第百十七話:地下の攻防、イリーナの冷徹な策略
地下アジトの静寂は、突然の銃撃によって木っ端微塵に砕け散った。鉄扉が爆発するように吹き飛ばされ、武装した男たちが一斉になだれ込んでくる。彼らの手に握られたアサルトライフルが、絶え間なく火を噴き、銃弾が壁や床に火花を散らした。
「伏せろ!」
イリーナが、鋭く叫んだ。彼女は、咄嗟に医療ベッドを盾にし、ロベルトを銃弾から守る。その声に、コウもまた、マルタとホアキンを抱きかかえ、身を伏せた。クロエは、素早く壁の陰に隠れ、腰のグロック17を構える。
敵の先頭を走る男が、アジトの中央へと踏み込んできた。彼は、無造作にAK-47を掃射する。その銃声は、耳をつんざくほど大きく、地下空間に反響していた。男の動きを読み、クロエは、正確に彼の右肩を撃ち抜く。
「うっ!」
男が、苦痛の声を上げてよろめく。その隙を突き、コウは、壁の陰から身を乗り出し、男の頭部を正確に撃ち抜く。男は、脳漿を飛び散らせ、その場に崩れ落ちた。
「…無駄弾を使うな…!」
イリーナが、冷たい声でコウをたしなめる。
「…一発で…仕留めろ…」
コウは、イリーナの言葉に、何も言い返すことができなかった。
敵は、クロエとコウの反撃に、一時的に足が止まった。だが、彼らはすぐに態勢を立て直し、再び銃撃を始める。アジトの中は、まるで戦場と化していた。
「…奴らの狙いは…ホアキンだ…!」
コウは、マルタに囁く。
「…どうする…?」
マルタが、震える声で問いかける。
「…俺が…時間を稼ぐ…その間に…お前は…ホアキンと…逃げろ…」
コウは、そう言って、マルタに背を向けた。
「…待って…!」
マルタは、叫ぶ。
「…俺は…必ず…戻る…」
コウは、そう言って、敵へと向かって走り出す。
彼の右手には、グロック17が握られていた。彼は、腹部の痛みを無視し、敵の一人を狙撃する。弾丸は、男の心臓を貫き、男は、その場に倒れ込む。コウは、次の男を狙撃しようとするが、男たちは、すぐに彼の動きを読み、彼へと銃口を向ける。
「…くっ…!」
コウは、壁の陰に身を隠す。彼のグロック17の弾薬は、残りわずかだった。
その時、イリーナが、コウに近づいてきた。彼女の手には、スナイパーライフルが握られていた。
「…馬鹿め…」
イリーナは、そう言って、コウを見下す。
「…銃の扱いも…知らないのか…?」
彼女は、そう言って、スナイパーライフルを構える。
「…敵の動きを…読め…」
イリーナは、そう言って、コウに銃口を向ける。コウは、驚きの表情で、イリーナを見つめる。
「…お前…何を…?」
「…私は…あなたを…訓練しているのだ…」
イリーナは、そう言って、冷たい声でコウに指示を出す。
「…敵は…あと…15人…」
彼女は、そう言って、コウに敵の数を教える。
「…一人ずつ…正確に…仕留めろ…」
コウは、イリーナの言葉に、頷く。彼は、イリーナの指示に従い、敵の動きを読み、一人ずつ正確に狙撃していく。彼の銃声は、もはや無駄弾を打つことはなかった。
「…よし…」
イリーナは、そう言って、満足そうな表情を浮かべる。
だが、敵の数は、まだ多い。彼らは、コウとイリーナの存在に気づき、彼らへと銃口を向ける。
「…くっ…!」
コウは、舌打ちをする。
「…どうする…!?」
その時、イリーナが、コウに囁く。
「…奴らは…私たちを…追い詰めている…」
彼女は、そう言って、コウに微笑む。
「…だが…それは…私たちの…罠だ…」
コウは、イリーナの言葉に、驚きの表情を浮かべる。
「…一体…どういうことだ…?」
「…奴らは…このアジトに…閉じ込められる…」
イリーナは、そう言って、冷徹な視線をコウへと向ける。
「…我々は…このアジトを…爆破する…」
コウは、イリーナの言葉に、恐怖の表情を浮かべる。
「…何だと…!?」
「…ホアキンを…守るためには…必要なことだ…」
イリーナは、そう言って、コウの肩に手を置く。
「…信じろ…」
彼女の言葉に、コウは、頷くしかなかった。
イリーナは、コウに、起爆装置を手渡す。
「…これを…押せば…全てが…終わる…」
コウは、起爆装置を握りしめ、震える。
その時、彼の耳に、クロエの声が聞こえてきた。
「…コウ…信じて…!」
クロエは、そう言って、コウに微笑む。
コウは、クロエの言葉を信じ、起爆装置のスイッチを押した。
「…ぐっ…!」
爆発の衝撃が、地下空間を揺るがす。アジトの入り口は、瓦礫と煙に包まれ、敵は、その中に閉じ込められた。
「…終わった…」
イリーナは、そう言って、深呼吸をする。
「…みんな…無事か…?」
コウは、マルタとホアキンに駆け寄り、彼らの無事を確認する。
「…うん…」
マルタは、頷き、コウを強く抱きしめる。
その時、イリーナが、コウに近づいてきた。彼女の顔には、冷徹な笑みが浮かんでいた。
「…お前…一体…何者だ…?」
コウは、イリーナに問いかける。
「…私は…ただの…軍人だ…」
イリーナは、そう言って、コウに背を向ける。
「…だが…お前は…違う…」
彼女は、そう言って、歩き出す。
「…お前は…運命の子…」
コウは、イリーナの言葉に、何も答えられなかった。
彼は、ホアキンを抱きしめる。そして、彼は、再び歩き出す。
「…俺は…この子を…守る…」
彼の心の中には、ただ一つの決意しかなかった。
「…例え…どんな運命が…待ち受けていようとも…」
彼の瞳には、強い光が宿っていた。




