第百三十一話 絶望の再会、最後の舞台
イリーナの冷たい哄笑が、ドームにこだましていた。コウは膝から崩れ落ち、ただその笑い声を聞くことしかできなかった。彼の絶望は、ポート・ノーウェアの夜空に映し出された、拠点が包囲されている映像によって決定的なものとなった。
「嘘…だろ…」
ホアキンが、震える声で呟いた。彼のタブレットは、もはや何の役にも立たない。イリーナの完璧な情報網と、圧倒的な戦力の前に、彼らの戦いは、最初から敗北が約束されていたのだ。
「フン…、コウ。どうする? あなたの大切な居場所が、今、私の部下たちに破壊されようとしているわ。もし、あなたがここで私に降伏すれば、彼らの命だけは助けてあげてもいい」
イリーナは、そう言って、コウに手を差し伸べた。その手は、まるで悪魔が、魂を差し出すように、コウを誘惑していた。
コウは、その誘惑に、何も答えることができなかった。彼は、ただ、絶望的な表情で、イリーナを見つめていた。
その時、ドームの巨大な扉が開いた。そこに立っていたのは、一人の男だった。
「…ジェイク…!」
コウは、その男を見て、驚きのあまり、言葉を失った。ジェイクは、武装した男たちに囲まれて、コウの前に立っていた。
「…コウ…! なぜ、お前がここにいるんだ…!」
ジェイクは、コウを睨みつけ、叫んだ。彼の顔には、怒りと憎しみが浮かんでいる。
「ジェイク! 待ってくれ! イリーナの罠だ!」
コウは、ジェイクに叫んだ。しかし、ジェイクは、コウの言葉に耳を傾けようとしなかった。
「コウ! 俺は、お前を信じていた! なのに、お前は、イリーナ様を裏切り、俺を騙した! お前を…お前を許さない!」
ジェイクは、そう言って、コウに銃口を向けた。彼の手に握られているのは、M4カービン。その銃口は、コウの心臓を正確に狙っている。
「ジェイク! 落ち着け!」
コウは、ジェイクに叫んだ。しかし、ジェイクの目は、怒りで燃え盛っており、コウの言葉は、彼の耳には届かなかった。
「…コウ、残念だったわね。あなたは、私を倒したつもりかもしれないけれど…あなたの最も大切な人たちを、私の手で始末するわ」
イリーナは、そう言って、ニヤリと笑った。
その言葉に、コウは絶望的な表情を浮かべた。彼は、イリーナの支配から逃れることはできないと、改めて悟った。
「…くそっ…!」
コウは、歯ぎしりをしながら、FN SCARを構え、ジェイクに銃口を向けた。
「…ジェイク! どけ! そいつは、お前を騙している!」
コウは、ジェイクに叫んだ。
「黙れ! コウ! 俺は、イリーナ様を信じる! お前を…お前を倒す!」
ジェイクは、そう叫び、引き金を引いた。
ダダダダダダダ!
M4カービンの軽快な銃声が、ドームに響き渡る。コウは、反射的に体をひねった。銃弾は、コウの横をかすめ、壁にめり込んでいく。
「…くそっ…!」
コウは、舌打ちし、ジェイクに反撃を開始した。FN SCARの重厚な銃声が響き渡り、銃弾は、ジェイクの横をかすめていく。コウは、ジェイクを殺すことができなかった。
「…コウ! なぜ、俺を撃たない…!」
ジェイクは、コウに叫んだ。
「俺は、お前を殺せない! お前は、俺の…俺の仲間だ!」
コウは、そう叫び、ジェイクに銃口を向けたまま、動くことができなかった。
その時、メイファンが、コウの援護に回った。
「コウ! どけ!」
メイファンが叫び、グロック17を構え、ジェイクに銃口を向けた。
「メイファン! 待て!」
コウは、メイファンを制止しようとした。しかし、メイファンは、コウの言葉に耳を傾けようとしなかった。
「コウ! どけ! 俺がやる!」
メイファンは、そう叫び、ジェイクに向かって発砲した。
パン!パン!パン!
乾いた銃声が響き渡り、銃弾は、ジェイクの腕と脚を貫いた。ジェイクは、血を噴き出して倒れた。
「…ジェイク…!」
コウは、絶望的な表情で、ジェイクに駆け寄った。
「…コウ…」
ジェイクは、コウの名を呼び、血を吐きながら、コウを見つめていた。彼の目には、もはや怒りの光はなく、ただ、コウへの信頼と、裏切られた悲しみが浮かんでいるだけだった。
「…ジェイク…!」
コウは、ジェイクの腕を抱きしめた。
その時、イリーナが、コウに銃口を向け、引き金を引いた。
パン!
乾いた音が響き、銃弾は、コウの頭部を正確に貫いた。コウは、血を噴き出して倒れた。
「…コウ!」
メイファンが叫んだ。彼女は、コウの死に、絶望的な表情を浮かべた。
「…はははははは! 見てごらんなさい、コウ! あなたは、私の掌の上で踊っていたのよ!」
イリーナは、そう言って、高らかに笑った。その笑い声は、ドーム全体に響き渡り、メイファンの心に、深く突き刺さった。




