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第65章 締結
噂は噂、という受け止めであるのは双方変わりがない。
ただ、本当に噂か、と言われたら疑問が残ることだらけだ。
そもそも大総統が死後に安置されている、あれ自身が最近は誰も近づけられないようになっている。
だったら、本当は死んではいないんじゃないかという陰謀論やら都市伝説やらもあるほどだ。
「ま、それはそれとしてだ。そっちも気を付けろっていう話だな。こんなうわさに惑わされるんじゃなくて、な」
「そうだな」
船の賃貸契約がまとまったのを確認して、ローリールが譜柴に答えた。
「それで、どうだ、一杯」
社長机の下から、何か酒のような琥珀色をした液体を取り出す。
「いや、禁酒中だ」
体の良い断り文句に使っているだけで、実際は裏で結構飲んでいるのだが、そうか、とだけ言って譜柴はその液体を元の場所に戻したようだ。
それから双方に書類にサインをして、船を1か月以内に持ってくることにして、3人は別れた。