面接一週間前2
面接は一期一会か……。スーパーの面接では売り場から重たそうなアルミの扉を開けて奥に入り、ダンボールが積まれた在庫を横目に狭い通路を通って部屋に着くと、そこは窓一つない換気の悪そうな、そして蛍光灯が不自然なくらい煌々と灯った中で副店長と向かい合って行われた。
最初に彼から渡された書類に名前、住所、電話番号など基本的な情報を書き込み、席を離れた彼が戻ってくるまでしばらく待つ。スマホを見るわけにもいかないので、軽く部屋を見渡しながらあれこれ想像してみる。
営業時間が終わると彼はこの部屋に戻り、今日の売上集計やアルバイトのシフト決めなどの事務作業をするのだろう。売上が悪ければ本部に詰められ、シフトではアルバイトから文句を言われ、中間管理職の悲哀を感じたものだが、それはもう過去の話。私があの換気の悪い部屋に行くことも、彼に会うことももうない。
それにしても想定質問は基本が六、応用が五の計十一個か。そこに回答例も加わる。確かにネットで調べられるが、私は基本の六の回答がまだ曖昧だ。これを早急に完成させ、メモを見ずとも言えるように記憶に定着させなければならない。
最後の章がおわり「あとがき」のページを開くと、まきちゃんは我々応募者に思いもよらないメッセージを残してくれた。
「わたしがこの本を出版するにあたって一つ条件があったの。それはわたしの言葉を編集せずにそのまま載せること。実際にわたしが目の前の応募者に語りかける形にしたかったの。
何冊もある就活、転職本の中からあなたは本書を選んでくれました。心からお礼申し上げます。それと同時にあなたには希望する会社で力一杯働いてほしいと思います。そのためにわたしの知るかぎりの『面接対策』を本書に書きました。
面接を受ける前は誰でも怖いし緊張します。だから『準備』をしてそれらを消していきます。準備ができたら一歩踏み出してください。そうすれば変わるから、面接に対する考え方が。そうすればわかるから、面接官の質問の意図が。面接官は皆、前向きで努力を続ける応募者をいつでも歓迎します。面接、がんばってください」
ページを閉じた瞬間、目から熱いものが流れてきた。私はこの数年間、誰かに「がんばって」と応援された記憶はない。前職を退職してずっと孤独だったから。
資格試験に失敗し、中途採用募集に失敗し、アルバイト募集にさえ失敗し、ずっと失敗の連続だった。だからこそ誰かの応援は心に刺さり、それが感情を刺激する。
「絶対にやってやる!」
私は涙声でつぶやいた。
面接のルール11:
・面接は一期一会、最初で最後になるかもしれない出会いを大事にする。
・面接が決まるまで想定質問11個とその回答例を作る。
・想定質問と回答を反復して記憶に定着させる。
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作者がやる気になります。




