心理戦3
棚の左端からタイトルを指差し確認でチェックする。右端までいくと次は二段目の左端に体ごと向きを変える。三段目から視線が下がり読みづらくなったので、中腰になりながら指差し確認を続行する。
四段目を終えて五段目、ついに最後の段になった。中腰からさらにしゃがんで体勢を低くする。残り十秒。集中力を最大限に高め、タイトルのみに集中する。
列の真ん中まで来たとき、私の指が止まった。その本を手に取り、表紙をまじまじと見つめる。
「面接は最初の6秒で決まる」
これはおそらく面接官視点での言葉だと思うが、私も同感だ。昨夜の動画では最短で一秒かからず早めに見切りをつけて次々に動画を閉じていった。
著者名は「山川まき」。経歴は大手企業の元採用担当者。昨日も同じような経歴の人を何人も見て裏切られたが彼女はどうか。
ページを開いて「はじめに」の章を読む。いきなりガツンと頭を叩かれたような衝撃を受けた。
「わたしはこれまで千人近くの応募者を面接してきましたが、みんな勘違いしているんじゃないかしら。それともバカなの?面接は理想を語り、自分のことを正直に話す発表会でじゃないの。学校でそう教わったのかしら。まったくおめでたいわ。面接はね、面接官と応募者の切った張ったの騙し合い、相手の表情を見て作戦を変える心理戦なの。わたしたちは与えられた役を演じる役者なのよ」
応募者を「バカなの?」ってこの人、本当に大手企業の採用者なのか。そして編集者はなぜバカ発言を掲載したのか。しかし、有難い。今の私にはこれくらい厳しいくらいがちょうどいい。
続きを読むと今度は一転、面接官らしい説明に変わる。彼女によると面接官が面接でする質問には「意図」があるという。
・志望動機を聞くのは、当社でどれくらい働きたいかを見極めるため
・退職理由を聞くのは、入社してすぐに辞めないかを見極めるため
面接官の質問の意図を汲み取り、的確に答えることができればどんな会社でも採用されるとまきちゃん(著者)は言う。読み進めるごとにグサリ、グサリと彼女の言葉が私の心を突き刺した。
「はじめに」を読み終わる前にページを閉じ、私はレジへ向かって歩き出した。
「諦めないでよかった」
最後の、本当に最後の五段目で私は希望を見つけた。
面接のルール3:
・面接官の質問には意図がある。
・質問の意図を汲み取り、面接官の求めるものを答えること。
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作者がやる気になります。




