第三十話:最後の銃声
地下鉄の駅の奥、秘密の通路を抜けた先に、広大な地下空間が広がっていた。そこは、ゾーイの組織が持つ、最後の要塞だった。無数のコンピューターが並び、不気味な青い光を放っている。その中央に、ゾーイは立っていた。
「来たわね、コウ。あなたを待っていたわ。」
ゾーイが、冷たい笑みを浮かべて言う。彼女の手には、金色の装飾が施された、美しい拳銃が握られていた。
「ゾーイ、もうやめろ。お前のやり方は間違っている。」
コウが、ゾーイに向かって言う。彼の声は、静かだが、決意に満ちていた。
「間違っている?私が?あなたたちこそ、間違っているわ!この腐りきった世界を、私が変えてやる!」
ゾーイが叫ぶと、彼女の背後から、無数の戦闘ロボットが姿を現した。
ジェイクは、サブマシンガンを構え、戦闘ロボットに照準を合わせた。
「コウ、ゾーイを頼む!俺が、こいつらを止める!」
ジェイクが叫び、戦闘ロボットに向かって突進していく。
メイファンは、バレットM82A1対物ライフルを構え、戦闘ロボットを狙った。彼女の目は、獲物を狙う鷹のように鋭かった。
「ジェイク、無理はしないで。私も手伝うわ。」
メイファンが言うと、彼女は、次々と戦闘ロボットを撃ち抜いていく。
ドドォォォン!
重く、そして鈍い発砲音が、地下空間に響き渡る。メイファンの銃弾は、戦闘ロボットの装甲を貫通し、次々と破壊していく。
その隙に、コウは、ゾーイに向かって駆け寄っていった。
「ゾーイ、お前は、何のためにこんなことを…!」
コウが叫ぶ。
「私は、この世界を救いたいだけよ。この世界は、もう手遅れだわ。だから、私が、全てをリセットする!」
ゾーイが叫び、彼女は、コウに向かって発砲した。
パンッ!
コウは、素早く身をかわし、ゾーイに反撃した。しかし、ゾーイの銃弾は、彼の腕をかすめ、血が滲んだ。
ゾーイは、再びコウに発砲した。
パンッ!パンッ!パンッ!
コウは、銃弾をかわしながら、ゾーイに近づいていく。彼は、ゾーイの銃撃のパターンを解析し、彼女の隙をついて、接近しようとしていた。
ジェイクは、戦闘ロボットとの激しい戦闘を繰り広げていた。彼のサブマシンガンの弾倉は、ほぼ空になっていた。
「くそっ、キリがないな!」
ジェイクが叫ぶ。
その時、メイファンがジェイクの横に立ち、戦闘ロボットに向かって、バレットM82A1を連射した。
「ジェイク、大丈夫!?」
メイファンが心配そうに言う。
「ああ、助かったぜ、メイファン!」
ジェイクが感謝の言葉を口にする。
2人は、協力して戦闘ロボットを破壊していく。しかし、戦闘ロボットの数は、圧倒的だった。彼らは、徐々に追い詰められていく。
その時、コウがゾーイに、ついに接近した。
「ゾーイ、もう終わりだ!」
コウが叫び、ゾーイの銃を叩き落とした。
ゾーイは、驚きの表情を浮かべた。彼女は、コウの動きを読み切れなかったのだ。
「…どうして…!」
ゾーイが呟く。
「お前のやり方では、何も変わらない。ただ、破壊するだけだ。」
コウが、ゾーイに言う。
その時、ゾーイは、コウの隙をついて、懐からナイフを取り出し、コウに斬りかかった。
「うるさいわ!私は、私の信じる道を突き進む!」
ゾーイが叫ぶ。
コウは、ゾーイのナイフを素早くかわし、彼女の腕を掴んだ。
「…ゾーイ、お前を、もう一人にしない。」
コウが、ゾーイに優しく語りかける。
ゾーイは、コウの言葉に、驚きの表情を浮かべた。彼女の瞳には、涙が浮かんでいた。
「…コウ…。」
ゾーイが呟く。
その時、コウの背後から、最後の戦闘ロボットが現れ、コウを狙っていた。
「コウ、危ない!」
ジェイクが叫ぶ。
メイファンは、バレットM82A1を構え、戦闘ロボットに照準を合わせた。しかし、彼女の弾倉は、空だった。
「…くそっ…!」
メイファンが悔しそうに叫ぶ。
コウは、戦闘ロボットの気配に気づき、ゾーイを庇いながら、身をかわそうとした。しかし、間に合わない。
その時、ゾーイが、コウを突き飛ばした。
「コウ、逃げて!」
ゾーイが叫び、彼女は、戦闘ロボットの銃弾を、その身に受けた。
ダダダダダダダダダ…!
ゾーイの体が、銃弾を浴び、崩れ落ちる。コウは、ゾーイに駆け寄り、彼女の体を抱きかかえた。
「ゾーイ…!どうして…!」
コウが、ゾーイの体を揺さぶりながら叫ぶ。
ゾーイは、コウの顔を見て、微笑んだ。
「…私は…間違っていたのかもしれない。でも…あなたに出会えて…よかった…。」
ゾーイが、そう言うと、彼女の目は、ゆっくりと閉じられた。
コウは、ゾーイの体を抱きしめ、涙を流した。彼は、ゾーイを救うことができなかった。
ジェイクは、メイファンの隣に立ち、コウの様子を見ていた。
「…終わったな。」
ジェイクが、静かに呟く。
メイファンは、涙を流しながら、ジェイクに寄り添った。
「…彼女は、本当は、救いを求めていたのかもしれないわね。」
メイファンが、悲しげに言う。
3人は、静かにその場を去っていった。ゾーイの死は、彼らの心に、深い傷を残した。しかし、彼らの旅は、まだ、終わらない。
コウ、ジェイク、メイファンの3人は、夜の闇に紛れて、街の路地裏を歩いていた。彼らの顔には、疲労と、悲しみが浮かんでいた。
「…これから、どうする?」
ジェイクが、コウに問いかける。
コウは、空を見上げた。夜空には、満月が輝いていた。
「…分からない。でも、私たちは、進まなければならない。ゾーイが残した、この世界を、私たちが、変えなければならない。」
コウが、静かに言う。
ジェイクとメイファンは、コウの言葉に、頷いた。彼らの旅は、ゾーイとの戦いで、一つの区切りを迎えた。しかし、彼らの前に広がる道は、まだ、遠く、険しいものだった。
彼らは、静かに、そして力強く、未来へと向かって歩き続けた。




