第11章 相談
船に戻ったローリールは、同盟長のカイツに、巳六と手を組むかどうかの相談をしていた。
「大総統の狙撃した奴と同じなのか」
「ああ、彼はそう言っていた。きっとそうなのだろう」
カイツの質問に、ローリールは考える時間も挟まずに答えた。
「防衛長として聞くが、それは、どんな素材なんだ」
ヒャカリトが好奇心で聞いている。
「超々タングステン鋼と、エル社の人は言っていた。タングステンというのは、彼らの説明によれば、さまざまな武器や装甲に使用される、ありふれた金属のひとつで、融点が金属中最高だということだ。こちらにはそれが無いから、きっとまだ見つかっていないだけだろうな。このことから、彼らは大総統暗殺事件と関与していることも想定していなければならないだろう」
「…彼らが犯人と通じていると」
「そう考えても仕方ないとおもうね」
ヒャカリトが冷静にカイツへ返答した。
「そうか、なら、我々も重要な情報は極力渡さないようにしておこう。ジョージ、ヨウビ」
「何でしょうか」
ジョージ、ヨウビは、船に搭載されているAIだ。
「エル社の人間に対しての制限をかける。制限レベルは、機密レベル3以上の閲覧禁止とする」
「了解です」
ジョージが答えた。
「さて、では本題に戻ろう。巳六と組むことは正解だと思うか」
カイツがローリールに聞いた。
「このあたりで商売をするためには、確実に正解だと思う。でも、100光年より先になってくると、巳六の影響下じゃなくなるからな。その範囲内なら、必要なことだと思う」
「全国統一するにも元手が必要か…よし、ならそれでいこう」
カイツが全員の意見をここで取りまとめる。
「譜柴巳六氏との同盟関係を結ぶことに、反対の人はいるか」
だれも手を上げない。
「よし、では、そう伝えてくれないか。ジョージ、このことを記録しておいてくれないか」
「了解」
「了解です」
ローリールとジョージが同時に返事をする。
「では、頼んだ」
今回の相談は、これでお開きとなった。