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第二十一話:錆と血の鎮魂歌

ポート・ノーウェアの港は、錆びた鉄骨と、潮風に晒されたコンテナの山が、不気味なシルエットを浮かび上がらせていた。夜の闇と、立ち込める霧が視界を奪い、ジェイクのチームは、それぞれの位置で息を潜めていた。ジェイクは、AR-15を構え、その照準器のレンズ越しに、第3倉庫の入口をじっと見つめている。銃身から微かに立ち上る湿気と火薬の匂いが、彼の研ぎ澄まされた感覚を刺激する。


「コウ、配置についたか?」ジェイクは、無線に囁いた。


「了解。クレーン上空、視界良好だ」コウの低い声が返ってくる。彼のM24 SWSスナイパーライフルは、夜の闇に溶け込み、獲物を待つ蛇のように静かだった。


「メイファン、お前は俺と行動を共にしろ」


「ハッ、いつでもいけるぜ、ジェイク。俺の『双銃言葉』をぶっ放す時が来たってわけか」メイファンの軽やかな声が、無線を通じて響く。彼女は、腰のホルスターから二丁のCZ Shadow 2 Carryを抜き、そのマガジンに、カチャリ、カチャリと丁寧に弾丸を装填していく。


ターゲットは、第3倉庫に隠された歴史的資料だ。ゾーイの部下たちが、必ずこの倉庫を守っているはずだった。ジェイクは、静かに呼吸を整え、メイファンに合図を送った。二人は、音を立てずに、倉庫の入口へと向かう。


入口の扉は、鍵が壊され、不気味な暗闇を覗かせていた。ジェイクは、ライフルを構え、慎重に内部を伺う。彼の指は、トリガーガードにかけられ、いつでも引き金を引ける状態にあった。


その瞬間、倉庫の内部から、銃弾の雨が降り注いだ。パン、パン、パン、という乾いた音と共に、銃弾がジェイクたちの足元に降り注ぐ。彼らは、即座にコンテナの影に身を隠した。銃撃の音は、倉庫全体に反響し、耳をつんざくほどだった。


「チッ、待ち伏せか!」メイファンが、舌打ちをした。


ジェイクは、コンテナの隙間から、AR-15を掃射した。彼は、正確な狙いを定めず、ただ敵の注意を惹きつけるために、弾幕を張る。その隙に、メイファンが、コンテナの陰から飛び出した。彼女は、二丁拳銃を構え、まるでアクロバットのように、体を回転させながら、次々と敵を撃ち抜いていく。彼女のCZ Shadow 2 Carryは、9mmパラベラム弾を吐き出し、敵の体を貫通させる。倒れた敵の体から、血がにじみ出し、コンテナの錆びた床を汚す。


その時、一人の敵が、メイファンの背後から、ポンプアクション式ショットガンを構え、彼女に狙いを定めた。ズシン、という鈍い音が響き、ショットガンの銃声が、倉庫全体に響き渡る。メイファンは、その銃声に気づき、素早く身を翻したが、すでに遅かった。散弾が、彼女の腕を掠め、血が飛び散った。


「メイファン!」ジェイクが叫んだ。


その時、コウの狙撃銃が、遠くから火を噴いた。パン!という甲高い音と共に、ショットガンを構えていた敵の頭部が、血の花を咲かせた。彼の体が、そのまま地面に倒れ込む。コウの弾道は、正確無比だった。


「助かったぜ、コウ!」メイファンは、そう言って、痛む腕を抑えながら、再び銃を構えた。


銃撃戦は、激しさを増していく。ジェイクは、ライフルを正確に操作し、敵を一人ずつ仕留めていく。銃弾が、彼のAR-15の銃口から、まっすぐに放たれる。反動は、彼の体に衝撃を与えるが、彼は、それを完璧に制御していた。弾倉が空になると、彼は、瞬時に新しい弾倉を装填し、再び銃撃を開始する。カチャリ、カチャリという装填音が、彼のプロフェッショナルなスキルを証明していた。


その時、倉庫の奥から、ゾーイが姿を現した。彼は、部下たちを従え、ゆっくりとジェイクたちに近づいてくる。彼の顔には、冷たい笑みが浮かんでいた。手には、真鍮製のカスタムメイドリボルバーが握られている。


「まさか、ここまで来るとはな、ジェイク。だが、この倉庫がお前たちの墓場だ」ゾーイは、そう言って、ジェイクに銃口を向けた。


「ゾーイ…、俺は、ただ仕事をしたいだけだ」ジェイクは、怒りを抑え、ゾーイに問いかけた。


その時、メイファンが、ゾーイの部下たちに向かって、双銃言葉を放った。パン、パン、パン!という乾いた音と共に、ゾーイの部下たちが、次々と倒れていく。ゾーイは、メイファンの攻撃に気づき、ジェイクから銃口を外して、彼女に向かった。


「ゾーイ、お前の相手は、俺だ!」ジェイクは、叫び、ゾーイに向かって、銃を発砲した。


銃弾は、ゾーイの胸を掠め、壁にめり込んだ。ゾーイは、そのままコンテナの影に姿を消した。彼の顔には、怒りも憎しみもなかった。ただ、ジェイクに対する、深い警戒の色が浮かんでいた。


今回の戦いは、ゾーイの完全な敗北に終わった。しかし、ジェイクは、喜んでいなかった。彼の顔には、疲労と、深い憂いが浮かんでいた。


銃撃戦の跡には、錆と血の匂いが混じり合い、まるで、この街の未来を暗示しているかのようだった。

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