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第4章 遭難船

どうにか体が普通に戻ると、カイツは椅子から浮き上がった。

「うっ、浮いてるぞ!」

「そりゃ宇宙だもの。体も浮きたくなるよ」

すでに慣れた様子のヒャカリトが、宇宙船の壁面につけられた取っ手を器用につかみながら、浮かんでいる体を制御しながらリビングへ向かって行った。

「さすがに軍人は慣れてるな」

横で、シートベルトを外すのに手間取っているローリールがカイツに話しかける。

「そりゃそうだ。後ろでひっくり返っている奴よりは、何倍もましだがな」

カイツが親指でローリールに教えると、座席で気絶しているサバルがいた。

「弁護士だったら、船に乗ることも多いだろうに」

「テレビ裁判とかが主流になってるから、自宅から出なくても十分だったんじゃない?」

シートベルトをようやく外せたローリールが、サバルのところへ浮かんでいく。

「起きろよー」

ローリールがサバルを揺さぶっている間に、カイツはリビングへと進んでいった。


リビングへつくと、すでにヒャカリトが荷ほどきを始めていた。

「早いな」

「当り前でしょ。軍ではいつもこんな感じだったわよ」

「軍は行ったことないから分からんな」

あっさりとカイツが言った。

「そりゃ、徴兵じゃなくて完全志願制だからね」

カバンから必要と思われる荷物を次々と出して、部屋に浮かべる。

「日用品が多いな」

「まあね。食料や水があるとすれば、残るは日用品みたいな種類しか残らないでしょ」

「あ、そうか」

その時、ようやく復活を遂げたサバルが、ふらふらとローリールに付き添われてリビングへやってきた。

「頭痛ーい」

「頭痛薬飲んどけ」

「カイツ冷たーい」

「ほっとけ」

サバルとカイツが会話している間に、ヒャカリトが棚についている薬箱から頭痛薬のカプセルをとりだして、サバルに投げ渡した。

その時、船の中に、警報音が鳴り響いた。


あわてて操縦席にヒャカリトが座ると、SOS信号を常時出し続けている船が、すぐ近くを航行していた。

「救助に行くよ。みんな、座って」

ヒャカリトは真面目な顔をして、全員を席に座らせた。

そして、シートベルトをかける時間を与えずに、一気にアクセルを踏んだ。


その船は、どこかの貨物船のようだった。

「どこの会社か分かる?」

「えっと、エル社っていう情報だね」

「エル社?」

カイツは首をひねった。

「どこの会社だ」

「さあ…」

「とにかく、助けるよ」

そう言って、ヒャカリトは、エル社の船に慎重に近付いた。

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