは、最後まで笑顔を崩さなかった。


2分ほどで、店の玄関から赤色のキャップをかぶった、上下揃いの紫色のスーツを着た人が入ってきた。

「…ローリールだな」

「久しぶりだな、巳六。元気してたか」

「お前ほどじゃない。それで、こちらの方は」

「ああ、珍しいものを仕入れてきた人だ。ロミク、紹介するよ。このあたりの裏取引全てを取り仕切っていて、周囲100光年以内のギャング、マフィア、暴力団の頂点に君臨している譜柴巳六だ」

「よ、よろしくお願いします」

ロミクが緊張しながら握手をしようと手を差し出す。

「まあ、商売となれば、何も手は出さないさ。それに、ローリールの仕入れはまず外れがないことで有名だからな」

「そりゃ嬉しいね」

再びロミクがローリールにこそこそと話す。

「なあ、さっき後で分かると言ってたのは…」

「ああ、この人のことだよ。昔からちびっていうあだ名だったが、今でも身長は変わってない。それでも、この人は1日で、数百兆の経済活動を動かし続けているんだ。このあたりで商売をするためには、この人を通さなければ成り立たないほどにな。そして、そんな人の友人である自分は、何も恐れることがないということさ。少なくともこのあたりではな」

「…雑談は済んだかな」

「ああ、それでさっそく商品を見せたいんだが」

「いいとも、サンプルをすこし持ってきたか」

「ここにある」

手提げかばんの中を見せる。

すぐにその顔は驚愕一色となる。

「こらぁすげえな。はじめて見る素材ばかりだ」

「だろ。これがまだ船には山のように積んである。自分の見立てが正しければ、数千億にはなるはずなんだがな」

「これはいったい何でできてるんだ」

「何って、超々タングステン鋼ですけど…」

「何だそれは。一体どんな素材なんだ」

そう言って、手でつかめるほどの小ささのサンプルを店員に渡して、巳六はいくつか指示をした。

「これの耐久性を確かめろ。もしかしたら金属革命が起こるかもしれん」

「分かりました」

店員は一言だけ告げると、店の奥に入った。

「結果が出るまでは、ゆっくりしておいてくれ」

「ありがとう」

椅子まで出してくれ、二人は店員が戻るまで、お茶を飲ませてもらっていた。

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