第2章 仲良し4人組
高校の時までずっと一緒にいた4人組のことは、近隣の住民の間ではとても有名だった。
幼稚園に入るころの歳から、小中高とずっと同じメンバーで仲良しグループを作って、近くの公園やカラオケ屋で遊んでいた。
しかし、大学に上がるときに、ばらばらになり、それ以来、メールのやり取りなどしかしなかった。
ある人は軍に入り、ある人は別の惑星の大学へ進学をした。
その状況は、大総統暗殺によって一変する。
軍自体が崩壊をし、政府が事実上の消滅をした今こそ、昔の仲間で旗揚げをするべきだろうと考えた、グループのリーダーであり、サルカイック大学の大学院理学研究科修士課程修了したウェーン・カイツは、そう確信し、みんなに生まれ故郷へ帰ってくるように連絡をした。
その生まれ故郷こそ、惑星サルカイックだ。
銀河の辺境地域に位置するサルカイックだが、この周辺100光年の居住惑星を管理をしている地方行政の要でもあった。
この惑星は、緑豊かな湾岸にある首都サルカイックと、その周辺に点在している小規模の街によって構成されている。
彼らが産まれ、育ってきたサルベロスという町は、その点在している町の中でも小さいほうに分類されることが多かった。
その街からほど近いところに、木でできたロッジがあり、その中に4人掛けの机を囲むように3人が座っていた。
残り一人は、壁際にあるキッチンでお茶を入れるためにお湯を沸かしていた。
「で、全員集合って、どういうこと?」
背広を着て、サバル・イスルンガルドがカイツをじっと見ていた。
彼女は高校を卒業してから、周辺で最も名門であるといわれるスワル大学の法学部へ入学。
その後、サルカイックへ戻ってきて、サルカイック大学の法科大学院を修了した。
現職の弁護士である。
「ここに帰ってくるのも高校卒業以来だわ」
すぐ横には、ヒャカリト・アールハンが軍服を着て座っている。
彼女は軍人だった父親の影響で、小さいころから軍に興味を持っていた。
高校を卒業すると、すぐにウルタードン国立防衛学校へ進学し、首席で卒業を果たした。
すぐに士官へ任命され、今は少佐として、訓練を受けていた。
「しかし、みんなとこうして会えてよかった」
アルコック・ローリールが、2人と向かい合うように座っている。
彼は、中堅大学として、銀河中に名をはせているカラステック大学経済学部へ進学。
その後、在学中に公認会計士試験、税理士試験を受験し、それぞれ合格した。
現在は実務期間が終了し、公認会計士協会、税理士協会に対して登録の申請をしている。
「みんな知っていると思うけど、大総統が暗殺をされ、群雄割拠の戦国時代へと突入した。今こそ、フルカイツ同盟を復活させるべきじゃないかと思ってね」
ようやくわいたお湯を、茶葉を入れたティーポットにそそいだ。
「みんなお茶でいいよね」
カイツが3人に聞いた。
「いいよ」
高校の時から使っているコップに、お茶をゆっくりとそそぎいれる。
「それで、復活って…」
まったりとした空気をかき乱すように、サバルがカイツに聞いた。
「ああ、みんな高校を卒業してからというもの、会おう会おうといってもなかなか会えなかっただろ。それで、フルカイツ同盟は事実上凍結されていたわけだ」
「何となくわかった。この時期に乗じて、銀河系の統一をしたいんでしょ。私たちの手で」
「さすがサバル。その直感はなまってないようだね」
「それで、どうするんだよ。銀河系を一つにするなんて言う難事業だぜ。資金や仲間もいるかもしれない。そんなこまごました物はどうするんだ」
ローリールが、そのことに疑義をはさんだ。
「俺の親父が何とかしてくれることになっている。船も用意済みだ。4人でまたワイワイしながらやってくれないか」
カイツはその場にいた一人一人の顔を見ながら確かめた。
3人はそれぞれ反応が違ったが、結局のところ、また一緒に楽しみたかったようだ。
「行こうか、私たちの冒険へ」
お茶が冷めないうちに全部飲み干すと、船を見に行こうということになった。
「それで、誰がトップをする。副船長とかは?」
ヒャカリトが3人に歩きながら聞いた。
「トップは決まってるだろうに。なあカイツ」
先頭を歩いていたカイツの背中に、最後尾を歩いていたローリールが話しかける。
「俺か」
「そうさ、フルカイツ同盟も、お前がいなきゃ始まらない。だから、この同盟長はお前で決まりさ。あとは勝手に決めてくれ。みんなもそれで構わないだろ」
「まあね」
サバルが適当に答えた。
「…そっか」
カイツはそう一言だけ言うと、歩みを止めて一人一人を指さして言った。
「俺が同盟長なら、俺が船長だ。それで、サバルは副船長をしてくれ、副同盟長もな。それに、確か弁護士だったな。だから法務系統をよろしく頼む」
「わかったわ」
「ヒャカリトは、軍事関連ではこの中で一番詳しい。だから防衛関連に就いてほしい。防衛長だ。ついでに同盟長補佐と船長補佐も」
「了解」
「ローリールは、その経済の知識を生かしてもらいたいから、会計長を、この同盟の一切の会計を担当してもらいたい。船長補佐、同盟長補佐も同時に頼む」
「ああ」
みんながうなづいて、けっこう満足そうなカイツは、再び船のところに向かって歩きだした。