第64章 総統
「あれを公表したのは総統だっただろ」
「その総統は、大総統が任命した。ネットワーク管理局の上位者だから管理局長の指揮には従わない、だろ?」
譜柴が面白そうに笑っている。
そもそも総統なる人物が遺言状を読み上げた時点で、帝国の行く末は決まったようなものだった。
平たくいえば、銀河中をいくつかの、具体的には6~10程度という数で、それぞれに総統を置く。
そのうち首都にいる総統が大総統となり、各総統は自治権が認められるという内容だった。
となれば、分裂するのは目に見えている。
どうしてこんなふうな遺言状を作ったかは、大総統本人以外には分からないだろう。
「違うのか」
「総統がいつ任命されたか知ってるか?」
「大総統の下で働いていた内閣の首班が総統て言われていなかったか」
「法的にはな。だが、そう言われていた時期は実際にはない。あんな遺言状を公表すれば、それぞれが独立するようになるのは目に見えていただろうに。さらにいえばだ、大総統のカリスマ性があったからこその帝国だ。当然に反発する勢力はいくらでもいるのを知っていて、そんなことをいうと思うか?」
「じゃあなんだ、陰謀でもあったっていうことか」
「そのまさかさ」
確かに、帝国の組織が崩壊して久しい今、ただネットワーク管理局だけがそれを維持するためだけに帝国の公式組織として稼働しているということも不自然だ。
だが、その噂には他にも不自然なものはある。
「ネットワーク管理局は今も代を重ねているはずだろ。それにその噂だったら、その弾丸はどこから調達するんだ。まさかそれをすでに作っていたっていう話はするなよ」
「超々ジュラルミン鋼、お前がいつか持ってきていたあれだが、ネットワーク管理局はそれの作り方を知っているという話さ。なにせこの世界の全ての情報がそこに集まるっていう話だからな。知っていても不思議はないという寸法らしい」
全ては噂、とは言われても。
実際にはエル社のようにこの銀河の外から来たとしか思えないような人らと遭遇している。
この噂に信憑性を持たせているのはほかならぬフルカイツ同盟だった。
ただし、超々ジュラルミン鋼については、誰にも知られていないはずだが、考えてみるとここには秘密というほど上等なものはなかったりする。
そういうこともあり、実際のところ、事実としてネットワーク管理局が情報の全てを知っているといわれても、なかなか信頼があるというものだった。