第九十八話 怒りの追撃、高速道路の死闘
バンコクの大通りに響き渡る、チャンの高笑いとスピーカーから流れる罵声。コウとメイファンは、迫りくる車列を前に、絶望的な表情で立ちすくんでいた。武装した男たちが乗る車は、まるで巨大な捕食者のように、彼らへと向かってくる。
「くそっ…! 逃げ場がねえ…!」
コウは、そう叫び、FN SCARを構え、車列に銃口を向けた。彼の心臓は、怒りと焦りで激しく脈打っている。
「コウ! 無駄だ! 奴らは、この街の全てを支配している!」
メイファンが叫んだ。彼女の顔は、絶望的な表情で歪んでいる。
「それでも…! やるしかないだろう!」
コウは、そう言って、引き金を引いた。
ダダダダダダダ!
FN SCARの重厚な銃声が、大通りに響き渡る。銃弾は、車列の先頭を走る車を正確に貫き、フロントガラスを粉砕した。運転手は、血を噴き出して倒れ、車は、コントロールを失い、ガードレールに激突した。
ドォン!!
爆発音が響き、車は、炎上した。しかし、残りの車は、コウたちの銃撃をかわしながら、彼らへと向かってくる。
「くそっ…! なぜ、こんなに…!」
コウは、そう叫び、歯ぎしりをした。彼は、銃弾を撃ち尽くし、弾倉を交換しようとした。
その時、メイファンが、コウに叫んだ。
「…コウ! こっちだ!」
コウは、メイファンの声に、振り返った。メイファンは、大通りの向こう側にある、ショッピングモールの入り口を指差していた。
「…わかった!」
コウは、そう言って、ショッピングモールへと走り出した。彼らは、車列の銃撃をかわしながら、ショッピングモールの入り口へと飛び込んだ。
「くそっ…! 逃げたか!」
チャンの声が、スピーカーから響き渡った。
ショッピングモールの中は、すでに閉店しており、人気はなかった。薄暗い空間に、コウとメイファンの足音が響く。
「…メイファン、どうする!?」
コウは、メイファンに尋ねた。
「奴らは、俺たちが、このショッピングモールに逃げ込んだことを、知らない。ここで、奴らを撒く!」
メイファンは、そう言って、コウに耳打ちした。
「…な…!」
コウは、メイファンの言葉に、驚きを隠せないようだった。
「行くぞ!」
メイファンは、そう叫び、ショッピングモールの奥へと走り出した。
二人は、ショッピングモールの内部を、まるで迷路のように進んでいく。彼らの足音は、静かに、そして素早く、ショッピングモールの中に響く。
その時、ショッピングモールの入り口から、複数の足音が聞こえた。
「…来たぞ!」
コウは、身構えた。
入り口から、武装した男たちが、姿を現した。彼らが手にしているのは、AK-47と、SIG P226。東南アジアの裏社会では、最も一般的な武器だ。
「てめえら…! どこだ…!」
男の一人が、コウたちを睨みつけ、叫んだ。
「…悪いが、お前たちに教える義理はない」
コウは、そう言って、FN SCARを構え、男に銃口を向けた。
「…くそっ…! やっちまえ!」
男が叫び、一斉に発砲した。
ダダダダダダダ!
AK-47の無骨な銃声が、ショッピングモールに響き渡る。銃弾が、ガラスのショーケースを叩き、激しい音を立てて砕け散る。
「メイファン! 援護する!」
コウは、メイファンに叫び、反撃を開始した。FN SCARの重厚な銃声が響き渡り、銃弾は、男たちの頭部や胸を正確に貫いていく。
「フン…、やるじゃねえか、コウ」
メイファンは、そう言って、グロック17を構え、男たちに応戦した。彼女は、コウの銃撃に合わせ、アクロバティックな動きで、銃弾をかわしていく。
銃撃戦は、熾烈を極めた。ショッピングモールは、男たちの血と硝煙で満ちていた。しかし、男たちの数は、圧倒的だった。彼らは、コウとメイファンの銃撃をかわしながら、コウたちに銃弾の雨を降らせる。
「くそっ…! キリがねえ!」
コウは、そう叫び、歯ぎしりをした。彼は、男たちの数が多すぎることに、絶望的な気分になっていた。
その時、チャンの声が、ショッピングモール全体に響き渡った。
「…コウ! あなたを、絶対に逃がしはしない!」
チャンの声は、怒りと憎しみに満ちていた。
「…チャン…!」
コウは、そう叫び、チャンの声が聞こえた方角に銃口を向けた。しかし、チャンの姿は、どこにもない。
「…フン…、コウ。お前は、俺の掌の上で踊っていただけだ。お前たちの行動は、全てお見通しだった」
チャンの声は、まるでコウの心に直接語りかけてくるかのように、響き渡った。
コウは、チャンの声に、絶望的な表情を浮かべた。彼は、チャンが、自分たちのことを、最初から知っていたことに、改めて悟った。
「…コウ…! こっちだ!」
メイファンが叫んだ。
コウは、メイファンの声に、振り返った。メイファンは、ショッピングモールの奥にある、非常口を指差していた。
「…よし! 行くぞ!」
コウは、そう叫び、最後の力を振り絞り、非常口へと走り出した。
彼らが、非常口の扉を通り抜けると、扉は、重い音を立てて閉まった。
「…くそっ…! 逃げたか!」
チャンの声が、スピーカーから響き渡った。




