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第61章 何事もなく
譜柴のところへは、惑星政府が貸してくれたおんぼろの船で行くことにした。
ロミクからもらった船をもっていくにしてはあまりにも大きく、目立つうえに並走もないとくれば略奪に会うのは当然だと考えたからだ。
それに、今やカイツらは不思議な金属を持っている集団ということも、できるだけ身分を隠していくことにしたいというカイツの要望があったためだ。
そのためか、どこでも怪しまれることなく、譜柴のところへとたどり着くことができた。
「らっしゃい」
前とおなじようないかつい店番が、カイツらを出迎える。
「店長はいるかな」
「用件は」
店番はカイツへと片手をみせないようにしつつ聞く。
「いい商売の話を持ってきた。アルコック・ローリールがやってきたと伝えてくれ。そうすればすぐにでも来てくれるだろうさ」
「いや、もう来てる」
後ろからの声に振り向くと、すでに譜柴が店先に姿を見せていた。
「で、良い話、というのは」
すぐに店の奥へと店長直々に案内をし、その商売の話を道中、ローリールが話した。