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4. 鈴木太陽


 このままいい感じになっちゃいそうな上司二人から立ち去り、俺は気分が良かった。我ながらナイスキューピッドだ。

 

 彼氏に悩む上月さんと、そんな上月さんのことが好きな榊原さん。

 彼らを残し、空気を読むかのように立ち去る俺。

 どうかお幸せに!とにやにやしながら電車に乗り、すぐにスマホで風香にLINEを送る。


『今飲み終わって帰ってるー。風香に会いたいな〜』


 

 あれから俺達は、びっくりするくらいすんなりと無事付き合うことになった。

 三回ほどドライブデートを繰り返し、夜カフェに行った帰り道、車の中で告白した。



「あのさぁ、もう気付いてるかもしれないけど……めっちゃ好きなんだよね、風香のこと。俺と付き合ってくれない?」



 勇気を出した風に言ったが、絶対いけると確信していたのでそれほど緊張感はしなかった。



「……うん、いいよっ」



 照れたように、彼女は頷いた。可愛くて仕方なかった。

 

 あぁ、この子で最後にしよう。

 仕事も頑張れそうだし。早く結婚したい。

 俺の気持ちは上昇しまくりだった。風香が好きで好きで、たまらない。この子になら何をされても許せると本気で思った。



 すぐにきたLINEの返信に、またにやける。


『風香も会いたいよ〜。今日もずっと太陽くんのこと考えてた(笑)今から家来る?』


 やばい。愛くるしい。好きだ。


 迷うことなく、俺は自分の最寄駅で降りずに風香の住む方にある駅まで電車に乗った。

 

 家には、付き合った日に一度だけ行ったことがある。

 まだあどけない彼女の恥ずかしそうな喘ぎ声を思い出すと酔いなんて一瞬で冷めていき、代わりに心が熱を帯びる。

 綺麗な細い脚、豊富な胸。突くたびに揺れる髪の毛。匂い、体温。それら全てが美しくて、愛おしくて、早く会いたくてたまらない。


 こういう気持ちになったことは、実は初めてではない。

 これまで何人も付き合ってきたけど、俺はいつもこんな感じだった。

 最初は燃えていた気持ちが徐々に落ち着いてきたと思ったら、だんだん嫌なところが見え始めてくる。冷めたり冷められたりで、いつもわりとすぐに別れてしまう。

 

 でも、今回は絶対に違う。

 風香のことを俺は、今までの元カノとは比べ物にならないくらい、すでに愛してしまっているのだから。……心から。

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