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第3章 宇宙船

船は、ロッジから歩いて10分ぐらいの物置の中にあった。

「定員5人。親にねだって高性能機を買ってもらったんだ」

カイツは、自慢げにかぶっていたビニールシートをはがすと、白色をした機体が現れた。

「かなりしただろう」

機体を見ながら、ローリールがつぶやいた。

「いやぁ、家一軒分ぐらいだよ」

「金持ちの考えることがよくわからん。そんなに金があるんだったら、どこぞに投資すればいいのに」

「そんなに投資してても仕方ないだろうさ。まあ、中に入ってくれよ」

ローリールがいろいろとお金について考えている時に、カイツが船を眺めていた2人をつれて、船内へ入った。


「一応5カ月無補給でも航行できるような設計になっているそうだよ。居住スペースは5人同時に寝れるぐらいの大きさ。倉庫は床下と天井裏に分散して保存できるようになっているし、トイレ、シャワールームがついているね。操縦席にも全員が座れるようにしてもらったし、もちろん種々のシステムも積んでもらった」

「自動防御システムや航行システムは?」

ヒャカリトがカイツに聞く。

「2人のAIを積んでいるよ。片方は予備だけど、攻撃時には防御と攻撃の二つに分かれるし、船の自爆時には、船長、副船長と2人のAI全員の許可が必要になったりするから、必要なんだよね」

「会計簿とか置くスペースは?」

すこし遅れて船内に来たローリールがカイツに聞く。

「ああ、一応それ用のスペースもあるっていう話だ。だけど、基本的には電子的保存をしてくれって」

「そうか、まあ仕方ないな」

そう言って、船内の隅々を見回っていた。


操縦席を見ているとき、イスルンガルドがカイツに聞いた。

「そういえば、この船の名前は?」

「名前か。AIの方は常時用がジョージで、予備の方がヨウビっていう名前だったな。ちなみに、ジョージは男で、ヨウビが女って言うことらしい」

「じゃあ、二人の名前をあわせてジョウっていう名前は?」

シャワールームから、アールハンの声が聞こえてきた。

「それじゃ言いにくいだろ」

カイツの独断で却下される。

それからというもの、全員の名前の頭文字を取るとか、適当に並べた文字を好き勝手に並べかえるとか、いろんな意見が出た。

「考えるの面倒だから、フルカイツでいいんじゃないか」

結局、船の名前をつけるという論争は、カイツの一言で終わりとなった。


1週間後、組合として国に正式に申請を届け出た。

"帝国"が崩壊した後に出来た国々は、その存在を銀河中に知らしめるために、唯一正常に残っているネットワーク管理局に組合として申請するという暗黙のルールがあった。

そうしたら、その組合が帝国から独立する意思があるとして認められるということになっていた。

必要な事項は、組合の名前、組合長、副組合長と主要組合員だけで、他には主要組合員の役職と副組長の役職も書く事が出来るようになっている。

その申請をするのは、弁護士か書士とされていた。

しかし、組合長が行うこともできるとされているため、今回は、カイツが役所に出向いて書類を渡してきた。


「おい、正式に受理されたぞ」

宇宙船のところに戻ってきたカイツが、船の中で座っていた3人に書類を見せながら話した。

「そうか、これで俺たち、"フルカイツ同盟"組合の旗揚げか」

イスルンガルドが腕を組んで、満足そうに言った。

「じゃあ、まずはこいつを空に飛ばそうか」

カイツが操縦席の後ろに座った。

操縦するのはアールハンで、助手席にはイスルンガルドが座った。

助手席のすぐ後ろの席にはローリールが座ることになった。

「安全運転で頼むよ」

「はいはい」

カイツがアールハンに伝える。

「じゃあ、行くよ」

座席のすぐ前にあるマイクを握って、どこかと交信を始めた。

それと同時に、建屋から宇宙船がゆっくりと進みだした。

「了解、発進します」

交信先と何言か言い合ったあと、すぐにアールハンが言った。

「じゃあ、シートベルトをつけといてね。つけてなかったら命の保証はしないよ」

ニヤリと笑いながらもそんなことを3人に言った。

「フルカイツ、出発します。航宙コード2.TEZ-W.S.H.A.。惑星より飛び立つ際の離陸経路は591-444とします。管制塔、どうぞ」

ちょっと間が開いて、アールハンが船を近くの滑走路のようなところへ動かす。

「じゃあ離陸するわよ。しっかりつかまっときなさいね」

耳に聞こえてその言葉を理解するよりも先に、ジェットコースターで頂上から一気に突き落とされたような感じを受け、体が座っているクッション付きの椅子に深くめり込んだ。


数分間そのような状況を体験してから、やっと体が開放されたときには、激しい耳鳴りがしていた。

目もどことなく暗く、まるで夜のような感じだ。

ゆっくりとシートベルトのところをまさぐり外すと、体が浮き上がった。

すぐ横に、アールハンが天井にあった手すりを掴んで俺を見て何か言った。

口の動きからどうにか読み取れた。

「ようこそ、宇宙へ」

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