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王子だとばれました

「なあ、パーティーリーダーはもうシンヤでよくね?」


「そうね、あんなステータスだもの。それに、国王になるつもりならリーダーになってほかの冒険者の人とも交流してシンヤ自身の信頼度をあげておいたほうがいいわ」


 ダンジョンからの帰り道でそんな会話があり俺がパーティーリーダーとなってしまっていた。しかし俺は今それどこではなかった。転生して初めてモンスターと戦えると思っていたのに一回も戦うことなく終わったからだ。そんなわけで俺はリーダーとなったにも関わらず肩を落とし歩いていた。

 そんな中気を取り直してギルドに入り受付カウンターに行く。


「すみません。今日ダンジョン1の調査の定期依頼を受けたDランク冒険者のシンヤとEランク冒険者のアーク、ハル、ティナです。ギルマスに至急会わせてください」


「えっと…依頼達成の報告ですよね?何か問題でも起きましたか?」


「はい。俺たちでは実力不足の可能性があったので退いてきましたが本能的な危険を感じました」


「それだけでは…どうしようも。そもそもギルマスはお忙しい方ですし…」


 そのような問答を続けるだけで時間はどんどん過ぎていく。後ろではアークたちが苦笑いをしているがまあこの受付嬢の言っていることが正しいのだろう。まあ俺でも理解はするのだがだんだんと怒りがたまってくる。30分くらいたっただろうか…受付嬢のとある一言で俺はキレた。


「だから、ギルマスはお忙しい方なので気軽に会わせろと言われても無理です。(はあ、ほんとにさっさと消えてくれないかしら。これだから無法者ばっかの冒険者は嫌いなのよ)」


「いい加減にしろよ…こっちは丁寧にギルマスに会わせてくださいってんのによお」


 徐々に圧が漏れていくおかげで周囲の冒険者も気づいた。そして受付嬢を見て納得したような顔をしてこそこそとしゃべる。聞こえてくる情報によるとこの受付嬢は冒険者からも一緒に働いている受付嬢からも嫌われているようだ。理由がその態度で何度も注意されているのだが首にならない。というのも、この受付嬢は代々王族と取引をしている商会の会長の娘だかららしい。首にしようとすると母親が必ず出てきて王族を盾にして脅すらしい。


「だから、さっさと依頼達成の報告だけして消えてください‼あまりしつこいと資格剝奪しますよ‼」


「はあ、もういいや。お前と話しても何も進まないからな、直接呼ぶわ。……エルシオテウー‼至急話したいことがある‼降りてきてくださーい‼」


 埒が明かないのでもう思いっきり叫んだ。前世よりも声が出たような気がする。ちなみにだがこの冒険者ギルドは防音結界が張られており、魔法で音を増幅させない限りいくら叫んだとしても外に漏れることはない。

 ありったけ力を込めて叫んだからかエルが飛んできた。


「エル、もうこいつクビでいいだろ」


「いい加減にしてください‼私をクビにすると王族が飛んできますよ‼」


 俺の言葉に反応した受付嬢を見てエルは肩をすくめる。まあ当然といえば当然の反応なのだが。俺がその王族だからだ。

 少しの間をおいてエルから怒りを少々含んだ言葉が…それと周囲の冒険者たちには衝撃の事実が告げられた。


「君、クビね。いくら立派な志を持っていて以前とは見違えるほどに温厚になったシンヤ殿下がこんなに怒ってるんだ。さっさと荷物をまとめてこのギルドから出て行って。あぁそれと本当だったら課すはずだった罰が課せなかったからいっぺんに言い渡すね。1年半分の今までに出した賃金に君の母親から脅されていて通常の賃金に上乗せされていた分も含めて金貨80枚、払ってね」


「ギルマス‼王族の後ろ盾がある私よりこんなガキの肩を持つんですか‼」


 エルの言ったシンヤ殿下という言葉に周囲の冒険者はざわつくがこの受付嬢…いやもうクビになったから女か…わめいている。だが俺はその女の言葉がおかしくて笑ってしまった。

 その笑い声に周囲の視線が集まり女がまたわめくがきっぱり名乗る。もうエルがばらしたようなものなので言っても問題はないだろう。


「ガキねぇ。まあ面白いから死刑はしないで上げようじゃないの。あとあのクソ国王はあんたんとこの商会の後ろ盾なぞしてないぞ。祖父上の時にはしていたようだが?死刑はしないけれどもねぇ不敬罪としてギルドに追加で金貨20枚払ってもらおうじゃないの」


「このガキが…言わせておけば。不敬罪にできるわけないでしょ‼」


「できるさ。名乗ってなかったか?俺はデンティス王国第二王子、シンヤ・デンティスだ。エル、こいつに今出て行ってもらったら面倒なことになる。誰かにこの女の父親を呼びに行かせて引き取ってもらったほうがよくないか?」


「ええ、そうですね。そこの君、今すぐにカモウケ商会に行って会長を連れてきてくれ。あとこの手紙も」


 周りにいた受付嬢が手紙を受け取りギルドを出ていく。そのすきをついて女がギルドを出ようとしたのでとっさにアースウォールを俺たちを囲むように発動する。


「あ、ガザルさん。その女捕まえてください。エル、何か縛るものある?」


 ちょうど女の進行方向にガザルがいたのでお願いしてからエルに縛るものを要求すると縄というより鎖が出てきた。


「ちょっと、放しなさいよ‼こんなガキが王子なわけないでしょ‼」


「あ、皆さん。ちなみにこの女、冒険者のこと無法者としか思ってないようですよ。ぼそっと言ったつもりでしょうけど私の耳にはしっかりと聞こえてますからね」


 自然と一人称が私になり言葉遣いが敬語に変わる。これは前世の時からだが俺はキレるとこうなるのだ。

 まあ、とりあえずこの女は会長さんが来るまで放置するとしてこの怒りはいったん置いておこう。


「じゃあ、エル。めんどくさいし、冒険者の皆さんにも聞いておいたほうがいいだろうからここで報告するね」


 女を縛ってあるのを確認した俺はアースウォールを解き何事もなかったかのように言った。

 この瞬間、この場にいた全員の感情は1つになった。


『絶対にこの王子様を怒らせたらいけない』

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