第12章 狙撃犯?
ローリールが船から降りると、すでにエル社のロミクが待っていた。
「これから、どうなりますか」
「フルカイツ同盟としては、巳六と協力をするということになった。君たちとは、同盟関係を継続しているから」
「なら、安心ですね」
ホッとした表情で、ロミクはローリールに言った。
「まあ、安心できないこともあるがな」
ローリールは、駐機場に全速力のバイクで駆けこんできている人を見ながら言った。
「誰でしょうか」
ロミクは、まだ誰か気付いていないようだ。
「発射準備を整えておけ。それと、食料などの持ち込み、乗組員の10分以内の全員緊急発進時の招集も」
「どういうことですか」
ローリールの言葉に、意味が分からず聞き返すロミク。
だが、その意味は、すぐに分かることとなった。
巳六がローリールの元へくると、早口で現状を告げた。
「超々ジュラルミン鋼についてが、文字通り光の速さで広がっている。それが大総統狙撃に使われた弾薬ともなれば、犯人だと疑われている。私がこれ以上君たちを守ることはできないだろう。早々に立ち去ることが好ましい」
「…やはりですか」
「つまり、ここから追われるように逃げ出さないといけないんですか」
「これからは流浪の旅の始まりさ」
ローリールがすぐに機内の人たちへ連絡を入れる。
「緊急発進手続きの申請を。周囲から武闘派集団が続々とやってきているそうだ。大総統狙撃の銃弾と同一の材質だから、ロミク達が狙われているらしい」
「分かった。すぐに発射しよう。ロミクは?」
「すぐ隣にいる」
「代わってくれ」
ローリールが使っているトランシーバーを、ロミクに貸す。
「代わりました」
「いいですか、これからのことを、よく聞いてください。あなた方の場所に、あなた方を戻すことは、今の私にはできません。ですので、それまでは、契約に基づいてしっかりと警護をします」
「ありがたいお話です」
「では、あなた方も、緊急発進をしてください」
「分かりました」
トランシーバーを丁寧に向きを変えて、ローリールへと返す。
「では、ローリール。また会う時まで」
「ああ、また会う時まで」
巳六と別れを告げると、3人は、ばらばらの方向へ駆けだした。
「ほら、空が騒がしくなってきたぞ」
ローリールが乗り込んでから、空中エリアを示す三次元レーダーを見ているヒャカリトが、全員に言った。
緊急浮上を進めている最中でも、次々と増えていっているのが分かる。
「50、60、70…1秒10以上の光が増えていっているようだな」
同盟長のカイツが、レーダーをヒャカリトの横で見ながら言った。
「この光一つ一つが、この星から5000億キロメートル以内に存在している船なんだ。さて、これからどうする」
カイツに、ヒャカリトが聞いた。
「…跳べるか」
「10光年以内なら、どこでも」
「じゃあ、向こうにも連絡してくれ。10光年以内の任意の点をプロット。一気に跳ぼう」