Shall We Rock??
石田左右と申します。
初執筆作品です。
全てのバンドマンへ
リスペクトを込めて。
春、桜は散り始めてはいるが風は少し冷たい。
私立庵野高等学校に星野玲は進学した。
中学まで必死でやったバスケはもうやりたくなった。
平たく言えば挫折したんだろう。
かと言って何かやりたいことはない。
こんな気持ちを高校、もしくは大学卒業するまでに
就活でまた味わうことになるのは酷く憂鬱だ。
やりたいことがある奴は幸せだ。
だがしかし、部活動も強制じゃないこの学校ならバイトでもしてこのモラトリアムを充実させるのが一番賢い選択肢。
そう思っていた。
今日は部活動の新歓イベントだ。
入学して2週間。なんとなく同調圧力で部活に入ろうとしている奴にはありがたいイベントなのだろう。
こちらとしても授業の時間を潰してやってくれてるのだからありがたい。
とりあえず賑やかな雰囲気はお祭りのようで嫌いじゃないから校内を幽霊のようにフラフラとぶらつく。
気がつけば中庭沿いの廊下へ来ていた。
中庭にはかなりの人数が集まっていて、ビール瓶ケースで
作られた15畳ほどの微妙な...
ステージとも言えない代物の上に
バンドの機材が備えてあった。
数人の男がステージに上がるのと同時に
観客と言える生徒たちの野太い声、黄色い声をあがった。
「ぶちかませよー!!!!」
「いづきせぇんぱぁあーい♡」
軽音楽部はここで新歓ライブというものをするのだろう。
そして、内輪の中でチヤホヤされて気持ちよくなって
何も得れずに夢だけ引きずって終わっていく。
直感でそう思ったのと同時に爆音が鳴り響いた。
中庭に入ってない自分でも驚く音量。
同じく廊下沿いにある職員室から教師が飛び出す。
「話しが違うだろーが!!!!」
怒鳴りながら中庭への窓を開け叫ぶ教師。
その行動によって廊下にもダイレクトに爆音が飛んでくる。
震える地面。鼓膜を劈くような楽器の音。
そしてステージの中央に立つ男の
呼吸の音がマイクに入る。
―この時、僕の人生は変わった。
憧れとも羨望とも嫉妬とも呼ばれるであろう感情は
気づけば上履きを履き替えることもなく、
中庭の人混みの中心へと俺を走らせていた。
女子生徒や上級生に割り込みに対する文句を言われながらも少しでも近くで見てみたい。
そんなことを考えているうちに
僕は人が疎らになった中庭に尻もちをついていた。
ライブは終わっていた。
「一番楽しそうだったね!バンド好きなの?」
混乱している僕にクスクスと笑いながら話しかけてきたその女生徒に対して、恥ずかしさからくるイライラをぶつけようと文句を言おうと見上げた時、また僕は混乱した。
色白く滑らかな陶器のような肌に、
これでもかとハイライトが入っていて
吸い込まれてしまいそうなほど美しい瞳。
ポニーテールがとてもよく似合う彼女は僕の顔を見るなり
微笑みながら言った。
「一年生でしょ?軽音楽部入ってみない?」
石田です。読んでいただきありがとうございます!
各話執筆しながら物語のイメージに合った曲を聴いてます。
今話はタイトルにもオマージュさせていただいてますが
満漢全席というバンドの「Shall We Dance!!」という曲です。
玲の青春をお楽しみに。