56/90
第56章 曳航
「彼はできればかかわらせたくないんだけど、どうしようもないかなぁ」
カイツが頭をかきながら言う。
もともと彼を隠したのも、いろいろなことが起こったからだ。
彼を表舞台へと再び連れ戻したら、次こそ狙われ、そして弾の真相にたどり着けられるだろう。
そうなると、彼が大総統を殺したといわれるのは目に見えている。
「この船の正当な所有権を持っているのは、エル社上級副社長の彼だけでしょ」
カイツにヒャカリトが言うが、カイツはそれでもできるだけ彼をかかわらせたくないようだ。
「とにかく、この船を曳航しよう。ロミクさんは、まだ第45連星系にいるはずだから、そこに持っていけば世話をしてくれるんじゃないかな」
ローリールが二人に割って入って、船は動き出した。