覚悟1
私は今、バスに乗り駅へ向かっている。面接に合格するための情報が書かれた「面接本」を購入するためだ。
昨夜の「面接動画」に収穫がなかったからといって手をこまねいているわけにはいかない。面接動画になくても面接本なら、もしかしたら有益な情報があるかもしれない。面接本にはそう期待させるものがある。それは出版社が企画会議を経て正式に認めたものだからだ。
動画投稿は誰でも、小学生でさえできる。動画サイトに登録さえすればコンテンツの質は問われないが、本はそうではない。著者が書いたものは編集者のチェックが入る。出版社として本を売ることは至上命題であり、質が悪ければ直しが入る。それを踏まえて私は午前中にネットで面接本を検索したが、実際のところよくわからなかった。
本の売上はタイトルと装丁で決まると言われているが、当然出版社もそれがわかっているのでどの本も似たり寄ったりだ。
次に本を買う選択肢として「著者」があるが、面接本を書いた著者など知るはずもない。キャリアコンサルタントだの就職カウンセラーだの、「一万人以上面接しました」だの「大学で面接指導の経験があります」だの言われても、経験とそれを言語化する能力はまったく別物だ。
昨夜の動画のようにブサイクや裏声など瞬時にわかる判断基準があればいいが、本はページを開いて文字を読み、情報を整理するまでに時間がかかる。
ネットでは試し読みできる本もあったが、最初の数ページだけで字が小さいなど読みづらいものが多く、それならば実際に手に取り読んでみようと気になったタイトルをメモして本屋へ向かっている最中だ。
「それにしても、落ちるところまで落ちたものだ」
窓の流れる景色を見ながら思った。五十歳手前での正社員採用は苦戦を予想していたが、まさかスーパーのアルバイトに全落ちするとは思わなかった。
今度の飲食でも全落ちすると次は工場や介護、夜勤など条件がどんどん悪くなる。いわゆる転職活動の「負のスパイラル」だ。
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