覚悟2
負のスパイラルは大きく分けて三つある。一つ目は「数字が減り続ける」スパイラルだ。
仕事を辞めると収入はゼロになる。一方で支出は生活費の他に税金、社会保険など毎月の支払いがあり、仕事が決まるまで貯金を切り崩す生活が始まる。
貯金三百万円が二百八十万円に減ったところで何も思わないが、百万円を切ると世界が一変する。
「このまま貯金が底をつくのではないか」
貯金は残り少なくなると心に余裕がなくなり、視野が極端に狭くなる。私は百万円を切る前にそれに気づき、親に頭を下げて現在は実家に仮住まいだ。
二つ目は「数字が増え続ける」スパイラルだ。正社員はアルバイトと違い、入社が認められるまで面接が何度もあり簡単ではない。
私は宅建(宅地建物取引士)有資格者で実務経験もあるので辞めてもなんとかなるだろうと思っていたが、とんでもなかった。不動産会社やその関連会社に一年近く履歴書を送り続けたが、すべて書類選考落ちだ。
そして求人数が思ったほど多くなかったのも誤算だった。久しぶりに見る求人は一目で「ブラック企業」とわかる会社ばかりだった。
・若手活躍中
・アットホームな職場です
・ありがとうと感謝される仕事です、など
これらのキャッチコピーがブラック企業の代名詞だと世間に広がり、彼らは次のコピーを探しているが、業界経験者なら求人広告を見ただけですぐにわかる。しかし、不平不満を言ったところで収入が増えるわけではない。
五十歳手前で異業種未経験の仕事などそれこそ夢物語で、探してはみるものの結局は前職と同じ求人を探すしかなく、貯金が減り続ける一方で書類選考落ちの数は反比例して増えていく。
最後は「底なしに落ちていく」スパイラルだ。収入がないので毎月貯金が減っていき、何度履歴書を送っても「お祈りメール」ばかり返されると、自分が否定されているような気がしてさすがに心が折れてくる。希望する仕事でなく、生活のために誰でもできる「受かりやすい仕事」を優先し、私は現在その世界にいる。
私がスーパーを次の仕事に選んだのは、毎日スーパーで買い物をして親近感が湧いたからだ。毎日彼らの働き方を見ているので、未経験でも仕事のやり方はイメージできる。
アルバイトの応募に書類選考はなく応募すれば誰でも面接に進めるが、ここでも「採用の壁」が立ちはだかった。「年齢」である。
「中高年は誰でもできるアルバイトさえさせてもらえないのか」
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