Episode3
リアクションや評価等、ありがとうございます!!
本作の主人公であるつばめ(芥川龍之介)にとって、美波ちゃんは長い時を経てもなお自身の小説を愛するファンであり、自分と同じく本や文章を愛する仲間として認知されています。
だからこそ、つばめ(芥川龍之介)は美波ちゃんなら自分の作品を見せても良いという信頼と安心を寄せているのです!!
つばめにとって、河本美波という少女は二度目の人生における良き友人である。
と言うのも....何せ美波本人はギャルであるがために見た目は派手ではあるものの、西野つばめが芥川龍之介として生きた頃の時代の小説を好んでいたのに加えて、考え方が今のつばめとパズルのピースのようにピッタリとハマっていたため、そうなるのも無理はなかった。
ただし、彼女と知り合った時の出来事がキッカケでつばめはクラスの中では浮き気味だったが、美波という友人兼理解者を得たつばめにとっては特に大きな問題ではなかった。
それどころか、美波と好きな本に関する話をよく行なっていたため、つばめはこの状況をそこまで気にしてはいなかった。
そんなある日の昼休み.....いつものようにつばめが美波と一緒に文豪についての会話していた時のことだった。
「あぁ、そうだ。つい数日前に暇つぶしも兼ねて書き上げた小説の原稿を持って来たのだが....もし、興味があるのなら読んでみるか?」
そう言った後、つばめが鞄の中から取り出したのはクリアファイルに入った状態の何枚か原稿用紙であった。
彼女が鞄から取り出したその小説は、『本の虫』で連載している短編集こと『闇喰み』の執筆の片手間で書いた短編小説で、文字通りの暇つぶし感覚で書いた代物だったのである。
ただ、それを見た美波は原稿用紙を差し出しているつばめに対して、案の定目を丸くしていたのは言うまでもない。
「え!?つばやんって小説を書けるタイプの人間なの!?」
「まぁ、そんなところだな」
原稿用紙入りのクリアファイルを持っているつばめに向け、興奮気味にそう言う美波。
その顔には、文字を文章という名の物語として構成できる彼女への尊敬の念で溢れていて、その表情を見たつばめは何となくではあるが満更でもなさそうな感情が湧き上がっていた。
「読みたい!!てか、めっちゃ読ませて!!」
理解者兼親友とも言っても過言ではないつばめに対し、腕をブンブンと振りながらそんな言葉を言った後、美波は原稿用紙入りのクリアファイルを受け取ると早速ワクワクとした様子で原稿用紙に読み始めていた。
つばめが暇つぶしで書いた小説にはタイトルが書かれてはいなかったが、その小説は一人のアイドルの死をキッカケに暴かれる人間模様とその闇を描いた作品で、まさに人間の愚かさの中で光る美学を描いた作風の小説であった。
そして、この小説は芸能業界の闇の他に様々な時事ネタ等を取り入れてはいるものの、三人称という神の視点から書かれているのもあってか、非常に読みやすい小説としても一面もあり、美波はその小説を無我夢中になって読んでいた。
ひょっとして、自身の親友であるつばめは物書きとしての才能が咲き誇っているタイプの天才なのではないか?
そう思った美波は、その作品のクオリティがあまりにも高過ぎたからか、自身の友人が良い意味でとんでもない存在であることを理解したのか、彼女から手渡された小説の原稿を持つ手を震わせていた。
そんな美波の様子を見たつばめは、彼女に何かあったのではないかと思ったようで....心配そうな顔になっていた。
「....大丈夫か?」
その言葉を聞いた美波は肩をピクリと反応すると、原稿用紙を持ちながらつばめの方をジッと見たかと思えば、とんでもない作品を読んだと言っても過言ではない程に興奮が冷めていない様子を見せた後、物凄い勢いで彼女の方に近づきながらこう言った。
「つばやんってさ.......ガチで小説を書く天才だよ!!」
美波はそう叫ぶように言うと、胸の中から興奮した感情が湧き上がっていたようで、再び腕をブンブンと振り回していた。
その様子を見たつばめは、自身が暇つぶしで書いたはずの小説がそういった評価をされるとは思ってもいなかったようで、思わずキョトンとした顔になっていたのは言うまでもない。
「そう....なのか?」
「そうだよ!!と言うか、こういう後ろから鉄パイプで殴られるような展開の小説を読むのは久々だからめっちゃ楽しかった!!」
そう言った後、美波はつばめに向けてはつらつとした良い笑顔を浮かべていて、その笑顔を見たつばめを前世のことを振り返りながらこう思った。
こんな風に小説を評価されるのも悪くはない。
むしろ、こういった感じのことを言われるのは久々だったな....と。
そんなことを思っているつばめを尻目に、美波は興奮がまだまだ湧き上がっているようで、目を宝石のようにキラキラと輝かせながらこう言葉を続けた。
「推しであるアイドルの死から芋蔓式で分かる人間の闇と愚かさに翻弄され、やがて葛藤していく一人のファンの描写が超丁寧だし、何より小説の書き方が神の視点っぽくて超ヤバい!!てか、あーし的には大好物!!」
「....それならば良かった」
感情のままに、自身の感じ取った感想を言葉として並び立てる美波を間近で見たつばめは、自身が小説に込めた想いを理解してくれたことに感動したようで、その目を大きく見開いていた。
そして、照れ隠しをするようにそう言ったところ....彼女は背中をバンバンと叩きながらこんなことを言った。
「と言うかさ、さっきから思ってたんだけど.....何でこの小説ってタイトルが無いの?」
美波の純粋な質問に対し、その言葉を聞いたつばめはその理由についてしばらく考えた後、それっぽい理由を思いついたのか、彼女は紙パックのジュースをある程度飲んだ後、親友の何気ない質問に答えるかのようにこう答えた。
「何でも何も....暇つぶしで書いた小説だから作品の題名は必要ないと思っただけだ」
つばめがそんなことを呟くように答えたところ、美波はそんな考えを抱いたことがなかったようで、ビックリとした過去になっていた。
友人である美波のその反応を見て、つばめは改めて自身の書いた作品がそんなにも素晴らしいものなのか?という感じになっていて、そう思っている彼女を知ってか知らずか、美波は手渡された原稿用紙を手に持ちながら彼女の顔に迫ると、つばめに向けてこんなことを伝えた。
「ねぇ、もしつばやんが良かったらさぁ....この小説のタイトルをあーしが付けても良いかな?」
友人である美波の口から出たその言葉を聞いたつばめは、自身の作品を彼女が真剣に愛しているのだと感じ取ったのか、心なしか嬉しそうな表情になっており、その嬉しさのあまり片手に持っていた空の紙パックジュースを潰すと、もちろんだと言わんばかりの様子になると、彼女に向けて了承するかのようにこう返答した。
「もちろんだ。むしろ、そう言ってくれるだけでも私は嬉しいのだがな」
つばめがそう言った瞬間、美波は一瞬だけポカーンとした様子になっていたのだが....その数秒後には彼女の言い放った言葉の意味を察したのか、顔を一気に明るくしていた。
良いの?とばかりの反応になっている美波に向けてつばめがコクリと頷くと、その顔は更に明るくなっていて、自らの脳内をフル回転させる形で親友の書いた短編小説のタイトルを考えていた。
そして、考え始めて一分が近づいていた頃に美波はその小説のタイトルを思いついたようで、これだ!!という顔になりながらつばめに対してこう言った。
「それじゃあ....『サングリア』ってタイトルはどう?」
「『サングリア』....」
彼女が提案した名前を聞き、つばめはしばらく考えるような仕草を見せた後、そのままニコッと笑うと二度目の人生における親友に向けてこう言った。
「なるほど、赤ワインの中に沈むフルーツのように露わになる人の闇と愚かさ....か。私にはそういったセンスが無いから羨ましいばかりだ」
つばめが理解者兼親友である美波に対してそう言うと、彼女は凄いのはつばやんだよ!!と主張していて、それを聞いたつばめは彼女と友人になれたことを心の底から喜んでいた。
一方、美波の方はというと.....むしろ、とんでもない作品をタダで読むのはもったいないと感じたようで、つばめに対してこう提案した。
「つばやん、『サングリア』を読ませてお礼にスタボのわらび餅フラッペを奢りたいんだけど....ダメ?」
美波の提案を聞いたつばめは、その直後にもちろんだと言うように微笑みを顔に浮かべた後、彼女の言葉に向けてこう答えた。
「良いとも、その代わり.....今流行っているSNSについて教えてくれないだろうか?」
その後、つばめと美波は二人仲良くわらび餅フラッペを飲んだ後、親友経由でSNSについてのことを教えてもらったのだった。
今回の話に登場した小説こと、暇つぶし感覚でつばめ(芥川龍之介)が書いた短編小説『サングリア』は、アイドルの死を通して判明する芸能界の闇に関するスキャンダルに触れてしまった一人のファンの物語で、芥川龍之介のエッセンスがこれでもかと詰まっているので美波ちゃんはどハマりした模様。
更に言えば、これを機に美波ちゃんはつばめ(芥川龍之介)の小説のファンになります。
ちなみに、つばめ(芥川龍之介)の小説の作風については芥川龍之介からインスパイアされたのかな?と思っている模様。




