表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/137

第百二十話 イリーナの思惑

ポート・ノーウェアの港を離れた船は、夜の海を順調に進んでいた。甲板に立つコウ、メイファン、ホアキンは、夜風に吹かれながら、街の光が遠ざかっていくのを見ていた。コウの心は、まだこの街で起こったことの余韻に揺れていた。イリーナの支配、クロエとマルタとの攻防、そしてタスクの死。すべてが嵐のように過ぎ去った。


「…大丈夫か、コウ」


メイファンが隣に立ち、静かに尋ねた。彼女は、コウが何かを深く考えていることを感じ取っていた。


「ああ。…ただ、まだ実感がわかないんだ」


コウは、掠れた声で答えた。


「俺は、本当にベネズエラに帰れるのか?」


ホアキンが不安げな声で言った。


「ああ。ジェイクがそう言った。信じろ」


コウは、ホアキンの肩を叩き、安心させた。


その時、ジェイクが船内から現れた。彼の顔には、安堵の表情が浮かんでいる。


「コウ、お前たちを助けられてよかった。…だが、あの女たちは何者だ?」


ジェイクは、クロエとマルタのことを尋ねた。


「イリーナの部下だ。俺を、イリーナの支配下に置こうとしていた」


コウは、ジェイクに全てを話した。イリーナの支配、バルドとの戦い、そしてタスクとの出会い、そしてクロエとマルタの複雑な関係。


ジェイクは、コウの話を黙って聞いていた。そして、最後に静かに言った。


「…イリーナ…。あの女が、この街を裏で操っていたとはな。…だが、なぜお前を狙ったんだ?」


ジェイクは、コウに疑問を投げかけた。


「…わからない。俺は、ただのサラリーマンだ。俺を仲間にするメリットが、どこにあるんだ」


コウは、首を振った。彼は、イリーナの真意が、まだ分からなかった。


その時、ジェイクのスマホが震えた。見ると、知らない番号からメッセージが届いている。


『ジェイク。準備はできた。』


メッセージを読んだジェイクは、顔をしかめた。


「どうした?」


コウが尋ねた。


「…いや、何でもない」


ジェイクは、そう言って、スマホをポケットにしまった。


一方、ポート・ノーウェアの港に残されたクロエとマルタは、イリーナのオフィスに戻っていた。彼女たちは、イリーナに、港での出来事を全て話した。


「…コウは、タスクを殺し、ジェイクと共に船で逃げました」


クロエが、イリーナに報告した。


「そう…。やはり、そうだったのね」


イリーナは、クロエの報告を聞いて、小さく笑った。


「イリーナ様…? なぜ、笑っているんですか?」


マルタが尋ねた。


「マルタ、クロエ。あなたたちは、私に逆らったコウを、なぜ殺さなかったのですか?」


イリーナは、マルタとクロエを、冷たい目で見た。


「それは…。コウが、私たちを…」


マルタは、言葉を詰まらせた。


「…いいでしょう。あなたたちを、罰することはありません。…ですが、あなたたちは、私の期待を裏切った。私の計画を、台無しにした」


イリーナは、そう言って、クロエとマルタに背を向けた。


「イリーナ様の計画…?」


クロエが、尋ねた。


「ええ。コウは、私の支配から逃れることはできません。私は、彼を、この街の支配者として、利用するつもりでした。彼を、私の右腕として、この街の平和を、完全に掌握するつもりでした」


イリーナは、そう言って、窓の外の街を見つめた。


「ですが、コウは、私の支配から逃れた。そして、私の計画は、全て台無しになった」


イリーナは、そう言って、グラスに注いだワインを一気に飲み干した。


「…ですが、イリーナ様。コウは、ジェイクと共にベネズエラへと向かいました。もう、彼を捕らえることはできません」


マルタが言った。


「…いいえ。そうではありません」


イリーナは、そう言って、ニヤリと笑った。


「ジェイクは、私の部下です。彼が、コウを、私の元へと連れてくるでしょう」


その言葉に、クロエとマルタは、驚きを隠せないようだった。


「…ジェイクが…!?」


クロエが、叫んだ。


「ええ。私が、彼を雇ったのです。コウを、この街に連れてくるために」


イリーナは、そう言って、再び笑った。


一方、船の甲板では、ジェイクが、コウに、この街で起こったことの真実を話していた。


「…コウ。実は、俺は、イリーナの命令で、お前を助けに来たんだ」


ジェイクは、コウにそう言って、全てを打ち明けた。


「…ジェイク…!? なぜ、そんなことを…!」


コウは、驚きのあまり、声も出なかった。


「イリーナは、お前を、この街の支配者として、利用するつもりだ。俺は、お前を助けるために、イリーナに協力することにした」


ジェイクは、そう言って、コウに全てを話した。


コウは、ジェイクの言葉に、絶望的な表情を浮かべた。彼は、イリーナの支配から逃れることはできないと悟った。


「…ジェイク…! お前…!」


コウは、ジェイクに掴みかかろうとした。しかし、その時、ジェイクの背後から、銃声が聞こえた。


パン!パン!


それは、ジェイクの護衛たちの銃声だった。彼らは、コウとメイファン、そしてホアキンを、銃で脅していた。


「…ジェイク…! なぜ、こんなことを…!」


コウは、そう叫んだ。


「コウ、すまない。だが、これが、俺の仕事だ」


ジェイクは、そう言って、コウに謝罪した。


コウは、ジェイクの裏切りに、絶望的な表情を浮かべた。彼は、再び、イリーナの支配下に戻ることを、覚悟した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ