第6章 邂逅
エル社の船に入ると、乗組員以外誰もいなかった。
ウェーンは向こうの船長らしき人と話をしようとしたが、言葉が伝わらない。
どうにか身振り手振りで会話を進めた。
「乗客とおっしゃいましたね」
「今回は乗せてないんですよ。貨物と言っても食料品と医薬品が主で…」
「どこを目指して?」
「火星ですよ」
「火星?」
カイツは、後ろを向いて一緒に来た3人を見たが、誰も火星を知らない。
「では、あなた方は、地球という星から火星という星へ向かって、食料品や医薬品を運んでいたんですね」
「ええ、そうです」
その後、詳しく事情を聞いてみると、どうもおかしいことが多々あった。
カイツは3人と相談した。
「とりあえず、俺たちは船に戻ろう」
「どうするんだよ。こんな巨大船操れないぞ」
「防衛長から見てどう思う」
「武器の類はないし、この銀河の船じゃないでしょうね。一応星図と突き合わせてみたらいいと思うわ」
「よし、分かった。では、船に戻ろう」
カイツはエル社の船長に別れを告げて、船に戻った。
「さて、星図と突き合わせてみると、地球という星も火星という星も見つからなかった」
カイツが、会議の冒頭に言った。
「彼らが嘘をついているという可能性は」
ローリールが聞く。
「それは考えられないでしょうね。嘘をつくのだったら、本当にある星をいうことのほうが多いわ。それに、目を見ていたけど、嘘をついているような感じではなく、自分たちがどうしてここにいるのかも分かっていないようだったわ」
サバルがローリールに答える。
「いいかな」
ヒャカリトが手を挙げて、発言を求めた。
「もちろん。どうぞ」
カイツがヒャカリトに言う。
「彼らを見ていたけど、争うにしては人が少なすぎるんだ。きっと平和な地域から来たんだろうね。必要最低限の装備すら用意されていないんだから」
「なるほどね。では、意見をまとめておこう」
カイツがメモを見ながら言った。
「彼らは敵じゃないということでいいかな」
「うん、いいと思う」
ヒャカリトがカイツにうなづいた。
「他は?」
カイツが聞いたが、反対意見は出なかった。