五十七話：真実の光
廃墟と化した軍事基地を後にしたコウ、ジェイク、リリ、そして、ジェイクの双子の兄であるシオンは、新たな目的地へと向かっていた。彼らは、ブラックボックスの謎、そして黒王の真意を解き明かすために、父の研究所へと向かうことを決意した。
冷たい夜風が吹き荒れる中、彼らは、ジェイクの愛車である、真っ赤なフォード・マスタング・ボス302に乗り込み、夜のハイウェイを疾走していた。エンジンの唸りが、彼らの焦りを増幅させていた。
「……シオン、本当に、父さんが……」
ジェイクは、そう言って、運転席に座るシオンに尋ねた。
「……ああ。…父さんは…俺たちを…救おうとしていた…」
シオンは、そう言って、アクセルを踏み込んだ。
コウとリリは、後部座席で、静かに二人の会話を聞いていた。リリは、シオンの存在に、未だに驚きを隠せずにいた。彼女は、ジェイクが双子だったこと、そして、もう一人のジェイクが、自分たちを助けに現れたという事実に、混乱していた。
「……シオンさん、どうして……」
リリは、そう言って、シオンに尋ねた。
「……俺は…ずっと…地下研究施設に…いたんだ…」
シオンは、そう言って、話し始めた。
「……父さんは…俺を…ブラックボックスの…**『実験体』**として…育てた…」
「……俺は…父さんの…『最高傑作』だった…」
シオンは、そう言って、苦い表情を浮かべた。
「……だが…俺は…ブラックボックスの…**『コピーデータ』を…俺の体内に…埋め込んだ…」
「……俺は…父さんの…『計画』**を…阻止するために…」
シオンは、そう言って、静かに微笑んだ。
「……だから…父さんは…お前を…殺そうとしたのか…」
ジェイクは、そう言って、シオンに尋ねた。
「……ああ。…父さんは…俺を…『失敗作』として…抹殺しようとした…」
シオンは、そう言って、静かに目を閉じた。
コウは、シオンの言葉に、衝撃を受けていた。彼は、シオンの存在を知らなかった。ジェイクが、双子だということも。彼の知るジェイクは、唯一無二の存在だった。
「……信じられない……」
コウは、そう呟いた。
「……だが…これが…真実だ…」
シオンは、そう言って、静かに微笑んだ。
彼らが、夜のハイウェイを疾走していると、突然、前方に一台のトラックが現れた。トラックは、彼らの進路を塞ぐように、横一列に並んでいた。
「……くそっ！罠か！」
コウが、そう叫んだ。
トラックの荷台から、無数の敵兵が、最新鋭のFN SCAR-Hアサルトライフルを構え、彼らに向けて、銃口を向けた。
「ダダダダッ！」
敵兵たちが、SCAR-Hを連射する。7.62mm口径の弾丸が、マスタングのフロントガラスに無数の亀裂を入れる。
「……くそっ、キリがない！」
ジェイクが、そう叫んだ。
「……俺に任せろ！」
シオンは、そう言って、マスタングのハンドルを切り、トラックの間を、まるで水を得た魚のように、すり抜けていった。
「ダダダダッ！」
敵兵たちが、再びSCAR-Hを連射する。マスタングのボディに、無数の弾痕が刻まれていく。
「……コウ、リリ！ 準備はいいか！」
シオンは、そう言って、二人に視線を向けた。
「……ああ！」
コウは、そう言って、M4A1を構えた。
「……いつでも、いける！」
リリは、そう言って、MP5Kを構えた。
シオンは、マスタングを急停止させ、後部座席のコウとリリに視線を向けた。
「……俺が…トラックのエンジンを…破壊する…」
シオンは、そう言って、グロック17を構えた。
「パン！パン！パン！」
シオンの放つ弾丸は、トラックのエンジンルームに正確に命中し、トラックは、黒煙を吹き出し、停止した。
「……今だ！」
シオンは、そう叫んだ。
コウとリリは、マスタングから飛び出し、敵兵たちに銃口を向けた。
「ダダダダッ！」
コウのM4A1から、弾丸が放たれる。リリのMP5Kからも、弾丸が放たれる。彼らは、互いの背中を預け合い、連携しながら、敵兵たちを倒していく。
「……くそっ、キリがない！」
コウが、そう叫んだ。
「……大丈夫だ…」
シオンは、そう言って、再びグロック17を構えた。
シオンは、敵兵たちの動きを完全に読み切り、彼らの急所を正確に撃ち抜いていく。彼の動きは、まるで訓練されたロボットのように統制が取れていた。
「パン！パン！パン！」
シオンの放つ弾丸は、敵兵たちのヘルメットを貫通し、彼らを次々と倒していった。
ジェイクは、その場で、呆然とシオンの戦い方を見つめていた。彼の知るシオンは、穏やかで、優しい兄だった。しかし、彼の目の前にいるシオンは、まるで、冷徹な殺人マシーンだった。
「……シオン…お前は…」
ジェイクは、そう呟いた。
「……俺は…父さんの…最高傑作だ…」
シオンは、そう言って、ジェイクに微笑んだ。その瞳には、何の感情も宿っていなかった。
その瞬間、ジェイクの心に、深い悲しみがこみ上げてきた。彼は、兄が、自分を助けるために、どれほどの苦しみを味わってきたのか、そして、彼の魂が、どれほど深く傷つけられていたのかを理解した。
彼らは、敵兵たちを全て倒し、再びマスタングに乗り込んだ。夜のハイウェイは、静けさを取り戻していた。
「……ありがとう、シオン…」
ジェイクは、そう言って、シオンに感謝の言葉を述べた。
「……気にするな…」
シオンは、そう言って、静かに微笑んだ。
彼らは、再び、新たな目的地へと向かった。ブラックボックスの謎、そして黒王の真意を解き明かすために。彼らの戦いは、まだ終わっていなかった。
