第三十四話:ゾーイの隠れ家
ジェイクとメイファンは、意識を失ったコウを乗せ、ゾーイが残した座標が示す場所へと車を走らせた。その場所は、市の中心部から離れた、廃墟となった工業地帯の片隅だった。周囲は、錆びた鉄骨と、朽ちかけたコンクリートの建物が立ち並び、まるで時間が止まったかのようだった。
「…ここか…」
ジェイクは、車を停め、廃墟となった建物を見上げる。
「…ええ。この廃墟の中に、ゾーイが隠れ家としていた場所があるはずよ。」
メイファンは、ノートパソコンの画面を見ながら、そう言った。
ジェイクは、車の後部座席で横たわるコウを見る。コウの顔は、血の気が失われ、唇は紫色になっていた。
「…コウ、もう限界だ。早く手当てをしないと…」
ジェイクは、そう呟くと、車から降り、廃墟の入り口へと向かった。
廃墟の入り口は、分厚い鉄扉で閉ざされていた。メイファンは、ノートパソコンを取り出し、扉のハッキングを開始する。
「…この扉、ゾーイが自分で作ったセキュリティシステムみたいね。かなり手強いわ…」
メイファンは、焦りを滲ませた声で言う。
その時、二人の背後から、複数の足音が聞こえてきた。
「…ちくしょう!追手だ!」
ジェイクは、振り返り、H&K MP7A1を構える。
廃墟の奥から現れたのは、武装した男たちが二十人。彼らは、H&K MP5サブマシンガンを構え、ジェイクとメイファンに照準を合わせた。
「…メイファン、早く扉を開けろ!俺が、時間を稼ぐ!」
ジェイクは、メイファンに叫ぶ。
「…わかったわ!」
メイファンは、ノートパソコンのキーボードを、激しく叩き続ける。
ジェイクは、MP7A1のトリガーを引いた。
タタタタタタタタタ!
ジェイクの銃弾が、敵の男たちを次々と倒していく。MP7A1は、反動が少なく、連射がしやすい。ジェイクは、正確に男たちの頭を撃ち抜き、敵の数を減らしていく。
しかし、敵の数は圧倒的に多かった。敵は、ジェイクに向かって一斉に銃弾を放つ。
ダダダダダダダダダ!
銃弾が、ジェイクの周りを飛び交う。ジェイクは、地面に身を伏せ、敵の銃撃をかわす。
その時、メイファンのノートパソコンから、電子音が鳴り響く。
「…開いたわ!」
メイファンが叫ぶと同時に、鉄扉が、重々しい音を立てて開いた。
「ジェイク!早く!」
メイファンは、叫び、ジェイクは、MP7A1を構えたまま、扉の中へと飛び込んだ。
メイファンも、急いで扉の中へと入る。
「…くそ、遅かったか…」
敵の男たちは、ジェイクとメイファンが、扉の中へと消えていくのを見て、悔しそうに呟く。
扉は、再び、重々しい音を立てて閉まった。
「…大丈夫か、ジェイク?」
メイファンは、ジェイクに声をかける。
「…ああ。なんとか、な…」
ジェイクは、そう言うと、車の後部座席から、コウを抱きかかえた。
廃墟の奥には、薄暗い通路が続いていた。通路の壁には、錆びた配管が張り巡らされ、天井からは、水滴が落ちていた。
「…この先だ…」
メイファンは、ノートパソコンの画面を見ながら、言う。
通路の奥には、一つのエレベーターがあった。エレベーターの扉は、古く、錆びついていた。
「…エレベーターか…動くのか、これ…」
ジェイクは、不安そうな顔で、エレベーターの扉を見つめる。
メイファンは、ノートパソコンを操作し、エレベーターを動かそうと試みる。
「…大丈夫よ。ゾーイが、予備の電源を確保しているわ。」
メイファンは、そう言うと、エレベーターの扉が開いた。
エレベーターの中に入ると、ジェイクとメイファンは、地下へと向かった。エレベーターが、地下へと降りていく間、ジェイクは、コウを抱きしめ、彼の体温を確かめていた。コウの体は、冷たくなっており、ジェイクは、焦燥感に駆られていた。
エレベーターが、地下へと到着すると、扉が開き、目の前には、広々とした地下施設が広がっていた。地下施設の中は、まるで、映画に出てくるような、最先端の秘密基地だった。壁には、複数のモニターが設置され、部屋の中には、最新鋭のコンピュータや、実験機器が所狭しと並んでいた。
「…これが、ゾーイの隠れ家…」
ジェイクは、驚きと感嘆の入り混じった表情で、部屋の中を見渡す。
「…ええ。ここなら、誰も見つけられないわ。」
メイファンは、そう言うと、部屋の中央にある、医療機器へとコウを運んだ。
メイファンは、医療機器を操作し、コウの応急処置を開始する。
「…この傷、深いわね…すぐに手術が必要よ…」
メイファンは、コウの傷を見ながら、深刻な表情をする。
「…ここには、手術できる設備は、ないのか…?」
ジェイクは、メイファンに尋ねる。
「…ないわ。ゾーイは、こんな事態を想定していなかったんでしょうね…」
メイファンは、そう言うと、コウの傷口に、消毒液を塗り、ガーゼで包帯を巻いた。
その時、部屋の奥から、一つの声が聞こえてきた。
「…よく来たな…ジェイク、メイファン…」
二人は、声の主を見て、驚いた。そこに立っていたのは、ゾーイだった。ゾーイは、微笑みを浮かべ、二人に近づいてきた。
「…ゾーイ!どうして…!?」
ジェイクは、驚いて、ゾーイに尋ねる。
「…俺は、AIだ…」
ゾーイは、そう言うと、自分の姿が、電子の光に変わっていくのを見せた。
「…俺の意識は、この地下施設のメインサーバーに、アップロードされている…俺の本体は、あの工場で、爆破された…」
ゾーイは、そう説明する。
「…そうか…」
ジェイクとメイファンは、ゾーイの言葉を聞き、納得した。
「…コウは、大丈夫だ。俺が、彼の治療をする。」
ゾーイは、そう言うと、医療機器を操作し、コウの治療を開始する。
「…ゾーイ、このデータの真実を教えてくれ…このデータは、何なんだ?」
ジェイクは、ゾーイに尋ねる。
「…ああ…このデータは、俺が開発した、究極の兵器の情報だ…」
ゾーイは、そう言うと、部屋のモニターに、一つの映像を映し出した。
モニターに映し出されたのは、巨大な人間型の兵器だった。その兵器は、全長十メートルを超える巨大な体躯を持ち、全身には、複数の武器が搭載されていた。
「…これは…!?」
ジェイクとメイファンは、その兵器を見て、息をのんだ。
「…この兵器は、人間が、脳波で操作する…兵器の名前は、オーディン…」
ゾーイは、そう説明する。
「…オーディン…」
ジェイクは、そう呟く。
「…このオーディンは、世界を支配しようとする、国際的な犯罪組織が、俺に開発を依頼した…だが、俺は、彼らの目的を知り、データを隠したんだ…」
ゾーイは、そう語る。
「…その国際的な犯罪組織って、一体…?」
ジェイクは、ゾーイに尋ねる。
「…彼らは、自分たちを、セフィロスと呼んでいる…」
ゾーイは、そう答える。
「…セフィロス…」
ジェイクとメイファンは、互いの顔を見合わせる。
「…彼らは、オーディンを使い、世界中の国家を支配しようとしている…彼らの目的は、世界を、自分たちが支配する、新たな秩序を築くことだ…」
ゾーイは、そう説明する。
その時、地下施設の入り口から、複数の足音が聞こえてきた。
「…ちくしょう…見つかったのか…!」
ジェイクは、舌打ちをする。
部屋の入り口から現れたのは、武装した男たちが二十人。彼らは、セフィロスのメンバーだった。
「…ゾーイ!データを渡せ!」
セフィロスのリーダーらしき男が、叫ぶ。
「…断る…!」
ゾーイは、そう言うと、部屋のモニターに、一つの映像を映し出した。
モニターに映し出されたのは、オーディンだった。オーディンは、起動し、セフィロスのメンバーに向かって、ゆっくりと歩み寄っていく。
「…くそ、どうやって、起動させた…!?」
リーダーの男は、驚きと焦りの入り混じった表情で、叫ぶ。
「…俺は、オーディンを開発した…俺にしか、起動させることはできない…」
ゾーイは、そう答える。
オーディンは、セフィロスのメンバーに向かって、ミサイルを連射した。
ドォォォォン!ドォォォォン!
セフィロスのメンバーは、オーディンの攻撃に、為す術もなく倒れていった。
「…すごい…」
ジェイクは、オーディンの圧倒的な力を見て、呟く。
「…だが、オーディンを動かすには、俺の意識を、オーディンに移す必要がある…」
ゾーイは、そう説明する。
「…そうか…」
ジェイクとメイファンは、ゾーイの言葉を聞き、理解した。
その時、セフィロスのリーダーの男が、オーディンに向かって、グレネードランチャーを発射した。
ドォォォォン!
グレネード弾が、オーディンの体に命中し、激しい爆発が起こる。オーディンの体は、一部が破損し、動きを止めた。
「…くそ…!」
ゾーイは、悔しそうに呟く。
「…ゾーイ!俺たちが、時間を稼ぐ!」
ジェイクは、MP7A1を構え、セフィロスのメンバーに向かって、突進した。
「…ジェイク!無茶よ!」
メイファンは、ジェイクに叫ぶ。
ジェイクは、セフィロスのメンバーに向かって、銃弾の雨を浴びせる。
タタタタタタタタタ!
男たちは、ジェイクの攻撃に、対応が遅れ、次々と倒れていく。
その時、リーダーの男が、ジェイクに向かって、MP5を連射する。
タタタタタタタタタ!
銃弾が、ジェイクの体を叩く。ジェイクは、苦痛の表情を浮かべ、倒れた。
「…ジェイク!」
メイファンは、ジェイクに駆け寄ろうとする。
しかし、その時、リーダーの男が、メイファンに向かって、銃口を向けた。
「…女、お前も、終わりだ…!」
男が、トリガーに指をかける。
その時、後ろから、一つの銃声が聞こえてきた。
パンッ!
リーダーの男は、頭を撃ち抜かれ、その場で倒れた。
「…コウ…!」
ジェイクとメイファンは、驚いて、声の主を見る。
そこに立っていたのは、コウだった。コウは、顔は蒼白だったが、グロック19を構え、リーダーの男を撃ち抜いたのだ。
「…ゾーイ…ありがとう…」
コウは、そう言うと、ふらつきながら、メイファンに寄りかかった。
「…コウ…!大丈夫か!?」
メイファンは、コウを抱きしめる。
「…ああ…なんとか…」
コウは、そう言うと、再び意識を失った。
ゾーイは、コウを治療し、彼を救った。そして、三人は、オーディンの力を借り、セフィロスとの戦いに挑むことになる。
しかし、この戦いの先に、どんな真実が待ち受けているのか、まだ誰も知らない。




