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第70章 遠くに
「政府の上に立つ存在、か」
カイツはぼそりとつぶやいた。
「どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
カイツは言いつつ、頼んでいたコーヒーを一口飲んだ。
そのとき、ヒャカリトがふと顔を上げる。
「どうかしたのか」
サバルがヒャカリトに声をかける。
「何か聞こえなかった?」
「何かってなに」
曖昧な言葉にローリールが尋ね返す。
「発砲音かな、銃声。あの音なら、単純な拳銃かな」
「さすがは軍人。いや元軍人か」
称賛するようなそぶりをしているカイツにヒャカリトが口に人差し指を立てて、静かにするように促す。